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ギラン・バレー症候群
−患者、家族、友人のために− ギラン・バレー症候群とは(あらまし) 筋肉を動かす運動神経が侵され、急に手や足に力が入らなくなる病気です。しばしば知覚神経も侵され、手足の痺(しび)れを伴います。 風邪をひいたり下痢などの感染をきっかけに、本来は侵入した細菌やウイルス(抗原)を攻撃する体内の抗体が、誤って自分の末梢神経を攻撃することによって起こる、稀な病気です。 症状は数日、あるいは2〜4週間以内にピークに達し、その後は回復していきます。 症状の程度は様々です。多くの場合、完全に回復し元の生活に戻れますが、中にはリハビリが長期にわたったり、後遺症が残る場合もあり、ごく一部には合併症で死亡することもあります。
1910年代にこの病気を最初に認識したフランスの内科医ギランとバレーの名前をとってギラン・バレー症候群(Guillain- Barre Syndrome)と言われています(注1)。 発症率は年間10万人に1〜2人に発症する、稀な病気です。幼児から老人まであらゆる年齢層に発症し、男性にも女性にも発生しますが、男性の方が多くみられます(注2)。 (注3)現在、厚生労働省は、ギラン・バレー症候群を130ある難病(特定疾患)の1つに指定してい
末梢神経に障害が起こり、急速に手足等の筋肉に麻痺が生じる病気です。
神経は、脳から脊髄を通して四肢(手足)の筋肉、呼吸筋、内臓などに通じています。この脊髄から外に広がっている神経を「末梢神経」と言います。この末梢神経は電線のように絶縁体で覆われており、この絶縁体部分を「髄鞘(ずいしょう)」と言い、通電する芯にあたる部分を「軸索(じくさく)」と言います。 ギラン・バレー症候群は、多くの場合、この末梢神経の髄鞘部分に障害が起こり、急速に手足等の筋肉に麻痺が生じます。この髄鞘に障害が起こった場合を「脱髄型ギラン・バレー症候群」と言います。 軸索型ギラン・バレー症候群の方が重症であり、回復には時間がかかり、後遺症が残る可能性が高くなっています。 (注4)「軸索型ギラン・バレー症候群」は、欧米では稀とされていますが、日本ではある調査によ 自分の抗体が、誤って自分の末梢神経を攻撃することによって生じます。 いろいろのことが病気の引き金になっています。多くの患者(約7割程度)は、細菌やウイルス感染症が起こって、数日から数週間後に発症します。この感染症は、下痢を伴う胃腸疾患であったり、風邪であったり、咽頭痛であったりします。なお、約3割程度の患者は、下痢や風邪症状がはっきりせず、麻痺の症状から始まります。 人体は、感染症の細菌やウイルスや異物が侵入した場合、免疫防御システムが働き、抗体がそれらの微生物(抗原)を攻撃します。この免疫防御システムが正常に機能し、抗体が侵入した抗原だけを攻撃すれば問題はないのですが、抗体が、抗原と分子構成が類似している自分の末梢神経を、抗原と見なして誤って攻撃し、しかもその誤った抗体を産生し続けることが、ごく稀に起こります(注6)。このように、自己抗体が誤って自分の末梢神経を攻撃し続けることによって生じる病気が、「ギラン・バレー症候群」です。 (注6)末梢神経を構成するガングリオシド(糖脂質の一種)にはGM1,GM1a、GM1b、 ギラン・バレー症候群は、このように自己の免疫防御システムの異常によって起こる病気であることから、自己免疫疾患(注7)の一種と言われています。 このような細菌やウイルスの感染には無数の人がさらされおり、ほとんどの人は免疫防御システムが正常に働いているわけですが、なぜごく一部の人だけにギラン・バレー症候群が発生するかは不明です。 ある免疫学の本によると、抗体は200万種類あるとされています。もちろん、1人の人に常時200万種類の抗体があるのでなく、細菌やウイルスや異物が体内に侵入した場合、その都度、抗体をつくる遺伝子が自由に組み組み合わされ、その抗原に合う抗体を産生し、抗原を攻撃する仕組みとなっています。