| Knife's Edge written by Kij Johnson | |
| ■ | 上にもある、シッセイ艦長の物語の続きです。今度はHJの翻訳より早いはず(^^;)。これもPART1同様、わりと分量ありますので、別のページへのリンクとなっております。ご注意。ゴブリンにより滅んだオネアの大図書館に向かったシッセイ艦長たちの物語。 |
"The Knife's Edge"はDuelistの新しい短編シリーズの二番目の物語です。シオドア・スタージョン賞(訳注:シオドア・スタージョンは高名なSF作家です。『人間以上』、『夢見る宝石』など)を受賞したにKij Johnsonによって書かれました。これはシッセイの若かりし頃の物語であり、彼女自身の探索行でもあります。
シッセイがジェラードと出会い、彼の探索行に参加するずっと前、ジェラードの神秘的なレガシーに関わるアーティファクト収集を始めました。タルルームのミノタウロスたちとの対決の後、シッセイとウェザーライトの乗組員は破壊された都、オネアに向かいました。
From the Duelist Vol.23, written by Kij Johnson and transrated by IRO
Sisay's Quest Part Two
Knife's Edge
Sisayはキーピックを手に汚い大理石の床に膝をつくと、彫刻のなされたドアの凝った真鍮の鍵を見つめた。
後ろでは、ターンガースがゆらゆら体重を移動させている。「もしもこれが図書館なら」ミノタウロスにとっては、おそらく普通の会話の調子なのだろう、うなり声。「本はどこにあるんだ?」
シッセイは溜息を吐いた。息が、目にかかりゆるくカールした黒髪を動かす。「私が知ってると? まあ、ゴブリンが全部燃やしたんでしょうね」
ありえる話だった。シッセイとターンガースはいくつもの果てしなく続くように見える広間をうろつきまわった。しかし、大図書館はかつては美しかったに違いない、という事実以外何も発見出来なかったのだ。輝くオネアの都を破壊した、ゴブリンの襲撃があってから30年がたった。今でも、図書館の部屋にはかつては栄光を誇り美しかったであろう、ツンと鼻にくる匂いを放つ腐ったタペストリーの断片がある。ゴブリンでさえも、かつてアーチ通りを飾った石の金銀細工全てを破壊することは出来なかった。テーブルや椅子は破壊されているが、完璧なまでに意匠を凝らされた毛皮や折戸の細部は彼女の目に留まった。
ターンガースはそのようなものになんの感慨も感じていないようだった。破壊された芸術作品や、ゴブリンどもの火によってすすで汚れて染みなった床を越えて行進していった。それどころか、はっきりとした歯形がついたり、骨髄のために割られた人の骨が、山となって積まれているのも気にしてないようであった。
本の姿はまだどこにも見られなかった。が、棚やガラス戸棚の残骸が、かつては全ての部屋に文書がいっぱい詰まっていた証拠として残っていた。失われた本に忘れられた土地の地図、偉大なオネア帝国の知識の集大成だ。そういえば、今まで見てきたどの部屋にも生けるものが全くいなかった。ネズミやクモさえも。
シッセイは古代の灰の香りのする大気を深く吸い込んだ。「誰もいないのはおかしいわ。人間も、ゴブリンもいない」「なんでこんな所に残ってる必要がある? ゴブリンにですら何にも食うものがない」
「そうね。30年というのは長い時だわ」シッセイは鋼で出来たキーピックの一つを差し込んだ。それから二つ目を入れ、注意深く動かしはじめた。ほんの僅かなミスが致命的になると感じながら。
「見ろ」ターンガースは廊下に光を投げかける高窓を指差した。汚いガラスを通した光は次第に訪れる宵闇の中ぼんやりとしていた。
「分かってる」シッセイはくしゃみをこらえようと顔を肩でこすった。「このドアは絶対に開けないと。ここにはBubble(訳注:彼女らはJuju Bubbleを手に入れるために来ているんですね。忘れてた?)に関する何かの情報があるはずよ」
「鍵開けなど、名誉あるとは言えないな」ターンガースは言った。
