おおよそ仕上がり、住める雰囲気が出てきたので、引越しを開始する事にした。
世間様では竣工に際して鍵の引渡の儀式があり、設備の使い方やメンテナンスの仕方のご教授を受けると言う。
家族によってはお祝いをしたりするとも言う。
引越しは引越し業者に依頼し、建て主は指示するだけで良いと聞く。
しかし我が家は違う。
くっついたすぐ横に住んでいるので、鍵の引渡の儀式も無ければ、引越し業者も御呼びでない。
工事も終わっていないのに引越しを開始してしまう。
夫婦共働きで休日の日程が違う我が家では、夫婦が揃って休める日は何回も無い。
普段の生活では全く支障はないが、大きな荷物を動かす時などははたはた困ってしまう。
手が足りない。
この春から中学生になった娘は部活動優先で役に立たない。
小学5年生の息子では今一つ腕力が足りない。
ばぁちゃんではまったくもって無理。
机と箪笥、それにベットと仏壇が大物。
どうやって運ぼうか?
テレビと電子レンジは一人で運べる。
洗濯機と乾燥機も一人で運んだ。
子ども達の机は分解してから運び、所定の部屋で再度組み立てた。
父ちゃんは偉い!
問題は仏壇。
これは分解できない。
サイズはW900・D775・H1500、重量は不明だがかなり重い。
廊下の有功幅よりは狭いのだが、ドアとドアストッパーが付いている為に通れない。
仕方が無いのでドアをはずし、ストッパーもはずした。
仏壇を少しずつずらして毛布の上に乗せ、毛布ごと引きずるようにして和室の前まで運ぶ。
これだけで大汗をかいてしまった。
ここで問題。
小生の家の和室は廊下よりも約1尺高い。
どうやって持ち上げれば良いのか?
敷居を傷付けないように持ち上げるのは至難の技。
男手が二人あれば持ち上がるのだが、小生しかいない。
何か無いかと周りを見渡す。
フローリングの端材が目に留まった。
端材の厚さは36ミリ。
9枚重ねれば畳より理論上高くなる。
仏壇の右側を両手でちょっと傾けて、足で端材を前部と後部に楔のように差し込む。
今度は左側に周って同じ作業する。
これで廊下の面より36ミリ高くなった。
この作業を9回繰り返す。
計算通り畳の面よりも高くなった。
大成功。
江戸時代の頃の作業方法。
ここまでくれば後は簡単。
畳の上にも毛布を敷き、滑らせるようにして和室内に移す。
毛布ごと移動して所定の位置に納めた。
「奥さーん、今夜はビール一本おまけしてくれー」と言いたい。
この日の作業はここまで。
一人作業ではなかなか進まず重労働。
夕飯の時に父ちゃんがいかに頑張ったかを家族に説明したのだが、「アッ、そう。」で片付いてしまった。
何ともやりきれない。
夜になってから妻と子ども達の手を借りて箪笥とベットは移動した。
箪笥はガサ張っているので一人では辛い。
子ども達に手伝わせ、2階に上げる。
引出を抜いてしまえば、案外軽い。
ベットは分解すれば一人で運べたのではあるが、マットは分解できない。
それに2階まで担ぎ上げる気力がもう残っていなかった。
これで大物の移動は完了した。
食器や本などは少しずつ運べば良い。
父ちゃんの役目も終了。
明日からは筋肉痛になるんだろうなぁ。
13日より台所、洗面所、浴室、3Fの部屋は使用を開始した。
他の部屋はまだ養生シートが引いてあったり、材料や工具が置いてある。
使用は開始したもののまだ途惑っている。
生活に密着した部分だけに慣れるのに時間がかかりそう。
ここで企画ミス、設計ミスが発覚した。
問題の場所は洗面所兼脱衣室。
お風呂を使出したその晩、娘が言った。
「バスタオルはどこに下げたら良いの?」
何の事か分からない。
洗面所に行く。
なるほどバスタオルを下げるところが無い。
フック等の吊り具が無いのはもちろんだが、吊り具を付けるところが無い。
4面ある壁の内、1面には窓があり、その窓に向かって洗面台や洗濯機が設置されている。
残り3面は全て引戸になっている。
浴室への出入り口、台所への出入り口、廊下への出入り口。
しかも全部洗面所側での内引き。
壁はあっても引戸を引くと、壁が無くなってしまう。
この部屋は後から物が付けやすいように、わざと全面コンパネを下地として使っている。
それにもかかわらず、フックが付けられない。
1面でも良いから外引きになっていれば、問題はなかった。
またはどこかの出入り口がドアなら問題なかった。
あれだけ図面を眺めていたのに気づかなかった。
「毎日が施主検査」と思って現場を見ていたのに気づけなかった。
使い勝手とかには結構気を使っていたはずなのに、想像力が足りなかった。
家族からは冷たい目で見られるし、立場が無い。
反省!
