
鶴田 静著
『茶箱のなかの宝もの―わたしの昭和ものがたり―』
(岩波書店、平成19年3月刊)
四六判、216ページ、¥1,900+税
本書は、自伝的エッセイ、それも著者の少女時代を扱ったもので、今まで当コーナーでまったく取りあげたことのないジャンルである。今回、取りあげるにあたっては、ちょっとした経緯がある。
実は、著者、鶴田静さんと私は高校(都立国立高校2、3年)の同級生である。女性雑誌などで彼女がしばしば取上げられていたので、アメリカ人のカメラマンと結婚し、房総の農村に居を構え、ベジタリアンとして(自然野菜の栽培や野菜料理で)活躍していることは、知っていた。
先日、彼女から31冊目の本を出したとの手紙をいただき、読むことなった次第。
内容は、昭和20年代、まだ自然の残る練馬の石神井公園近く、ほのぼのした大家族とたくさんの動物と囲まれた家庭を舞台にした子供の頃が書かれている。
「最初のアルバム」は、古い桐の茶箱の中から小学校時代のアルバムを取り出し開くところから始まる。時はたちまち6歳半のシイカ(小さい時の彼女の呼び名)にタイム・スリップし、入学式に着ていった洋服やその時の出来事が繰り広げられる。
話は、「家業は家畜医院」、「仕立て直しの服」、「涙味のしょっぱい食事」、「わたしはもらい子」、「初恋は永遠に」、「たらふく食った道草」、「少女がおとなになるとき」、………と続く。いずれも、貧しかったが、逞しく楽しかった昭和の20年代が懐かしくも生き生きとよみがえってくる。
団塊世代以前の女性や昭和を知らない若い女性にじっくりと読んでほしい本であり、また、教育や家庭など考えるヒントになる読み物でもある。
しかし、少女のもつ夢や憧れや感じ方など余すところなく書かれており、私は読んでいて、正直、場違いの所に入ったような気がしないでもなかった。
話は中学3年の時に国立へ転校するところで終っているが、それからどう成長していったのだろうか。受験に明け暮れしたあの高校時代であっても、彼女はきっと夢を描き続けていたであろう。
彼女は、(前掲の渡部昇一著『95歳へ!』によれば)自分のしたいことを仕事にすることができ、自分の能力を思う存分発揮しているので、今一番の幸福を味わっているかも知れないと思った。
なお、俳優、鶴田忍氏が彼女の弟だとは知らなかった。
(07/5/28)
〔追記〕
鶴田静さんは、ベジタリアン・ライフを実践されており、下記のホームページでその様子が描かれています。その「Our Children(本たち)」に本文が掲載されました。非常に感動的です。ぜひお読みください。
Voice from Earth Mother