「鍵開けをすれば扉は開くのよ」怒鳴り声にならないよう気をつけながら答えた。彼が乗組員に加わってから数週間がたっており、シッセイは時々このミノタウロスの誇りにうんざりする時があった。キーピックが上手く引っかかったのを感じ、ゆっくり引っ張った。「掛け金を押してちょうだい」
「なぜ?」ターンガースは鼻を鳴らした。拳を傷ついた両開きの扉にうちつける。
「ちょっと!」シッセイは言ったが、ターンガースはもう一度叩きつけた。木が裂ける音とともに、ドアが完全に裂け、鍵が無用のものになった。ちょうつがいが一つだけ残り、ねじれてぶら下がっている。シッセイのロックピックが屑で覆われごちゃごちゃになった床に落ちた。
「私たちは静かに入ろうとしているの!」シッセイが噛み付いた。「次は最初に考えてから行動してよ!」
ターンガースは彼女を見つめた。「私の人生はナイフの刃だ(訳注:言わなくても分かると思いますけど、原文はknife's Edgeとなっております☆)」彼は言った。「結び目を見れば切るし、挑戦にあえば、受けてたつ」
「だめよ。挑戦にあったらば、ちゃんと考えなさい」副長のメイダを思い出した。下の中央広場近くのウェザーライトで見習いに愚痴をこぼしているだろう。メイダとならば、この様な面倒ないのだけれど。
ターンガースは肩をすくめ、ぶらぶらとぶら下がったドアの近くに歩み出た。そして、死んだように立ち止まった。「Hornsにかけて!」
シッセイは彼のわきを通った。「全ての本はここにきてたってわけね」シッセイは息を吐き出した。
彼らが入ったホールは巨大で、天へ向けてのびる金の石柱の先に天井がある。他の残った棚の残骸と釘で叩き付けて作られた異様なほど背丈の高い本棚には、革で製本された本が詰め込まれている。重い秘本が山積みとなっていて、前後にぐらぐら揺れて、ターンガースの背よりも高かった。焦げた巻き物がポットや樽に集められ、散らかっている。シュロの葉で編まれたちょうつがい本(訳注:ちょうつがいのついた本のことらしい。辞書を見ても載ってないし、そんなのあるの?)がアームチェアから散乱していた。シッセイは適当に一冊を拾い上げたが、ページは時と水により、ぼやけた汚れになり果てていた。
「見て…」シッセイは言いかけて止めた。
シッセイは小さい足をひきずる音を聞いた。まるで、スリッパを履いているが、足音を立てないようにしているみたいだ。ターンガスは既にじっとしており、頭を傾け、耳をそばたてていた。こっそりと近づく足音はもう一方のそびえたつ本棚の方から、また近づいてきている。シッセイはターンガースに身振りで棚の端に行くように伝えた。指を唇に押し当てる。彼はうなずくと、埃の中、シッセイが指示した方向に向かって静かに移動しはじめた。
シッセイは棚のもう一方の端に向かって、二人いるかのような音を立てながら進んだ。「ターンガース、私はねえ、ここに誰か手助けしてくれる人がいたらなあ、って思うのよ。結局のところ私たちは情報がほしいだけなんだから」棚の端にもう少しでつく。「でも、ここには誰もいないんでしょうね、まだ。でも…今なら!」シッセイは棚を回り込むと、ちょうどターンガースがもう一方の側から躍り掛かろうとしていたところだった。
「ゴブリン!」叫び声だ。
シッセイは立ち止まった。二人ではさみうちにした男は明らかに脅威ではなかった。小さく、武器もなく、ぼろをまとっており、二人を同時に見ようとして乱暴に頭を振った。「ゴブリンだ!」本棚の方にすくみ上がった。
「違うわ」シッセイは言った。「私たちはゴブリンなんかじゃない。人間よ。人間、分かる?」両手を広げだ。「武器も持ってないわ」
彼は震えていた。「お前たちゴブリンが家族を殺したんだ。お父さんもお母さんも妹たちも、それからおかしをくれた図書館の人達も。それに本をだいなしにした。大事な本なのに! ゴブリンめ!」空気が暗くなった。
「違うわ」シッセイがもう一度行った。小さな女の子だった頃、神経質なやぎにちょうどこんな感じの声で話したものだ。「もうそれは随分前の話だわ。私たちはゴブリンじゃない。ゴブリンはみんなどっかへ行ってしまったのよ」彼はオネアがおちた時は子供だったに違いない。以来ずっと一人だったというのか?
