The Heart of Minotaur  written by Kij Johnson
 
これは、若かりし日のシッセイ艦長の物語です。今のところ、3編出てますが、これはそのPART1を翻訳したものですね。わりと分量ありますので、別のページへのリンクとなっております。ご注意。タイトルから推測できるように、シッセイ艦長とターンガースの出会いを描いています。
   
   

 


 

"The Heart of a Minotaur"は、the Duelistの新しい短編シリーズの最初の導入部です。シオドア・スタージョン賞(訳注:シオドア・スタージョンは高名なSF作家です。『人間以上』、『夢見る宝石』など)を受賞したにKij Johnsonによって書かれました。これはシッセイの若かりし頃の物語であり、彼女自身の探索行でもあります。

 シッセイがジェラードと出会い、彼の探索行に参加するずっと前、ジェラードの神秘的なレガシーに関わるアーティファクト収集を始めました。両親は彼女にこの仕事を任せましたが、数年もすると彼女はウェザーライトの艦長となり、そしてそれは単なる親孝行以上のものになっていました。そう、彼女の人生となっていたのです。

 

From the Duelist Vol.21, written by Kij Johnson and transrated by IRO

Sisay's Quest Part One

 

The Heart of a Minotaur

Volcanic Dragonが怒りの叫び声をあげると、ウェザーライトに急降下し、巨体を船体にうちつけた。船体を安定できず、一瞬吐き気のする落下をする。ドラゴンが窓がたくさん並ぶ船のブリッジを過ぎ去り、デッキからすぐのところを抜けていくのを見て、シッセイ艦長はなんとか怒りの声を抑えた。

 シッセイはウェザーライトの縦揺れを静めるに奮闘した。目のすみには、ドラゴンが体を傾けて飛び、低い山に登って次の攻撃に備えるのが見える。木々の間に着陸できるところがないか一生懸命になって探し、船の舵輪を強く前に押した。ドラゴンには、木々に隠れるまでに、もう一回攻撃のチャンスがあるだろう――不時着に成功しての話だが。

 副長、Kebitu(訳注:以降ケビツとします)は怪我をして気を失った乗員が甲板から落ちる前につかみ上げ、よろめきながらやってきた。ブリッジの窓の前を横切りながら、叫ぶ。

「奴め、おれたちを殺す気だぜ!」

「木の下に隠れようとしてるのよ」シッセイも叫びかえす。

「何かに捕まって! また、急降下するつもりだわ」ケビツは積み荷を抱きかかえて手を空けると、手すりをつかんだ。

 あらかじめ警告があったのに関わらず、攻撃は、備えるには素早すぎた。ドラゴンは一瞬空中にとどまったかと思うと、突然、船体に体当たりを食らわせ、ウェザーライトは横向きに回転した。シッセイは「いけない!」と叫んだが、時すでに遅し――乗員という重荷を抱えていたケビツは掴んでいた手が離れ、二人は手すりを飛び越えていった。

 ウェザーライトが森に激突するとねじれたすさまじい音がした。枝はブリッジの窓をぶち壊し、シッセイは窓から外へ投げ出された。痛みで息ができず、シッセイは船が折れた木々の中、右舷の方に傾いているのを見る事しか出来ない。羽の形をした帆が外れて、空に向かって突き出ている。挑戦者を打ち破ったのに満足したのか、ドラゴンは一度叫び声をあげると、空へ舞い上がっていった。

 私たちはただ通り過ぎてゆくだけだったのに、シッセイは無感覚に思った。まだ1000リーグも遠くだけど、Juju Bubbleに関する情報を手入れられると聞いていた、破壊された島の都、Oneah訳注:以降オネアとします)に行く途中だった。今では、単純な符号の一致――ウェザーライトはVolcanic Dragonの巣作りの季節に、テリトリーの近くを飛びすぎた――既に集めた貴重なレガシーを破壊されていたかもしれないのだ。

