渡部昇一著『生きがい』
 (ワック出版、平成16年10月刊)
 サイズ(cm): 18×11、258ページ、¥905+税
 60を過ぎた男の読む本ではないかも知れないが、著者の渡部氏も70代であるので、ご容赦を………。同じことを読んでも、人生経験を経なければ、本当の意味が分からないこともある。

 前置きはさておき、本書における著者の主張は一貫している。外からの規範・価値体系が崩壊した現在、各個人は自分自身の価値観、心の奥底からの声に従って「小恍惚」するものに向かって自己実現をはかることが、本当の「生きがい」であるとしている。そして具体的な「生きがい」のある人の事例を沢山あげている。逆に、心にうずくものを抑え不本意のまま教師をしている者が、教育現場で生徒をダメにしている例もあげている。

 私には、この著者の主張はよく分かるし、著者の生き方も素晴らしいと思うが、果たして、誰もが全人的にそのような生き方をできるものか疑問を感じる。そのような生き方をできるのは、やはり一部の限られた人ではないかと思う。むしろ、多くの人は組織の中で生き、「人生にはやりたいけど、できないことがある」と感じて、その枠(渡部氏の言う「ぬるま湯」)から抜け出せないままでいるのではないだろうか。

 大切なことは、組織の中で生きながらも、自分の時間、世界を守り、そこで自己実現をはかることではないだろうか。趣味や教養が栄え、芸術や文化の発展がある(あるいは発展を支える力がある)のは、そのためだと思うのだが………。

                       (04/10/27)



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