「違う!」声がパニックでぴりぴりしている。
「愚かな!」ターンガースは吼えると、小さな男に向かって飛びかかった。空に集まっていた闇が波紋を作った。それが再び終結し、ターンガースに向かって落ちかかる前に、シッセイには十分考える時間があった。あれは埃なんかじゃない。小さな男は棚をまるではしごのように昇った。シッセイはカトラスを抜き放つと前方に躍りかかった。しかし、闇は既にターンガースに襲いかかっていた。ターンガースはクリスタルの剣を振るう。
シッセイの第一印象では、その闇は黒い霧とぎらぎら光る目、そしてさざなみを立てる列をなす歯で構成された幽霊であった。ターンガースが剣を振ると、間合いの外に上昇し、そしてまた落ちかかる。剣を持つ腕に、歯が絞め金の様に締め付けてきた。痛みと怒りで唸ると、大きな拳を闇に向かって叩き付けた。シッセイは打ち下ろすようにしてPhantom Monsterに向かって切り付けた。カトラスは柄深くまで沈む。シッセイは蜂蜜でも切っているかのように、武器の振りが一瞬遅くなるのを感じたが、無意味に反対側に突き抜けただけだった。化け物は縮こまると、ターンガースは自分の腕を取り戻した。
カトラスをやや波打たせるようにしながら反撃の態勢で構え、シッセイはあえいだ。「大丈夫なの?」
「ああ」ターンガースは不満そうに言ったが、シッセイはそれが強がりであることを知った。肩から手首へのびる曲がった歯形の列から血が流れている。剣を傷のない方の手へ移した。「夜を斬ろうとしてるようなもんだ」
風がピューと鳴るのにも似た音がし、Phantom Monsterが再び攻撃してきた。シッセイが剣を振るうと、闇が後ろの方に渦を巻き、そして今度は餓えた口を開けて前の方に流れ出こんできた。避ける余裕もなかった。手を上げて自分の顔を守ると、歯が触れる痛みが襲うのを感じた。シッセイは手を引き、離れると、地面に倒れこむ。ターンガースが怒りのうなりと共に振るうと、そいつの持つたくさんの目に意識を集中した。
やつは不死身だわ。手を腕に押し当てると、指を伝って血が零れ落ちるのを感じた。ターンガースは、化け物がなぎ払おうとするのを上手くかわした。息を激しく切らしており、傷が疲労となってのしかかってきていた。なぜコイツは攻撃を仕掛けてくの? 一つの動きが彼女の目に留まった。ぼろきれをまとった男は、まだ棚の上にうずくまっており、自分たちを見ている。私たちが彼を脅かすまで、攻撃されなかった。
ターンガースが吼えた。シッセイは本棚に向かって飛びつくと、奇妙な小さな男に向かって登りはじめる。反応は鈍かった。それから、にわかにローブと共に立ち上がると、ジャンプしようとした。シッセイは微笑みながら、彼がジャンプするのと同じくして上へたどりつき、飛んでいる服の切れ端を掴んだ。そして一緒に地面に墜落する。
「私たちを放っておきなさい!」シッセイはささやいた。
「いやだ!」小さな男はののしった。「向こうへゆけ、ゴブリンめ!」
「私たちはゴブリンなんかじゃない!」シッセイは彼を引きずり上げた。「アイツはあんたのでしょう、違う?」化け物はまたターンガースへ躍りかかった。ターンガースは剣で切り裂き、角で刺すが、傷のせいで力がでない。歯がぎらぎら光っている。闇が波となってターンガースを撃ち、ターンガースは膝をついた。
シッセイは小さな男を掴み上げるとターンガースの足元へ投げつけた。「向こうへやらせなさい。でないと殺すわよ」
身振りをすると、紙や本が舞い、シッセイは顔を手で覆った。風が止むと、シッセイは上を見上げた。埃は薄れ行く日の光の中渦を巻いていたが、化け物は去っていた。
小さな男は崩れおちた。「ゴブリンめ」
「私たちはゴブリンじゃないわ」シッセイは言ったが、彼は言い続けた。
「本が燃えていたんだ。知ってたんだよ、お母さんは絶対にすごく怒るって。それから他のものも燃えていた。肉だ。ゴブリンがそこらじゅうにいるのに、お前は僕の美しい怪物をよそへやらせてしまった。ヤツラは僕の本を盗もうとしてた! でも僕は毎晩ヤツラを馬鹿にしてやってたんだ。僕とあいつでね。待って…聞こえる?」
沈黙。「いいえ」シッセイはとうとう言った。「ここにはもうゴブリンはいないの。ゴブリンがいなくなってからもう随分になるわ」ターンガースがうんざりした様子で鼻を鳴らしたが、シッセイは無視した。「あなたの本を傷つけるつもりなんかないわ。私はたった一つのことが知りたいだけ。この大図書館の主任司書が知ってるって言われたのよ」
「お母さんなら」男はいった。「何がどこにあるか全部知ってるよ。お前たちはゴブリンだ。なのになんでそんな事知りたがるの?」
「何故って、私の父と母がここに私をやったからよ。彼女なら知ってるってね」
「ゴブリンには母親なんていない!」彼は突然割って入った。
