<設計時の魅力と問題点>


我が家はオープンシステムの手法を取りいれているが、この手法は万能ではない。
設計時に気がついたことをいくつか書いていきます。

仕入れ

家を建てるには材料を仕入れなければならない、
材木をはじめ内装材、外壁材、各種住宅設備等など。
その他基礎パッキンから筋交い金物まで多様にある。
釘だってどのように入手するか考えなければならない。
一括請負ならこんな細かい事まで考える必要はないのだが、分離発注となると全ての部材についてどうのように仕入れるか考えなければならない。
そしてこれらは全て建築費用となって跳ね返ってくるのでいいかげんにはできない。
小生は素人(あたりまえか)なのでホームセンターで買ってくる事ぐらいしか頭に浮かばない。
ここで重要な役割を果たすのが設計事務所である。
工事の内容に合わせて各製造元や販売店から見積書を取る。
比較検討し、仕入先を決定していく。
仕入額を予算書に組み込み、積算をしていく。
設計事務所の手間を考えると気の遠くなるような作業である。

小生のように気まぐれな建て主と付合う方は大変だと思う。
打合せではサッシはトステムのこのシリーズからと決めるのだが、一日経つと気が変わる。
家に帰り布団の中で、打合せの内容を振り返る。
やっぱり違う物の方がいいのではないか?
二、三日考え込む。
やっぱり新日軽にしてくれとメールを書く。
その度に設計事務所は製造元に見積依頼を出し、再度検討しなおさなければならない。
サッシばかりの話しではない。
全ての部材についてこの作業をしていくのだ。
このような作業は手間がかかり大変なのは事実であるが逆に面白い。
ひとつひとつを自分が納得して決めていく。
メーカー住宅には無い魅力である。

この方法には問題点もある。
小生のように「優柔不断」という言葉が似合う建て主に拘わると、設計事務所の負荷がどんどん増える。
設計事務所の実質利益が目減りしていく。
変更を依頼した後は申し訳ないとこっそり両手を合わせる事にした。
(本当です。感謝しています。)

もっと大きな問題もある。
「仕入れルート」がどれだけあるか。
仕入先を選定するにあたり、複数の見積書を取り比較するのだが、設計事務所に仕入れルートが無いと選択肢の幅が少なくなる。
設計事務所の力量によるところが大きい。
たとえオープンネットという組織があっても全てではない。
各設計事務所がオープンネットも含めてどれだけ仕入れルートを持てるかが、生き残りの条件になると強く思う。
設計だけの力量がどれだけあっても、独自の仕入れルートを持たなければ小生のような建て主の顧客満足度は上がらないのである。
逆に依頼をする建て主側は、契約する前にその点を見極めないといけない。
設計事務所によっては輸入建材が得意だったり、設備に強かったりといろいろなのだ。
小生の場合は見積の段階になってその点に気がついた。

成功か失敗か?
結果は成功!
廣瀬さんは木材を中心に強かった。
(小生の方も独自ルートで多少は調べた。)
有力なルートを持っているという事は、選択肢が広がると同時に単価も下がる。
コストダウンに非常に有効な手段となる。

分離発注

設計事務所と家を建てる事になっても、一括請負で仕事を出す事はできる。
小生はオープンシステムの手法にのっとり、分離発注方式で行く事にした。

分離発注の魅力は何といっても自分で工事業者を選べる事にある。
納得して業者を選べるため工事が始まってからの不満が少ない。
自分が選んだのであるから、自分の責任なのだ。
また、職人が建て主の方を向いていてくれるのもうれしい。
直接工事費を支払っているので、建て主に対し工事業者は嫌な顔をしない。
支払ストップ゚さえ可能なのだから。
別に脅かしているわけではない。
工事中に直接職人と話しができ、工事の進め具合まで検討できるところがいいのである。
現在まで解体屋さんから基礎工事の人、棟梁達と何度も話し合う事ができた。
工事をしながら改善活動ができるのがいい。
できるだけ建築士の廣瀬さんを通して変更や追加は依頼しているが、直接依頼して変更してもらった所もある。
実際に工事が始まってから気づく事もいっぱいある。
「頼まれた仕事だけをやる」、「図面通りにやる」だけではなく、互いに知恵を出し合いながら進められるところが大きな魅力である。

もう一つの魅力はコストダウンが見込める事。
建て主が元請けなので、「丸投げ」や「下請け」という概念が存在しない。
したがって中間マージンが発生しない。
確かにメーカーが工事業者に支払う工賃よりは割高だと思う。
それは大企業と個人の差。
しかし大企業よりも魅力のある切り札もある。
支払いが「現金」。
メーカーの支払いはおそらく手形となる。
ところが個人の場合は現金。
工事業者にとって大きな魅力となり、それはコストダウンに繋がっていく。
現在のように不景気になればなるほど現金の魅力は輝きを増す。