できてしまってからはもう手後れ。
これから対策を考えよう。
洗面所では違うミスも見つかった。
小生が選んだ洗面台は引出付きで、鏡は一面鏡。
納品されてきたのは引出の無いタイプで三面鏡。
設計事務所の発注ミスか製造元の発送ミスかは調べないと解らないが、暮らしに問題が無いので良しとする。
ミスを追求して交換するつもりはない。
元々安価な普及品を選んでいるのでこだわりはない。
暮らし始めてみるといろいろな事が起きる。
まず慣れていないので照明のスイッチの位置が分からない。
既存の建物の方は真っ暗でも自然にスイッチの所に手が伸びる。
新居の方はそうはいかない。
蛍スイッチなので場所は分かるのだが、スイッチが複数付いている箇所は迷ってしまう。
身体が憶えるまでにはまだ時間がかかりそうだ。
特に縦に3個スイッチが付いているのは問題。
点け間違いが多い。
1個ずつのスイッチプレートを横に3個並べた方がわかりやすい。
確かにスイッチが光っていたり、名前の表示があるものの、やっぱりわかりにくい。
小生の母などは老眼鏡をかけないと字が読めない。
スイッチを点けるたびに老眼鏡をかけるようでは面倒くさくて暮らし難い。
電気屋さんの常識に任せないで、細かく指示するべきだった。
台所でもミスが発生した。
台所用の蛍光燈を取り付けると、吊り戸棚や食器棚の扉と干渉してしまう。
急遽別の場所のダウンライトと交換した。
食器棚や吊り戸棚が部屋に納まるかどうかは良く確認したが、扉を開いた場合までは想定していなかった。
初歩的なミスなのだが、照明器具を選ぶ時はカタログにばっかり目が向いてしまい、現場に意識がいかない。
ましてや建具がまだ付いていない状態で選んだので、扉を開けた状態を想像できなかった。
これまた反省。
それでもすぐに代替え案が出て対応できたのでこれも良しとしよう。
詭弁かもしれないが、家は建ててからが楽しい。
どうしたら住みやすくなるか考えるところが一杯ある。
家族で改善提案を出し合う事でまた仲良くなれる。
不満を口にして誰かにあたるより、自分達でどうするかを考えよう。
その方が家族の雰囲気は良くなるし、お仕着せではなくオリジナルにまた一歩近づける。
19日には他の部屋も使用を開始した。
玄関と2階の母の部屋と便所を除き、全ての部屋を使用するようになった。
子ども達は大喜びで早速お泊りし始めた。
今まで川の字になって親子で寝ていたのも終わり。
娘は早速ポスターを飾り御満悦。
カーテンが無かろうと、サッシが仮付けだろうとお構いなし。
嬉しそう。
暮らし始めて解る次の不具合は何だろうか。
不具合を楽しみながら乗り越えていきたい。
週末になるとハウスメーカーや工務店の折り込み広告がたくさんはいってくる。
最近の見出しは「高気密・高断熱」、「バリヤフリー」に続いて「健康住宅」という言葉が目につく。
小生に言わせれば健康な住宅なんてのは当たり前の事で、広告に掲載するような事ではない。
逆に今までのは「健康でなくなる住宅」だったのかと言いたい。
病気になってしまうような住宅を製造販売していたのかと。
広告の記事を読んでみると、「F0合板」とか「ノンホルマリン」、「空気清浄機」とか「マイナスイオン」の文字が躍っている。
本当に信じて良いものだろうか?
建て主がもっと賢くなって取捨選択をしないといけないのではないだろうか?