 シッセイは足がふらつき、幹に捕まった。片腕に(残念なことに、剣を持つ方の腕だ)深い切り傷を負った以外は、問題無いようだ。骨は折れてないし、内臓もやられてない。ウェザーライトは木々の間で揺れていた。見た感じで分かる損傷は、外れてしまったマストだけのようだ。船員たちは地面から自分で立ち上がったり、地面から半分浮き上がったハッチから飛び降りている。シッセイは大声で呼ぶと、手を振ると、からかうような笑い声が生存者からあがった。

「艦長?」ぎこちない表情のまま血を滴らせ、ウェザーライトのナビゲーターがびっこをひいてきた。「大変悲しいことですが…」彼女は途中で言葉をつぐんだ。

「大丈夫なの、Meida(訳注:以降メイダとします)?」シッセイは尋ねた。「額が切れてるわ」

 ナビゲーターは肩をすくめた。「こんなのなんでもありません。娘たちに話す傷痕が一つ増えただけです。そちらは?」

 シッセイはうなずいた。「大丈夫。ケビツとDevved訳注:以降デブドとします。もう少し分かりやすい名前の方が訳者としては嬉しいなあ。トムとかジョンとか…)はどうなの?」

「私は見ましたが…」重々しく息を呑み込んだ。「すいません、艦長。駄目でした。ふたりともです」

「そうだと思ってたわ」シッセイは彼女の瞳に燃えるものを無視しようとした。

「悲しむのは後にしましょう。船の状況を教えて」

 メイダは汚れた手を、森の方を調べていた一人の男に向かって振った。「あそこにいるTterso訳注:デブド以上に読み方が分からないです〜。一応、ツェルソとしておきますけど) が下部デッキはグチャグチャだと言ってました。でも、レガシーや補給は問題無いようです」

「で、ウェザーライトは?」

 メイダは、もう一度肩をすくめた。「誰に分かります? この船のことが分かったことなんて一度だってない。でも、私の推測では、あれだけです」旋回軸受けから完全に壊れてるマストを指差した。「金属が、熟れすぎた果物みたいに裂けてます」

「それはまずいわね」シッセイが言った。

「予備はあったかしら?」

「いいえ。新しい軸受けを作らなくちゃいけませんね。そのためには鋳鉄用の炉が必要です。そして、そのためには、外までハイクしていくか、炉をここで作るしかありません」

 メイダは呪いの声を上げた。「一月はかかりますよ!」

「他にいいアイディアは?」シッセイは痛む肩をぐるりと回した。

「艦長!」ツェルソが森の方を指しながら走ってきた。「艦長、誰かがきます! こっちの方から大勢!」

「みんな! 森の方に気をつけて!」シッセイが大声を上げた。男も女も飛び上がって身構えた。カトラスを逆手で抜くと、木々を見やり、ツェルソに尋ねた。「ヤツラの正体は?」

「いえ、音が聞こえただけでしたので…」彼は立ち止まった。茂みを押しのけ、牛の頭を持った生き物が、ウェザーライトによって出来た空き地に近づいてくるのが見えたのだ。

「なんてこと」シッセイはつぶやいた。「ミノタウロスだわ。タルルームのミノタウロス」タルルーム山脈のミノタウロスはジャムーラ中に、いや、それより遠くまで、知れ渡っている。力強い戦士で、あらゆるよそものを殺すのだ。更にまだ茂みから出て来る。そして、更にまた。40体以上にもなろう。

 シッセイは視覚よりも感覚で、乗員が自分の後ろに集まってきているのを感じた。怪我をし、人数で押され、剣やナイフ、残骸からの間に合わせの武器を持っている。ミノタウロスたちはクリスタルの武器を指でなでながら前に進んだ。この状況から、抜けられる何かがあるはず、冷静に考えた。片手を挙げると前に一歩出る。