例えば、はしかのワクチンを注射すると、体内にはしかに対する抗体ができる仕組みとなっています。 では、なぜ自己の末梢神経を誤って攻撃する抗体が産生され、また産生され続けるのかについてですが、今のところよく分かっていません。過度の疲労やストレスがたまり、自己免疫力が極度に低下している時に、稀に生じるのではないかとする見方があります。また、体内に蓄積された薬や有害な化学物質が影響しているのではないかとする見方も一部にありますが、はっきりしている訳ではありません。 なお、ギラン・バレー症候群が発症している時には、引き金になった抗原は、患者の体内にはすでに存在していません。 ギラン・バレー症候群の約7〜8割の患者は、運動神経とともに知覚神経の障害を伴います。 知覚神経に障害が起こった場合、最初は痺れ、びりびりする痛み、皮膚の下で蟻が這う感じ、電流の流れる感じ、振動感などの知覚異常(あるいは知覚鈍麻)が現われます。これらの知覚異常は、足、手、さらには顔面にも生じます。これらは身体の両側に起こり、通常は下肢から上肢、顔面へと上行しますが、一部にはその反対の順序で下行する場合もあります。 2〜3割の患者は、知覚神経は正常なまま、運動神経に障害が起こります。筋力が低下し、脱力感が生じます。一般的に下肢の筋肉に障害が起こると、階段の昇降や椅子からの立ち上がりができなくなり、歩行が難しくなります。上腕に障害が起こると、重いものを持ち上げられなくなります。指や手に障害が起こると、物を掴むことができなくなります。重症の場合は、麻痺が全身に及びます。しばしば筋肉自体の痛みや筋痙攣を伴います。 稀にですが、排尿障害や尿失禁が起こることがあります。 自律神経も障害が起こることもあり、この場合、血圧変動(高血圧、起立性低血圧など)や心拍数変動(頻脈、徐脈)、不整脈、体温の異常が生じます。 ギラン・バレー症候群の症状が、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の症状と決定的に異なるのは、筋力低下や知覚障害が身体の両側に同程度(左右対称)に起こる点です。 発症1〜2週間後,髄液蛋白が増加するが、細胞数は増加しないのが特徴的です。多くの患者は,血清中に末梢神経の構成成分である髄鞘の糖脂質(前述のガングリオシドのGM1やGM2など)に対する自己抗体が検出されます。神経伝導検査で末梢神経伝導速度の遅延などの異常所見が認められます。 <抗体値検査(抗ガングリオシド抗体検査)> <神経伝導・筋電図検査> ギラン・バレー症候群に対して、次のような治療が行われます。 末梢神経の損傷(麻痺)が軽く、進行が止まるようであれば、経過観察し、ビタミン剤を点滴し臥床していれば治りますが、末梢神経の損傷(麻痺)が進行していく場合は、以下のような治療が早急に行われる必要があります。 なお、以下の治療は、末梢神経の損傷(麻痺)の進行を緩和あるいは抑制するものであり、麻痺した末梢神経を回復させる治療ではありません。麻痺した末梢神経を回復させるのは、自然治癒(自己回復力)とリハビリテーションです。 以下の治療は、それぞれ副作用がありますので、末梢神経の損傷(麻痺)の進行がとまれば、それ以上の回数の治療は慎重にする必要があります。 血液は、血漿と血球から成っています。体外に取り出した血液を血漿分離膜により血球と血漿に分離した後、抗体の含まれている血漿を全て廃棄し、代わりに献血などで集められた新鮮凍結血漿をもしくはアルブミン(血漿の一成分)溶液を補液として補充し、元の血球成分と合わせ、血管に戻す治療方法です。 この血漿交換は、大掛かりな機械を使用するため、特別の装置が備わった病院でしかできません。 1回につき40ml/kg体重を3時間程度かけて行われます。比較的軽症で5m以上歩ける患者には2回、5m以上歩けない中症、重症の患者には4回行うのが適当とされ、重症の患者でも6回以上行う必要はないとされています。