「私の両親は随分遠くにいるわ。あんまり遠くて、もう何時間も前に太陽が沈むくらい」
「夜だ! ゴブリンたちが!」彼はシッセイの手を取った。「お前のせいでみんな無茶苦茶だ。だから扉を閉めるのぐらいは絶対に手伝え!」
「私が思うに、壊れてるわよ」シッセイは溜息を吐くともう一度聞いた。「あなたはJuju Bubble って名前のアーティファクトを知らない?」
「ここにはないよ」彼は言った。「でもお母さんの残したメモがある」
シッセイは安堵で微笑んだ。「見てもいいかしら?」
「僕の怪物は行っちゃった」彼は言った。「ゴブリンがくるぞ。ヤツラはお前が読み終わる前に僕たちを殺すに決まってる」
突然、広間の方から手足をこすり付ける音を聞こえた。
「本当にいるっていうの?」
「さっきから言ってたじゃないか」小さな男は言った。「一団だよ。他のヤツラが行った後でも絶対に離れないんだ。ネズミを食べてる」
ターンガースの声が轟いた。「ヤツラの数は?」
「20」
「多すぎるわ」シッセイは言った。
「僕の怪物で脅かしてたんだけど」悲しそうに言った。
「またその怪物を呼び戻せる?」
「無理だよ。君が僕に追い払わせたんだろ」
「20か」ターンガースが唸った。「よい戦いになるだろうな。多分、私の仲間も褒め称えてくれるだろう。もしもその話を聞いたらだが」
「待って」シッセイが手を上げた。「多分、ここは力で解決すべきではないわ。いいアイディアがあるの。二人とも棚の上に登って、静かにしててくれる? 私はゴブリンたちに、数の数えかたを教えてくるわ」
ゴブリンたちは壊れたドアをゆっくり通っていった。ゴブリンは良く言って腰抜けであり、いくら数が人間やその仲間たちより多いことを知っていても、それでもまだ臆病であった。
「化け物はどうした?」一人が聞いた。
「いないぜ」別のが言う。「化け物はいないぜ。ここまで来たら噛み付いてきてるはず」
「ドアが開いてて化け物もいない? ううむ」
ゴブリンは鼻を鳴らして吠えると、自らを興奮状態へもっていった。しばらくするとドアを通り抜け、そこには…何もない。沈黙、停滞、そしてほとんど真っ暗。ゴブリンたちは意味もなく空っぽの廊下を踏みならし、本の山を蹴り飛ばした。
地面近くでごつんという音が聞こえた。何かが(もしくは誰かが)近くの高い所から落ちてきたに違いない。一番近くにいたゴブリン、Ghak(訳注:以降ガークとします)は鼻を鳴らし、棍棒を持ち上げた。
「よう、ぶつのはやめようぜ」声はゴブリン語で言った。「ゴブリン、君たちもな」
「うむ」ガークはいった。「お前は俺の知ってるゴブリンか? 聞いたことない声だ」
「良く考えな」うなった。「家族なんだぜ」
ガークはうなずいた。
「ところで一体どうしたんだい?」その新しいゴブリンが聞いてきた。
「狩りだ。人間がいるんだ。奴を殺してやる!」
「どうやって?」
他のゴブリンたちも会話に加わってきていた。「集団で襲うんだ!」Thurkle(訳注:以降タークルとします)が叫んだ。
「14人しかいないのに?」
ガークは眉をひそめた。14人以上はいるぞ。JakkにHugkにEkhaにLegmmieにNkerにタークル(訳注:この一回しか名前のでない連中は堪忍してくださいね)、それから…ガークは何人まで数えたか忘れてしまった。周りで呟きがもれているのに気付く。他のゴブリンたちも何人いたか勘定しているのだ。JakkにHugkにLegmmieに…ちょっと待て。
あの奇妙なゴブリンも何かつぶやいている。「おおっと。数え間違えちった。俺が言いたかったのは11人てことだな。3人に対して。いや、もしかすると4人かな」
あまり良い状況ではないようだった。JakkにLegmmieにEkhaにタークルに…ええと、Jakkちょっと待てよ、もうJakkは数えたんだっけ。
「4人に対してわれら8人!」奇妙なゴブリンが震えて言った。「そりゃ、公平じゃないよ!」
ガークは自分の仲間が賛成するのを聞いた。この奇妙なゴブリンの言ってることは正しい。8人のゴブリンで4人の人間と戦うなんて公平じゃない。ガークはDeglekがつぶやくのを聞いた。「俺達はじゃあなんでこんなとこに突っ立てるんだ? ヤツラ、すぐにでも襲い掛かってくるぞ!」
「そうだ! いうとおりだ!」声が上がる。「逃げよう!」
「ここはゴブリンにとっちゃ酷いところだ」奇妙な声が言った。「山に行った方がいいと思うぞ。5人ものゴブリンでいきゃたどり着くのもそんなに難しくないと思うぜ」
「俺には分かんねえよ」Ekhaは疑わしそうに言ったが、他のゴブリンは賛同した。
「どうするんだい? ヤツラは4人、俺たちゃ3人なのに?」
それで終わりだった。ゴブリンたちは退散していった。仲間のおしゃべりを聞き、連なる山脈に向けて進みながら、ガークは思ったものだ。結局のところ、ヤツラの方が数が多いんだぜ、どうすりゃいいんだよ?