小生も健康には注意を払った。
大人はともかく子ども達がシックハウスにでもなったら、化学物質が蔓延している現代では生きていけなくなってしまう。
F0合板や無垢材、珪藻土、植物性塗料などなど。
ただ、水周りには流通品を使ってしまった為か、臭いものが多い。
それでもいくつかのメーカーを周り、臭いの少ないもの、健康に配慮してあるものを選んだ。
何が原因かは不明だが、内装工事が始まり、システムキッチン等が設置されてから小生の目が充血するようになった。
幸い他の家族には全く影響が出ていない。
娘だけが「臭い」と時々言うぐらい。
家族の中では現場に一番長くいる小生に影響が出ているのか、それとも小生だけが過敏なのかは解らない。
システムバスは設置されてから使用開始まで約4ヶ月間あり、この間毎日浴室の窓を開け、自然換気させた。
だいぶ臭いが減ってはいたが、使用を開始すると室温が上がった為かまた弱冠臭くなった。
しかし1週間ほど使っている内にあまり気になら無くなった。
ベークアウトされたのかもしれない。
またシステムキッチンや食器棚も臭かった。
これもまた設置されてから使用開始まで毎日換気した。
開けられる扉は全て空け、引出しは抜き出し風に当てた。
こうして1ヶ月ほどしたら臭いが気になら無くなった。
この住宅機器が設置され、各種の内装工事が行われていた時期、小生の目は毎日充血した。
朝になると目やにがたくさん出ていて、目を開けるのが大変だった。
特に2週間ほどは最もひどく、市販の目薬を1日数回使用していた。
目は痛いし、ゴロゴロするし、涙もいっぱい出た。
本を読んだり、テレビをじっと見るのが辛くてできなかった。
仕事で一日中コンピューターの画面を見ているのでドライアイかとも思ったが、今まで何とも無かったし、今はもう何とも無い。
この内装工事の時期だけであった。
何が原因なのかははっきりしないが、小生は軽いシックハウスだったのではないかと疑っている。
ここ最近は体が慣れたのか、原因物質が少なくなったからかは解らないが、目の充血は収まり、以前の状態に戻る事ができた。
材料にばかり気を使うのではなく、その他にも気を使わなければならない。
ボンドや糊、塗料、樹脂製品など疑いたくなる物はいっぱいある。
シックハウスは個人差が大きいと言うが、建て主も充分勉強しなければならない。
本来なら建築業界を挙げて取り組んでもらいたい問題の一つだと思う。
衣・食・住に関しては何も心配いらない世の中になってほしい。
DIYって何?
自分で作る事だと言う意味は何と無く分かっていたけど、「Do
it yourself」の略だとは最近まで知らなかった。
要は日曜大工って事。
元来不器用な小生にはもっとも似合わない言葉だが、父親としてはやらなければならない時もある。
家ができると当然メンテナンスが必要になってくる。
やり方が解らないのでいろいろな職人さんに教えてもらった。
大工さんには玄関ドアの付け方、外し方、調整の仕方や床のキズの直し方。
電気屋さんにはコンセントボックスの付け方、外し方。
設備屋さんにはトイレのタンクの中の部品の交換の仕方。
塗装屋さんには塗り替えの仕方など。
家を造るなどと言う時は勉強するのに最も良い機会。
授業料がタダ。
早速いくつかやってみた。
引越し荷物の移動の際にドアが邪魔になったので、教えられた方法ではずした。
ドアストッパーは忘れられていたので、自分でホームセンターで買ってきて取り付けた。
クローゼット内のハンガーを吊るす為のパイプも自分で付けた。
コンセントボックスもいくつか自分で付けてしまった。
週末は階段下収納内に端材を利用して棚も作ってしまおう。
奥様の希望通りに。
やってみるとなかなか面白い。
引き渡し前でも自分の家なのだから遠慮する事はない。
職人さんにしてみれば手間が減るだけ楽になる。
失敗したらゴメンナサイと言って本職に直してもらえば良い。
分離発注だとこんな事もできるので楽しい。
普段、直接職人さんたちとコミニケーションを取っているのでできる事。
家造りは頭と口とお金だけ出すのではなく、手や足も出した方がより面白いと思う。
遅れに遅れていた工事も最終局面に入っている。
完成前に住み始めてしまったものの、玄関が完成していないので出入りが不自由。
いつも旧家屋の裏口から出入りしている。
何も悪い事しているわけではないし、召し使いでもないのに裏口から。
紛れも無くこの家の住人なのだからコソコソしなくても良いはずなのだが、裏口を使っているとなぜか後ろめたい。
家から外へ出る時など、腰をこごめてつい顔を隠すようにしてしまう。
逆に家に入る時は辺りをキョロキョロと見渡してしまう。
やっぱり「裏」というものには何か不思議な雰囲気がある。
こんなふうに思ったり、行動してしまうのは小生だけか?
