アラバマ州の田舎町に住む医師が、30数年前のハイスクール時代に身近に起きた悲劇的な事件を回想する、という形のミステリ小説。
都会から転校してきた一人の美少女と、主人公は校内誌の編集を通じて次第に親しくなっていく。同級の男女の友人たちとの友情や嫉妬など描写は、60年代初頭の古き良きアメリカの雰囲気をほうふつとさせる。しかし、隣町での黒人達の商店ボイコット事件を契機に、白人優先の社会に対して批判的な目をむける少女と周りとの軋轢が次第に高まっていく。そしてついに、郊外のBreakheart Hillという丘で悲劇が起こる。
この事件が主人公及び友人達の心に残した暗い記憶とその事件にからむ様々の疑問を通して、現在と回想のシーンを交互に織り交ぜながら、少しずつ読者に事件の真実を明らかになっていく。主人公の悔恨の念にかられた心のひだが少しずつ読むものに伝わっていくプロセスでの作者のお手並みは実に見事。次作の"Chatham School Affair"でも著者は同様の手法を取っているが、この作品では語り手が悲劇の当事者でもあるので、効果は倍増している。
しかも、最後の最後で、あっと思わせる仕掛けも用意されている。随所に書かれていた少し思わせぶりな表現の端々が、読後に気に掛かり、もういちど最初から読み直してみたくなる本。
(2000/7 記)