分離発注方式にも重大な問題がある。
工事別にどこに発注を出すかは建て主としては大きな問題。
むろん競争入札方式など複数の業者から合い見積もりを取り、一番良かれと思われる工事業者に発注していくのではあるが、ここに問題が隠れている。

問題とは、設計事務所がどれだけ多くの信頼できる工事業者を知っているかという事。
前述の仕入れの項でも述べた事であるが、ここでも設計事務所の力量が問われる事となる。
オープンネットの中にも業者バンクがあるようだが、それを利用するかしないかも含めて建て主と設計事務所の判断になる。
各設計事務所が工事業者との独自のネットワークを持っていないと良い競争はできない。
工事業者の方にも仕事仲間というネットワークを持っている。
「あのメーカーの仕事は工賃が安すぎる」とか「あの設計事務所はクレームが多い」とかの話題は、職人さんたちの間では日常の話題である。
またこれが人づてによく伝わっている。
よってどれだけ良質な工事業者グループを持っているかどうかが、設計事務所の優劣を決める要素となる。
建て主は契約前にこの事も見極めなければならない。
小生の場合はこの事に気づいたのは後だった。
廣瀬さんがネットワーク持っていなかったとしたら、何百万円かはコストアップしていただろう。

<追記>
分離発注の際の工事業者の選択要件に距離感を入れておきたい。
後々のメンテナンスを考えると、工事業者は建設地に近い方が便利である。
水道が出ないとか、雨漏りが発生した等という場合に、工事業者が遠方では手後れになりかねない。
小生の場合は衛生給排水工事と電気工事は、車で30分以内の近在の方にお願いした。
(ガスは使わない方向で設計したのでガス工事はない。)
ライフラインに関する所は障害の起きる可能性も高く、日常のメンテナンスが必ず必用だからである。

木工事の柏倉棟梁の家も車で1時間ぐらい。
一番遠いのは屋根工事か。
車で2時間ぐらい。

設計事務所と建てる家は本当に安くなるのか?

どこで建てるにしても費用が発生する。
予算という大きな壁と戦わなければならない。
金冷えして困るなどという人は小生の周りにはいない。
どちらかというと、いかに奥さんから余計にお小遣いをもらうかに苦心惨澹している人が多い。

<余談>
小生の周りにはお小遣いをもらっている人が多い。
40代でも50代でも。
自分で一生懸命働いて得た正当な報酬にもかかわらず。
子どもの時は親からお小遣いをもらい、大人になり結婚するとまたお小遣いをもらう。
独身の時はそうではなかったはず。
なんかへん?!

本題。
小生はオープンシステムという考え方に賛同して、設計事務所といっしょに家を造る事にした。
仕入れは産地直送、工場直売などをできる限り利用し、流通コストを下げる。
工事業者は元請け、下請け、孫請けの関係を排除し、中間マージンをカットする。
このような考えで進めてきた。
実際どうだったか。
「安い」という定義が何かわからないのでうまく結論できない。
1500万円なら安くて3000万円なら高いとは言い切れない。
家によって構造や装備など、違いが多すぎて単純に比較できない。
また、小生の場合、分離発注方式と一括請負方式両方から見積書を取ったわけではないので、単純な建築費用では結論が言えない。
見る人によっては解釈が変わってしまうと思う。
歯切れが悪い書き方で申し訳ないのだが、ここまでで小生が感じた事を以下に書いていきたい。

仕入れと掛け率
材料や設備を購入しようとすると「掛け率」とか「仕切値」とかいう言葉が出てくる。
これは小生の会社の中でも出てくる。
この掛け率が小生の知っている社会とは違っていた。
流通関係の人にとっては当たり前の数字なのかもしれないが、工場勤務の小生には驚きであった。
たとえば厨房設備を購入しようとする。
カタログの定価は100万円と記載されている。
見積書を取ると、「掛け率52%」と記載され、仕切値は52万円となっている。
これが特定の会社や材料だけではない。
ほとんどの物の掛け率が45%〜55%ぐらいである。
しかもこの掛け率は販売会社と購入者(会社)との力関係で決まるという。
建築関係の友人から聞いた話しによると、ハウスメーカーによっては掛け率が35%前後になるところもあるらしい。
建築業界には「半値の八掛け」という言葉が生きているという。
小生は掛け率50%の物は50%の値段で購入した。
全ての見積書が開示されているので、途中で変なマージンが発生しない。
設計事務所がマージンを取ったり、工事業者がマージンを取る事も無い。
この点はオープンシステムの良さだと思う。
仕入れは「安かった」と率直に思う。
この辺にも建築業界の古さが残っているように思う。

