内海隆一郎著『郷愁 サウダーデ』
 (光文社、平成16年7月刊)
 四六版、286ページ、¥1800+税
 「男も五十を過ぎると、さすがに自分が何ほどのものか分かってくる。分かってくるが、簡単にどうにかできるわけでもない。生き続けるしかなく、やがて六十の坂を越えていくのだ。 そうした男たちの心情を描いた短編集である」と、朝日新聞の書評欄(9月5日付)にあった。

 五十を過ぎたカメラマンは、時おりふと自分には他にやるべきことがあったのではないかと、疑問を抱くようになる。二十八で家庭を持ち、二人の息子を育て、妻はデザイナーとして活躍しているが、そのために犠牲にしたものはなかったか、もっと広く自由な世界で試すチャンスなかったかと。そんな時、美術館の撮影でポルトガルに行くことになった。彼はポルトガルの風情や国柄にすっかり魅せられ、そこで一生を送ってもいいと考えるようになる。仕事も終わり、行きつけのレストランで歌を聞いているとき、彼はある事件に巻き込まれるが、その店のオーナーとおぼしき老人に救われる。意外にも、その老人の口から出てきたのは日本語であった。ステージでは切ない望郷の歌が流れている。(「郷愁 サウダーデ」より)

 本書には、この短編をはじめ9編が収められている。いずれも、中年を過ぎた男の寂しい心象が、思いがけないストーリーの展開とあいまって鮮やかに描かれている。

 あまりにも鮮やかに描かれているため、世の奥様族には見せたくない本でもある。

                         (04/9/24)



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