「ごきげんよう!」彼女の言葉は響き渡り、ミノタウロスたちは歩みを止めた。「私はシッセイ、ウェザーライトの艦長です」

 一人の灰色のオスのミノタウロスが言った。「私はKhygot訳注:以降キーゴットとします)だ。この中では最年長なので、私が話そう。どうやってここに来た?」

「私たちの船は森の上を飛んできました」シッセイは答えた。「ドラゴンに襲われ、地面に激突したのです」

飛んできた?」、ミノタウロスの不信の声は、軽蔑で縁取られている。シッセイが答えなかったので、言う。「お前たちはここでは侵入者だ」

「それは分かっています」シッセイは何とか声を落ち着かせた。「船を直すための炉を必要としてます。あなたたちが手伝ってくだされば、ここを離れます」

「駄目だな」がらがらと唸った。「よそものをこの山脈で許すわけにはいかない」

「選択の余地はなかったんです!」後ろでは、メイダが緊張した声で他のメンバーに何かささやいている。

「我々にも余地はない」キーゴットはゆっくり言った。「これはしきたりでね。よそものが立ち去るのを許すわけにはいかぬのだよ」

 シッセイは乗員が息を呑むのを聞いた。「私は彼らに対して責任があります」彼女は冷たく言った。「そのようなことを許す訳にはいきません」

 キーゴットの声はミノタウロスに出来る最大級の穏やかさだった。「どうやってわれらを止める気だ? 我々の方が二倍はいる。手早く、そして名誉あるものしてやろう」彼は前に進み出た。

「待って!」シッセイは乗員の叫び声を圧して言った。何らかの解決法があるはずだ。「あなたがたが名誉を重んじると聞きました。ならば、それに挑戦したいと思います」

「挑戦するだと?」キーゴットはミノタウロスたちの不平を抑えて言った。「はい」突然感覚の失われてきた唇を通して、答えた。「私はあなたがたのチャンピオンと戦いましょう。もしも私が勝ったら、乗員の命の保証、炉と補給、船をまた空に飛ばすために必要な援助を受ける。そして私たちも、私たちを行かせたことを、誰にも話さないわ」

 キーゴットは彼女に向けて大きな角を振った。「おまえさんは私の半分の背丈しかない、小さな奴だ。それに剣を使う手に血がついてるのも見える。もう死んでるも同じなんだよ、お前もお前さんの乗員もな。何故、お前の挑戦など受けねばならぬ?」

 シッセイは唇をかんだ。「少なくとも、このチャンスを私に与えることが名誉となるでしょう。これは私の乗員です。あなた方は私を殺すかもしれないが、少なくとも、私は彼らのために戦って死ぬことになる」

 キーゴットの目は彼女を突き通した。あごを上げ、彼女はそれを受け止める。最後に彼は言った。「逃げようとしたら、おまえさんたちを殺す。ちょっと下がって、おまえの案を検討してみよう」どっしりとした指のついた手でジェスチャーをすると、ミノタウロスたちは森の中に消えていった。シッセイと乗員はまた自分たちだけとなった。

「正気なの?」メイダが傷ついた腕を掴むと、シッセイは痛みであえいだ。

「他に取れる道があった?」シッセイは目を閉じた。

「いまなら逃げられるわ」メイダが言った。「山の中に逃げ込みましょう」

「駄目よ!」声が厳しく耳に響く。「レガシーを諦めるわけにはいかない」

「でも、ヤツラは私たちを殺すわ!」

「どちらにしろ殺されるわ。聞こえなかったの? 私たちがもしも逃げたら、狩り出すだけだわ。どんなに僅かでも、これはチャンスなのよ。もしも受け入れられたらね」 

 メイダは長いこと見つめていた。「わかったわ。船倉から余分の武器を掘り出してくる。これは問題無いわよね。で、もしもあなたが負けたら、私たちは戦う。ヤツラを少しでも道連れにしない理由はないわ」

