音楽ジャーナリストがブラームス、リヒャルト・シュトラウス、プッチーニなど6人の大作曲家に作曲中に得られる霊感についてインタビューしたもの。
ブラームスは、自分の作品が正当に評価されるには50年かかるとし、それまでは公表しないように厳命したため、本書の出版は第2次大戦後となり、今回邦訳されたのは、さらに50年以上を経たことになる。
なお、タイトルは旧約聖書の言葉。
〔本文の中から〕
○「私は作曲にとりかかる前に、私を造られた方を求め、我々はどこから来たのか、
なぜ生きているか、この後どこにいくのかを問う。たちまち私は、自分の全存在
を震撼させるような身震いを感じる。そこには、内なる魂の力を照らし出す霊が
存在し、高尚な気分の中で、イエスの至高の啓示「我と父とは一つなり」が持つ
途方もない意義を実感する。この身震いは、いくつかのくっきりした心象の形を
とる。私が求めるものについて霊感に満たされ、私は永遠の価値をもつ音楽をつ
くることができる。
霊は魂の力だ。霊は普遍的な力だ。霊は宇宙の創造的なエネルギーだ。人間の
魂は、霊に照らし出された時に天才的な力を発揮する。
夢うつつの状態になると、私は恍惚の状態で睡眠と覚醒の間をさ迷っている。
意識はまだあるが、失おうとするするちょうど境目におり、霊感に満ちた着想が
湧くのはそんな時だ。真の霊感はすべて神から発し、ただ内なる神性の輝きを通
してのみ、神はご自身を顕すことができる。これを心理学者は、潜在意識の心と
呼んでいる。
着想をえたら間髪をいれずに紙に書き留めることだ。書き留めたものを眺める
と、霊感を受けたあの同じ気分を呼び覚まし、着想が生み出させられる。
ベートーヴェンは意識と潜在意識の境界状態に入る時、決して完全に意識を
失わなかった。私は、作曲を始める時、半超越状態の中で意識を保つように常 に十分注意している。」 (ブラームス)
○「霊感が訪れても、それはあまりにもかすかで、漠然としたもので、鬼火のよう
なものでる。最も霊感に満ちたものであれば、明確で見間違えない光景が目に入
り、そこにはより高められた自分の姿がある。私はそんな瞬間、無限で永遠のエ
ネルギーの源を手にしている。宗教ではそれを神と呼ぶ。私の着想――動機や主
題、構造、旋律、和声の装飾、管弦楽法――が流れ込んで来る時、私はまるで全 能なる存在によって口授されている気がする。」 (リヒャルト・シュトラウス)
○「私は、まず内なる自我の全き力をつかむ。次に、何か価値あるものを生み出
したいという、燃えるような欲求と強烈な決意を感じる。この欲求、この願望
を抱くことで、私は目標に到達できるのが分かる。次に私は、私を創造してく ださった力を激しく求める。この求め、というより祈りと完全に信じきると、
魂の中心である発電器から私の意識に向けて震えが伝わる道が開かれ、その 後霊感に満ちた着想が生まれる。」 ( プッチーニ)
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