「路傍」
2004/05/23
2005/01/18
2005/01/29
落川春秋
人の形をした時間が目もくれずに通り過ぎていく

ブツブツと音を立てて神経繊維が途切れていく
断絶する言葉は何も伝えず、混乱だけを伝播する
愛とは何かを問うてみても返り血で染められるだけの影
剥き出しの記憶が牙を突き付ける
死ぬことが怖いことだということさえも恐怖の前に掻き消える
逃げることも叶わない静止の死生
人の形をした時間に彫られた刺青が じっと見ている

呼ぶ声に耳を塞いで生きている
誰が僕を呼んでいる
死んだ子供か 狂った女か

鬼の心が包み込む路傍の思い出
魂の存在を示すかのように佇む子供の瞳には魂が無い
生きる子供に未来が亡い
打ち込まれた呪いが血の代わりに全身を流れる
流れる呪いが命
復讐が現実にこの身に息衝いている

子供の言葉に耳を貸さない
自分の中にそんな物が居ることが許せない
内側に向けた刃が自分自身を殺し続けている
向けられた殺意は過去へと向かい、未来へと突き抜ける
僕は僕を殺したがっている
それは生きる為、それは自分を護る為

平穏な人生には存在しないはずの復讐という幻想
明るすぎる日差しの中に幻を見る
古い傷は思い出になり、思い出によって新しい傷が作られる
憎しみは確かに糧になっている
それを望んで生まれてきた訳ではないが
それを求めて生きてきた訳ではないが

微かに聞こえる呪いの声に心を閉ざして生きている
誰が僕を呪っている
死なせた子供か 狂わせた女か


「闇之球体」 「強力ファイト」
(C)1998−2008 落川春秋