「ちょっと、私が勝つかもしれないのよ」シッセイが暗いユーモアと共に言った。そして突然、真剣になって「絶対にそうしなければ。これはあなただけのことじゃない。レガシーがかかってるんだから。ここからレガシーを持っていかないと」

「分かったわ」メイダは肩に触った。「で、今度はどうします、艦長?」

「今は待ちましょう」


 ターンガースはキーゴットのグループの中でも最も若いミノタウロスであった。まだ、証を立てていないため、座礁した船の近くで輪を描いて座っているチャンピオンに混じり、足を組んで座ることは許されていない。しかし、輪の外側の彼の位置からでも、うなりをあげる議論の一語一語を聞き取ることが出来た。体を半分を外に向ければ、まるで空を指差すような、奇妙な船のマストが木々の上から突き出ているのが見えただろう。

 キーゴットは手を叩いて、皆の注意を集めた。「あの小さな人間は我々に挑戦してきた。これを受け入れるか?」

「もちろんだ」Ghentoth訳注:ゲーントースとします)は言った。ターンガースは彼をあまり好きではなかったが、しばしばPeopleを名誉の点で代表している。「だが、やつはたいして持たないだろうな。奴より強いミーアキャットを見たことだってあるぜ」低い笑い声がミノタウロスの間に響いた。

「いや、ゲーントース、おまえではない。まだ証を立てていないものがいるだろう」キーゴットはそう言うと、周りを見渡した。「ターンガース、お前だ。もう良い頃だろう」

 ターンガースはためらった。「だめです」

 輪の内側でいっせいに議論が始まった。「断るだと?」キーゴットは信じられない様子で尋ねた。

「だめです」ターンガースは繰り返した。輪の中心に進み出る。「何故ヤツラを殺さねばならないのです? 彼らが必要としている援助を与え、行かせてやることも出来るはずです」

 ゲーントースは不平をもらした。「いつも違う考え方をするんだな。うん、若造よ? しきたりはやつらに死ねと言っている…だからやつらは死ぬ、たったそれだけのことだ。お前がミノタウロスとしてこの挑戦を受けられないんなら、俺が受ける」

 ターンガースは唸りかえした。「Torahn訳注:以降トラーンとします)にかけて、ミノタウロスとしてこの様な殺戮に何の誇りもないと感じるのだ」

 ゲーントースは飛び掛かった。「きさま、どういう…」

「もう充分だ」キーゴットが間に入った。「もっとも年を取ったものとして、これは言える。われらは挑戦を拒むわけにはいかぬ。拒むことは、われら自身を否定することになろう。もし彼らが勝ったら、人間の要求している援助を与えよう。だが、奴は小さく、そして、傷ついている。勝つことはあるまい」

 ターンガースは言った。「彼女がやる必要はない。私はこの挑戦、人間であるシッセイの側に立つ」

「おまえが?」ゲーントースは冷やかした。「人間よりもおまえの方がほんとに強いのか」ミノタウロスたちはどっと笑った。

「何故だ、ターンガース?」キーゴットは問うた。「人間のために戦うなど、何の名誉もないのだぞ」

 ターンガースはまっすぐ胸を張った。「人数も少なく、道に迷ったものを殺すことなどに、何の名誉もない! 彼女はこの挑戦が自分の死を意味することを知っていた。にも関わらず、われらに挑戦してきた。彼女の挑戦のために戦うのは誇りあることだ。ここにいる多くの奴より、よっぽど勇気がある!」

 体を飛び跳ねるようにして、ミノタウロスたちは怒鳴った。

「われらはお前の申し出を受けねばならんと思う」キーゴットは言った。「たいへんよろしい。詮索好きの人間たちの目から離れたここで挑戦を受けよう」


「何だってこんなに時間がかかるの?」メイダはシッセイの包帯を結んだ。近くの空き地から聞こえてきた叫び声はやみ、不吉な沈黙が森を覆っている。

 これはまずいことになりそうだわ。腕を動かすだけで、シッセイは涙が出た。カトラスを持ち上げるなんて想像も出来ない。何らかの理由で、ヤツラが逃げ出してくれてないか、と祈ってる自分に気付いた。だが、それは誇り高きタルルームのミノタウロスには有り得ない。すぐに何とかして戻ってくるだろう。

