「書かれなかった」
1999/12/20 開始、脱稿
落川春秋
削られていく命
削られていく魂
削られていく精神
削られていく心
削られていく意識
削られていく夢
削られていく
削られていく
削られて逝く
決して飛翔することのない心
一つ所に括られている心
したり顔で人生を語る人達
何もかも解っているという顔の人達
そんな物が歯車を狂わせていく
そんな物が人を轢き殺す巨大な車輪を回していく
何時の間にか殺されて
何時の間にか死骸を晒されて
そんなことにも気が付けずに
肉体が亡びるまで生き続けてしまうことが
どうして残酷だと
思えないのだろう
どうして
こんな
無慙なことが
ありふれているのだろう
救いを求める声すら嘲笑に掻き消される
何を叫んでも煩いと言われるだけの
泣き言は聞きたくないと言われるだけの
感情など必要とされていない世界
緊張し、集中し、
何かに目覚め、
全てに惑う
神は容易に殺されて
皆は死骸を敬い崇めているばかり
人は容易に殺されて
皆は遺産を敬い崇めているばかり
思い出は何も無いのです
生きた証は何も無いのです
自分が自分であることに何の真実も無いのです
それなのに生きてしまっているのです
死ぬことに死ぬほど憧れているくせに生きてしまっているのです
本当は死ぬのが恐いくせに死ぬことに心底憧れているのです
死ぬことを考えると頭がぼうっとなってとても気分が良いのです
ああ
それも生きていることの現実なのです
死なない私が生きてしまっているという事実なのです
それはとても悲しく、苦しいことなのです
そんなことが生きている理由なのです
私の色は無色透明
まるで何も無いかのよう
だけれど
それは確かにあるのです
誰が望んだという訳でもないのに
それは確かにあるのです
拡がっている闇の深さ
ぼろぼろに傷ついた何かを拾い上げると
少しは気が楽になって
少しは明るい気分になって
ほんの少しだけ自分を許せて
だけど、それも長くは続かない
安易な救いは絶望への道程
判っているのにすぐに飛びつく
そして過去と同じ傷
昔と同じ傷
何も変わらない
怯えて震える孤独な瞳
映っているのは
怯えて震える孤独な瞳
満たされない可哀想な自分が満たされている
それが酷く可哀想に思えて
一人、ほくそ笑む
ちょっとした復讐の生け贄は何時も自分
凡そ恋愛など役には立たず、
却って削られていくばかり
それで構わないと思えるのなら
それが恋愛なのでしょう
音を立てている静寂
死んでいる生命
死から生まれ出でるもの
闇の輝き
生きてしまっているのです
死なないままに居るのです
そういう
か弱くも図々しい生き物