フーゾック、切腹プレイの鬼、人呼んで不死身のスケベこと「ハラキリ大臣」が現れた。
「えっちンガー。愛、そしてプレイの為に死ねぇー」
「い、嫌ですよぉー」
えっちンガーパイロットの悲痛な叫び。愛はともかくプレイの為に死んでたら単なる腹上死だもんな。
「いきなり心中を迫るとは…。ハラキリ大臣、まさに愛の戦士だな」
感心してる場合なのか、店長。
「さぁ、えっちンガー、この俺と一緒に目くるめく官能の死へ」
夕闇迫るオフィス街に立つ巨大な人影。ハラキリ大臣は死装束である純白のエナメル革製ボンデージ姿で日本刀を振り回し、傍らのオフィスビルをぶった切る。
今までにないハードな展開にえっちンガーは怯える。
「今までとは違う恐怖だ。今度は普通に命が危ない…」
ま、今までは生命の危険は少なかったからな。社会的生命は常に死にっぱなしだったが。
「どうした、えっちンガー。貴様、性的快楽より命の方が大事だとでも言うのか。このろくでなし」
「ろくでなしは、あなたの方でしょ」
涙眼でえっちンガーは反論する。
「確かに強引すぎるプレイはマナー違反だな、ハラキリ大臣。店長としては二人の心中には賛成できん。死にたいのなら一人で死ね。えっちンガーは介錯までのオプションプレイで対応する」
店長の鶴の一声。愕然とするえっちンガー。そして。
「よぉーし、そういうことならダイナミックに切腹するぞぉー」
ノリノリだよ、ハラキリ大臣ってば。
「あ、あのぅ。切腹の介錯ってことは、とどめは僕が刺すってことなんですか」
震える声でえっちンガーは問う。
「勿論」
店長の軽い答えが夕闇を、さぁっと渡っていく。
「ふっふっふっ。やはり切腹にはギャラリーが居ないとな。こんな公衆の面前で切腹しちゃうのかと思うと、ドキがムネムネよね、あたしったら」
ハラキリ大臣は公衆の面前での切腹に羞恥プレイの要素をも加味し、更にオヤジギャグにオカマ・テイストまで足してしまう。
喜々として死へと向かうハラキリ大臣を見ながら巨大ロボット えっちンガーは、その巨体をぐったりとさせている。
「何で僕がこんな目に…」
「それが我々の使命だからだ。凡ゆる顧客の凡ゆる欲望に対応する。それが我々地球人が宇宙に対して為せる最大の性的貢献なのだ」
どうして宇宙に対して性的に貢献しないといけないのか、さっぱり判らないが、店長の信念は疑問を受け付けない。
「よし、来い、えっちンガー。俺は何時でもハラキリOKよ」
適当な高さのビルに腰を下ろし、ギラギラと赤い夕日を反射する日本刀を腹に突き当てるハラキリ大臣。その眼光は鋭く、微かに笑んでいる。
「でも介錯って言われても、何をどうして良いのか」
「ふっ。その、うぶな所がお前の魅力か、えっちンガー」
ハラキリ大臣はニヤリと笑う。
「そうだ、この素人っぽさがお前のようなベテランには新鮮という訳だ」
我が意を得たりの店長。
「会話についていけない…」
えっちンガーのパイロットである青年は困惑し、半分、泣いている。
「大丈夫だ、痛くないから」
猫撫で声でハラキリ大臣はえっちンガーを促す。介錯する方が痛い訳ないだろう。
「でも…」
もじもじする、えっちンガー。
「大丈夫だから。何にもしないって。ちょっと腹を斬って、その後で頸を切り落としてもらうだけだからさ」
ハラキリ大臣、優しい声でやけに早口だ。
「えっちンガー、こんなこともあろうかと私が用意しておいた新兵器を使うんだ」
「えっ。店長、その新兵器って」
「この『乳輪火山』の銘が入った観光地のお土産の木刀だ」
どんな観光地だ、そこは。
夕闇を切り裂いてロケットモーターの爆音と共に何処からともなく飛んでくる観光地のお土産の巨大な木刀。「乳輪火山」と彫り込まれたロケットモーター付きの巨大木刀をえっちンガーは受け止めた。
「それでハラキリ大臣の頸が取れるまで殴るんだ」
「ええーっ」
驚く、えっちンガー。しかし、グロいな、今回は。
「ええーっ

ラッキー」
驚く、ハラキリ大臣。何だ、こいつは。
「じゃ、早速行きまぁーすぅっ」
満面の笑みと共にハラキリ大臣は腹に突き当てた日本刀に力を込め、一気に腹に突き刺す。目を背けるえっちンガー。
ボーンという轟音。そして空中高く飛び上がるハラキリ大臣の頸。何もしてないのに頸が飛んでいったのに驚くえっちンガー。
「一人、黒ヒゲ危機一髪とはな」
店長の言葉がえっちンガーの耳に届いた時、ハラキリ大臣の頸は大空高く舞い上がり、空中に満面の笑顔の花を咲かせていた。
「昔の少年マンガの最終回みたい…」
えっちンガーは茫然と見送る。いや、本当に何だよ、このオチは。
「快楽への期待が高まりすぎて待ちきれずに自ら頸を飛ばしてしまうとは。ハラキリ大臣、お前は早漏だ。頸を繋げて出直して来い」
店長の勝利の叫び。そして飛び上がり続けるハラキリ大臣の頸は、そのまま大気圏を離脱してフーゾックの要塞「ガビガビアン」へと戻って行った。地上に日本刀を腹に刺したままの白エナメルボンデージの身体のみを残して。
「今回は完全に我々の勝利だな。画竜点睛を欠いた感はあるが、プレイとしては満足のいく結果と言えるだろう」
満足げな店長を恨めしそうに見詰める、えっちンガーパイロットの青年は呟く。
「店長、この戦いはいつまで続くんでしょうか」
「宇宙風俗の挑戦を全て撥ね除けるまでだ。或いは永遠に続くかも知れないな」
店長の言葉に青年は膝から崩れ、その場にペタリと座り込む。
「母さん、宇宙風俗って何?」
その質問に答えられる母親なんて居て欲しくない。