 突然ミノタウロスたちの方からうなり声が聞こえた。「なに…?」シッセイは言いかけたが、武器の打ち合う音を聞いて黙った。

「誰と戦ってるのかしら」メイダがあえいだ。

「聞いてちょうだい」シッセイは言った。「なにが起きてるかこれから見に行ってくる。多分、単なる挑戦を受ける準備なんだと思う。でも、もしもヤツラが仲間割れをしていたり、誰かから攻撃されてるんなら、持てるだけのレガシーをもって、ここから逃げる。メイダ、ケビツが死んだ今は、あなたが私の新しい副長よ。戻るまで、あなたに全権を委ねるわ」

 シッセイは返事も待たずに、森の中に走っていった。ミノタウロスのうなり声や武器の激突する音の聞こえる方に向かって。


 ふとももの傷から流れる血や周りの怒鳴り声を無視して、ターンガースは用心深く円を描いた。さあて。戦いに預けていない、脳の小さな隅っこのほうで考えた。少なくとも奴は俺を本当の挑戦者のように扱ってるな

 ゲーントースは剣でフェイントをかけ、ターンガースは後ろに飛び退った。テキールクリスタルの一片から切り出した剣は、どんな鋼の刃よりも強い。

 ゲーントースは今のところ、最高の戦いをしていた。二人のミノタウロスは円を描いたその位置から二度近づき、ともに剣を強く打ち合い、剣が滑って離れるまでお互いに相手を後ろに押しだそうとした。バランスを失った相手を、体制が整う前に切り付ける。これは挑戦において、チャンピオンの伝統的な戦いかただったが、これはゲーントースに味方した。彼の剣はより切れ味が良く、そして大きいのだ。二回ともターンガースはよろめき、ゲーントースは長い一撃で彼の太股と腕を傷つけた。

 ゲーントースは飛び掛かったが、今度は待ち構えていた。二本の剣は強く打ち合い、衝撃がターンガースの肩と背中を走る。ゲーントースは剣を噛ませて前にのしかかった。ゲーントースの歯がターンガースの顔のすぐ前に迫る。若いミノタウロスは容赦なく後退させられるのを感じた。壊れそうになった剣が手の中できしむ。

 一体どうやって勝つつもりだったんだ? 彼は絶望的に考えた。奴の方が力も強いし、経験も積んでる。しきたりも知ってるし、剣も鋭い。奴にないもので、自分が持ってるものなんかあるのか?

 答えは、敵自身の言葉にあった:いつも違う考え方をするんだな。どうすればいいのか、ようやく分かった。ターンガースの側面への回転は伝統にのっとった動きではなかった。剣が地面を叩き付け、その隙にターンガースは相手を蹴り飛ばし、下の方から蹄をすくってやった。転ぶ際に、あごを殴り付ける――これも新しい動きだ。一瞬動きが止まり、ゲーントースは地面に倒れた。ターンガースはゲーントースの手からクリスタルの剣を蹴飛ばし、自分の鋼の剣をわきにほうった。相手の剣をつかむと、ゲーントースの喉に、クリスタルの先端に血がにじみ出るまで押し当てた。

 それから敵の剣を頭上に掲げ、ターンガースは吼えた。「俺はゲーントースの命の血を採った。そして言おう。人間シッセイは小さく、傷ついている。我々のような力や耐久力もない。が、にもかかわらず、ミノタウロスの勇気を宿している。俺は彼女の挑戦で自らの証を立てたことを誇りに思う。この私の行動により、彼女の乗員は援助と安全な旅を手に入れた。そして俺もPeopleにより、チャンピオンと呼ばれる権利を手に入れたのだ。今から俺は、ターンガース、タルルームのチャンピオンだ」そして空を見上げ、勝利の歌を歌った。