木材の等級と品質
我が家は木造なので木材が大量に使われている。
(あたり前か)
木材には「無節」とか「上小節」とかの等級が付けられている。
等級によって単価が違う。
では単価の基となる等級の違いは何か?
「見た目」である。
節の無い物が上物とされ、単価も高い。
節が多くなるに従い等級が下がり単価も下がる。
消費者を含めてなのかもしれないが、節の無い物に対する信仰が建築業界にはある。
あくまで「品質」=「節の量」であって、強度とか含水率とかは関係が無い。
南斜面に育ったか、北斜面に育ったか等というのは問題外。
さらには節の量に対する基準があるようでない。
どこかのオリンピックのフィギアスケートの採点基準のようだ。
Aさんには「上小節」に見え、Bさんには「小節」に見えてしまう。
しかも等級を決めるのは木材の生産者なのである。
工場勤務で工業規格に慣れた小生の目には違和感がある。
もし小生がK番長(某プロ野球選手)のような剛表であったなら、木材を買う時に等級にいちゃもんを付け、等級を下げてもっと安く買えたかもしれない。

さて我が家の場合。
自分で山を持っている製材所から購入した。
勤務している会社と取引きのある材木やさんの価格と比較したところ、かなり安かった
流通コストがかからない事はいいことなのだ。
ただこの場合、製材所にしてみれば掟破りとなるため覚悟がいる。
設計事務所を中心としたネットワークが無いと話しはまとまらない。

工事業者と分離発注
工事業者にとって分離発注はやり難いのではないかと考えていた。
工事が始まってからある業者の親方に直接聞いてみた。
何も問題は無いとの事。
メーカーの依頼だろうと個人からの依頼だろうと変わりが無いとの返事だった。
業者と発注者との関係には変わりが無いのである。
電気屋にしても左官屋にしても個人からの仕事を請けている。
笑いながらの話しではあるが、個人からの仕事のほうが良いとの事だった。
理由は工事費の取りっぱぐれがないとの事。
夜逃げでもされない限り安心で、現金払いが嬉しいとの事である。
工務店等の仕事では手形が多いし、場合によっては不渡りになる危険性も高いのだそうである。
それならば個人の建て主の方が「現金」の分だけ交渉が有利になる。
さらに業者に足元を見られる恐れが無いのも良い。
素人の個人と違い、設計事務所が間に入ると無謀な見積りは出してこない。
これもまたメリットであり、魅力となる。
大切なのは手待ちを防ぐ材料調達や、スケジュールのコントロ−ルさえしっかりやれば良いのだと思う。
このあたりのところは設計事務所の役割が大切になってくる。
工程管理や施工監理のできる設計事務所に出会えれば至福の時を過ごす事ができる。

施工監理
欠陥住宅が問題に取りざたされている昨今の住宅業界において、施工監理を依頼しているというのは大きな安心感がある。
しかも第三者監理である。
工事業者と直接の利害関係が無いので、癒着が少ないと思われる。
(そうは言っても信用と信頼の上に立っている事はいがめないが)
この安心感は数字では表せない。
数字でメリットを表現できないが大きな魅力である。

コンサルタント
住宅についてどんな事でも相談できるのは嬉しい。
前述したが建築に至るまでにどれほど悩んだかわからない。
勉強すればするほど、調べれば調べるほど疑問点が増えてくる。
設計事務所が自分の側にあるということは、専門家を味方につけたようなものであり、非常に重宝である。
建築の事はもちろん、住み方、暮らし方まで話しができる。
決断したり、態度を変えるのはあくまで自分の責任ではあるが。
三人寄れば文殊の知恵というのではないが、家族で話しがまとまらない時など特に重宝する。
これもまた大きな魅力の一つだと思う。

小生なりの結論
ここまでグダグダといろいろな事を述べてきたが、そろそろ結論にしたい。
設計事務所と組む事は金銭的にも精神的にもメッリットが大きい。
オープンシステムの考え方を利用すれば金銭的なメリットも十分にある。
ただし設計事務所の力量によるところが大きいので、損をする場合も考えられる。
設計事務所の力量を見極められるかどうかがポイントのようだ。

金銭的なメリットで一言。
メリットの中から設計料というデメッリトを差し引かなければならない。
(本当はけっしてデメッリトではないのだが)
それでも設計事務所と組むメリットはあると思われる。

また勘違いをしてはいけないのは、けっして軽トラックを買う値段でベンツは買えないという事。
金銭的メリットがあるとは言っても、庶民の予算で芸能人が住むような豪邸は造れない。
同じ投資額でワンランク上の住宅を目指せるというのが本当のところである。
自動車だって同じ車種でも数ランクある。
そのワンランク上を目指した時に喜びが芽生えてくる。


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