週末になり、左官屋さんがタイル工事をした。
玄関とポーチに300ミリ角のタイルを貼る。
大きなサイズのタイルは見栄えがする。
100ミリ角ではこの雰囲気は出ない。
しかし、
このタイルがいわく付き。
設計事務所の売れ残り(発注ミス?)として2年間も在庫になっていた物。
ゴチャゴチャとした設計事務所の片隅で出番をひたすら待っていた。
まさに掘り出し物。
賞味期限が切れていないか製造年月日を見てみる。
箱に2000年3月の表示がしてある。
充分に寝かされて味が良くなっているかもしれない。
色にうるさい人やこだわりの多い人はこの様な物は使わないかもしれないが、小生は全く気にしない。
逆に在庫処分品として設計事務所から安く買い取る。
設計事務所が販売元を叩いて買った物を、更に小生が設計事務所を叩いて買う。
まるで小生が悪代官みたいだが、設計事務所にしても不良債権(不良物件)が処理され大助かりのはず。
この事務所には探せばまだお宝がありそうな気がする。
家が完成した暁には「整理整頓」の有効性について講釈を足れるとするか。
生活を始めると女性陣はお金を使いたがる。
早速カーテンがほしいと言い出した。
「カーテンなんか無くても生きていけるのだから、引出物でもらったシーツでも吊るしておけ。」
と言ったらカンカンになって怒り出されてしまった。
どうも我が家の女性陣には洒落が通じない。
また、ダイニングテーブルとイスもほしいと来た。
小生は金の成る木じゃないのだから、これ以上の出費は控えてほしい。
そんなに脛を齧られては、この重い体重を支えられなくなってしまう。
そんな小生の思いを無視して、彼女たちは隣の市のホームセンターに行く。
このホームセンターは家具専用の別館を持っている。
エビス顔の店員さんに案内されて見て周ること1時間。
さらにはカタログまで借りて選ぶこともう1時間。
何とか決まったようである。
こんな時には小生の選ぶ権利は完全に無視されている。
民主主義も男女同権もへったくれも無い。
仕方が無いので欠伸を噛み殺しながら横でただ見ていた。
カーテンとダイニングセットが決まり、エビス顔の店員さんもホットしたようす。
さらに見ていると何の交渉もせずお金を払おうとしている。
これは一大事。
思わず「一寸待ったぁー」と叫んでしまった。
周囲にいた他のお客さんや店員さんがビックリして振り返る。
恥ずかしかった。
それでもやっぱりこれではまずい。
店頭表示価格で買う人がどこにいるんじゃー。
小生はホームセンターや百貨店の秘密を知ってる。
店で店員から買うより、外商の係から買う方が安く買える。
店員に外商の担当者を呼んでもらう。
それまでエビス顔だった店員の顔が思わず曇り、不満そうな顔になる。
やがてしぶしぶ奥へ外商を呼びに行く。
これであの店員の売上ノルマは達成されず、ボーナスが減る。
逆に外商の担当者は棚からぼた餅で、売上ノルマは達成され、ボーナスもアップ間違いなし。
そんな訳で、店頭表示価格よりあっさり5%引きの値段となった。
家族はビックリして声も出ない。
父ちゃんの面目躍如。
ここでもう一声。
「見積書を作り、設計事務所に送って下さい。」
小生が言う。
今度は外商の担当者が唖然。
そして翌日。
設計事務所(有)アーキテックでの出来事。
ここにはいつもニコニコ顔のコーディネイター高橋さんがいる。
以後、設計事務所での会話。(抜粋)
高橋「もう少し勉強して下さい。」
外商「既に5%引いていますので、これ以上は値引きできません。」
高橋「お宅ではそのうちセールやりますよネ?」
外商「はいやります。」
高橋「では、今日セールやって下さい。」
外商「エッ、はい。解りました。トホホ」
高橋「ご協力ありがとうございます。」
かくして、小生はめでたく家具とカーテンを安価で手に入れる事ができた。
高橋様、誠にありがとうございます。
さてあの外商が店に帰ってから怒られたかどうかは解らない。
しかし、設計事務所って便利だなぁー。
5月も最後の週に入ってきた。
銀行から電話が入る。
「家は完成しましたか?」
「ずいぶん長いですねー。」
「登記の手続きが必用ですヨ。」
そんなこと言われたってまだできていない。
うそだと思うのなら見にこいってんだ。
まだ足場があるんだから。
完成したらピョンピョン跳ねして、登記の手続きするよ。
ついに大工さんが小生の現場に帰ってきました。
5月28日友引の火曜日。
お願いです。
もう浮気はせず、ここしばらくは我が家に通ってきて下さい。
リフォーム用のサイディングも昨日入荷しました。
リフォームする部屋の家具も寄せ、掃除しておきました。
宜しくお願いします。
年老いた母は心配のあまり、寝込んでしまいました。
(ウソです。)
ただ寝込んだのは事実。
物を寄せようとしてギックリ腰になってしまった。
ともかくもう少しです。
お願いします。