 一人、また一人、とミノタウロスたちは彼に加わった。しきたりはしきたりなのだ。


 ミノタウロスたちの声を聞き、戦いを見るために身を隠していた岩からシッセイは這い出て、乗員の元に戻った。ターンガースがびっこをひきながらやってきた時にも乗員には何も言わなかった。「問題は片付いた。我々は援助しよう」

 シッセイは彼に笑いかけた。「すぐに飛べるようになるわ、凄いものを見られるわよ」

「そうだな」言ってから、躊躇い、そして続けた。「どんな感じだ?」

 シッセイは笑った。「私はあなたが想像も出来ないようなものを見てきたわ。火口の中心部を覗いたり、ハリケーンの目の中でダンスしたり。それから人間のために戦う、ミノタウロスも見たわね」突然真剣な面持ちで向き直った。「あなたはあんまり同族らしくないみたいね。彼らはきっと、普通と違うやり方は、危険なやり方だと考えるわ」

「ああ」ターンガースはゆっくり答えた。

「でもあなたは…」腕に触れ、言った。「…あなたは違う。だから私の申し出を聞いてくれると思うの――ウェザーライトに加わりましょう」

 ターンガースは長いこと彼女を見つめた。息が荒く歯の隙間から漏れる。「わかった」彼は言い、そして自分の心がウェザーライトの翼に昇って行くのを感じた。

 


次回、シッセイとターンガースは、破壊された都、オネアの大図書館に向かいます。

 

 


訳者のあとがき&ひとりごと

ようやく終わりました〜。こんな適当な訳でも結構大変なんですねえ、本人に英語力がないと(^^;)。今回、一番苦労したのが、辞書を引くこと(^^;)。原文のまま読んでいくだけなら無視する意味の分からない単語も、訳す場合は調べないといけないでしょ? で、そういう単語に限って適当なのが見つからなかったり、意味が良く分からなかったりするんですよね〜。あと、途中の訳注でも何度か言ったけど、名前! ミノタウロスが変な名前なのは分かるんだけど、一般の乗組員まで変な名前にすんな! あと文中で出てくるPeople。敢えて、そのまま訳しませんでした。強引に訳すと、『人民委員会』とかそんな感じでしょうかねえ? それにしても、シッセイ艦長もJuju Bubbleのために命はってんだから、報われないなあ、とかいったりして(^^;)。Juju Bubbleの回復力を考えると、ジェラードの知恵ってスゴイ。

そうそう、一つ感じたことがあります。もともとこのウェザーライトサーガ(WeatherlightとRath Cycle)は、過去に出てきたメジャーな他の作品を参考にした、という記事を以前読みました。例えば、ジェラードなんかは、イラスト的にSFドラマ、『新・スタートレック』のライカー副長そっくりです(^^;)。今回これを訳して、ミノタウロスが、その『新・スタートレック』における、クリンゴン人にそっくりだと感じたのですが、みなさま、どうでしたでしょうか。両方とも、外見的に人間とは違うし、伝統や誇りを重んじるし、戦いに名誉を求めるし…。そういえば『新・スタート○ック』でも、クリンゴン人でただひとり、主人公たちとともに行動する、ウォーフ少佐がいましたね。そう考えると、シッセイ艦長がジャン・リュック・ピカード艦長で、ウェザーライトはU.S.S.エンタープライズD(もしくはE)という形になるんでしょうか。う〜ん、露骨ですねえ。

さて、ご希望があれば、Sisay's Quest Part2、The Knife's Edgeも訳します。なければ、「みんな、こういったサイドストーリーって興味ないんだな(T-T)」と思ってやめるだけです。ま、私のヘボイ訳が嫌なだけだって噂もありますけど☆ PART2を希望される方もそうでないかたも、感想のメール下さいね〜。一日千秋の思いでお待ちしておりますっ!
ではでは。