夜明けの光の中で足跡を調べるのは、簡単だった。彼らの足跡は埃の中で明らかにゴブリンのものと知れた。ターンガースにゴブリンたちに何をしてやったか教えてからというものの、奇妙なうなり声を上げるのを止めなかった。笑っているのかしら、シッセイは思った。やっぱり、多分彼にもユーモアの感覚はあるんだろう。シッセイはぎゅっと自分の幸せを抱きしめた。図書館の男は母のメモを読み、Juju BubbleはArgivにあると教えてくれた。以前にも行ったことがあり、道は分かっている。新たなレガシーの断片を一月以内には手に入れ、うちに返って家族に会おう。もう、随分会ってない。
今度は別のイメージを抱きしめた。ベルトを外し、カトラスを渡した時の彼の顔だ。ゴブリンたちはもう去ったわ。シッセイは言った。でも、これがあれば、これからも自分の身、そしてあなたの本も守れるわ。微笑むと、彼は言った。君はいいゴブリンなんだね。ありがとう。
「何故剣を奴にやったんだ?」ターンガースがあたかも彼女の心を読んだかのように言った。「お陰で今は無防備だ」
「私にはあなたがいるわ」シッセイが歩むと、埃が足元から舞い上がった。「30年も廃虚となった図書館を一人で見守ってきたのよ。――常にゴブリンにおびえながら。剣があれば少しは安心して眠れるようになるわ」
シッセイはためらった。「ターンガース、あなたは自分の生き方はナイフの刃だと言ったわ。私も同じ――でも、私たちは違うナイフを使っているのね、私とあなたとでは。あなたは結び目を断ち切り、そしてほどく。そういうかんじね。でも、それでは後に残るのは屑になったひもだけよね。私は結び目をほどいて、どうやってそれが出来たか調べるの。それが出来たら、私は新しい結び方を学べて、しかもひもを手に入れられるわ」
「それのどこにナイフが出てくるんだ?」
シッセイは鼻をならした。「この場合のナイフは『機智』よ、ターンガース。私が思うに、あなたはもう少しそれを学んだ方が言いかもね」
次回、シッセイと乗組員はJuju Bubbleを発見します。…そして命を懸けた戦いが。
訳者のあとがき&ひとりごと Sisay's Quest Part2 "The Knife's Edge"でした。前回のよりも割と順調に訳が進んだ気がします。まあ、前回は、翻訳し終わって喜んでたら、HJのDuelist Japanに翻訳が既にあるのを知ってショックでしたが、今回は先取りしてるでしょう。それにしても、シッセイ艦長もたかだか(失礼!)Juju Bubbleのためにあれだけ苦労してるんだから、Planeswalkerってすごいですよね。ところで、最後にシッセイ艦長のセリフ。余計なお世話だと感じたのは私だけ? さて、今のところPart3も翻訳する予定です。大団円を迎える(?)最終回のPart3だけ訳さないというのもなんだかもったえないような、尻切れトンボのような気がするので。 いつになるかは分からないけど、多分HJよりは先になると思います。では感想のメールなどお願いしますね〜。 |
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Sisay's Quest PART3 "Old War"へ行こ。