また、高齢者、小児、体重40kg未満、自立神経障害のある人、循環不全、腎障害を認める患者には、この療法は適さないとされています。 実際、この治療は、体内の血液を多量に入れ替えるものであるため、副作用として、拒絶反応が出ることもあり、体が興奮し、体力を著しく消耗させます。感染症を起こすこともあります。また、血漿交換している間、血圧が急に下がったり、心拍数が上がったりすることがあります。 この療法は、発症後早急に行った方が効果があります。発症後2週間以内に実施した場合に効果があり、発症後30日以降に行った場合には効果は認められないと言われています。 400mg/kg/日を4〜6時間かけてゆっくりと点滴されます。この点滴を5日間連続して1クールとして注入します。症状の進行がとまらなければ、1週間空けて、さらに次のクールが繰り返されます。 この治療法は、わが国では2000年に厚生省(当時)により許可されました(それ以前は健康保険の対象外)。血漿交換のような大掛かりな設備を必要とせず、どこの病院でも治療ができ(点滴のみ)、効果の差もないと言われています。 しかし、血漿交換のような強い副作用がないものの、頭痛、筋痛、血栓の他、肝機能障害を併発し易いという副作用が報告されています。 しかし、最近の臨床試験では、経口投与、静注療法ともにほとんど効果が認められなく、むしろ疾患を悪化する懸念が出てきたことから、通常は使用されなくなりました。 嚥下困難のため経口摂取困難の場合、点滴、経管による栄養管理を必要とします。 排尿困難に対し、カテーテルによる導尿などの処理がされます。 また、長期臥床により肺炎、下肢の血栓症、膀胱炎などを併発することがありますので、そのための治療も必要となります。褥瘡(じょくそう=床ずれ)を防ぐため、2時間以内の体位交換が必要とされています。 なお、回復過程において神経再生に伴い痛み(典型的には手足に焼けるような痛み、あるいは刺すような痛み)が生ずることがあります。これは、知覚神経が治癒する過程で起こる異常感覚の一つの型と見られています。運動や体重の負荷により増悪しますので、この間は、後述のリハビリテーションが思うようにできなくなります。種々の鎮痛剤や抗うつ剤、抗けいれん剤の服用によって、その痛みが抑えられます。 麻痺した手足の機能を回復させるのは、自然治癒(自己回復力)とリハビリテーションです。末梢神経の損傷(麻痺)の進行が止まった段階で、急性期における治療(血漿交換療法やガンマ・グロブリン等)に代わって、関節の拘縮や筋肉の萎縮を防ぎ、筋力の低下を回復させるため、リハビリが行われます。 リハビリは、急性期における病院でそのまま行われる場合もありますが、その病院に十分なリハビリ施設がない場合、あるいは重症で長期臥床にあった場合には、リハビリ専門の病院に転院して行われます。主治医の指示の下で、理学療法士、作業療法士がメニューを組みリハビリを行います。 OT(Occupational Therapy)=作業療法 ギラン・バレー症候群の症状は、遅くとも1ヵ月以内にピークとなり、その後徐々に自然に回復に向かいます。多くの患者は、予後は良好で、6〜12ヵ月で自然治癒しますが、重症の患者の場合、麻痺や痺れ、筋力低下などが長期にわたったり、それらが後遺症として残ることがあります。 予後について、次のように報告されています(注8)。 (注8)かつては「ギラン・バレー症候群の予後は良好で、元の状態に回復する」とする医学解説 再発率は1〜10%と報告されていますが、多くても5%未満のようです。 この病気に対する予防策は、ありません。 当解説は、ギラン・バレー症候群患者の一人として、次の資料をベースと 当解説が、この病気について知りたいと思う方々(患者本人、そのご家
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