| Old War written by Kij Johnson | |
| ■ | シリーズ最終話です。これも前の二つ同様、別のページへのリンクとなっております。ご注意。Juju Bubbleを求めてAdarkar Wastesに来た、シッセイ艦長らの運命が語られております。 |
"Old War"は、Duelistの新しい短編シリーズの3番目の、そして最後の物語です。シオドア・スタージョン賞(訳注:シオドア・スタージョンは高名なSF作家です。『人間以上』、『夢見る宝石』など)を受賞したにKij Johnsonによって書かれました。これはシッセイの若かりし頃の物語であり、彼女自身の探索行でもあります。
シッセイがジェラードと出会い、彼の探索行に参加するずっと前、ジェラードの神秘的なレガシーに関わるアーティファクトの収集を始めました。ミノタウロスやゴブリンとの遭遇の後、シッセイとウェザーライトの乗組員はJuju Bubbleを求めて、Adarkar Wastesに侵入しました。
From the Duelist Vol.23, written by Kij Johnson and transrated by IRO
Sisay's Quest Part Three
Old War
Sisayは、船室の大きな机の上にのっている、隅を本やガラス瓶で重しをしてある図の方にかがみ込んだ。「簡単に終わるわね」彼女はいった。「ウェザーライトをAdarkar Wastesに入れて、小屋を見つけ、Juju Bubbleを手に入れたら空へさようなら」
副長メディアは鼻を鳴らした。「そのとおりね。もし図書館にいた気の狂った奴の言う通りなら。もしその村を発見できたら。もしそこにそのままになってたら。もし、Bubbleが本当に存在するなら」
シッセイは溜息を吐くと、ワインを少し飲み込んだ。「メイダ、きっとそこにあるわ。確信してる」
「だと思うわ」メイダは目をこすった。「多分歩き回ったせいで疲れてるのね。ちょっと娘をまた見てくるわ」
「あなたの『娘』はもう大人だわ」シッセイはドライに言った。「もう自分の赤ちゃんがいるのよ」
メイダはにやりと笑った。「母親っていうのは、もう大人になったからっていうんで、自分の子供に会いたくなくなるものなの? あなたの両親は、あなたに会いたくてしかたないはずよ。もうずいぶんと大きくなった『娘』だけどね」
「分かったわよ!」シッセイは言った。「Bubbleを回収したらただちにFemerefに直行ね。私も会いたいわ」
メイダとミノタウロスのターンガースを引き連れ、ウェザーライトが無音のまま近づく中シッセイは大地を見つめた。混み合ったArgivの街から数リーグ離れただけだというのに、Adarkar Wastesはシッセイがかつて想像したいかなる荒廃した地より遥かに荒れ果てていた。緑なす草などどこにも無いし、青灰色の水溜まりですら何リーグも西に行かなければならなかった。荒野は水平線と海に至るまで続く。混沌とした何尋(訳注:1尋は1.83メートル)にも及ぶ岩や巨礫が灰色の砕け散ったガラスのように散らばる厳然たる平野。ウェザーライトでざっと大地を見たが、船が行くに従って巻き上がるわずかな塵以外、シッセイは何一つ動くものを見なかった。シッセイはもう四度目にもなるセリフを口にした。「一体何をしたらこうなるというの?」
再び、メイダは答えた。「いにしえの戦い(訳注:もちろん、原文ではOld Wars)よ。ここにあったいかなる村落もはるかいにしえの時代に去ったわ。これでは見つけようもありませんね、艦長」
「だめだわ」シッセイは言った。「図書館のあの男は村があると言ったわ。この…大地が荒涼たるものに変わった後に築かれたらしいの。戦争の後に作られたのは間違いないわ」
「じゃあ、どこにあるんです?」メイダは大地を指差した。「ずいぶん遠くまで見通せるのに、廃虚の後なんてどこにも見当たらない。ここを全てはいつくばって行く気ですか?」
「必要ならば」
「艦長?」ターンガースが突然口を開いた。「もしもその村が荒野に建てられたのではなく、その地下に建てられたとしたら?」
シッセイは微笑んだ。「それは鋭い意見ね、ターンガース。私もそれを考えていたの」シッセイは船が地面すれすれを低速で飛行しているのを示した。「私たちは廃虚を確かに探してるわ。でもね、同時に地面に穴がないかも見てるのよ。ただ、こんな所じゃ真上にでも来ない限り穴があるかなんて分からないけどね」
「艦長」ターンガースが言った。「どんな地下も呼吸をしています。もしも地上が暖かければ、息を吐き出しますし、外が夜になって寒くなると、息を吸い込むのです」
「分かったわよ」シッセイがのろのろと答えた。「で、それがどうしたの?」
ターンガースは唸った。「もしも不自然に舞いあがっているゴミがあれば、そこには地下があるという事になります」
「村は」シッセイが言った。「メイダ、見張りに何を探すべきか知らせてちょうだい。これが上手く行くか、すぐに分かるわ」
メイダは敬礼をすると、早足で立ち去った。
「ターンガース、今のは鋭い意見だったわ」
「もちろんです」空に目をやりながら答えた。シッセイには、彼が気取って言ったように見えたが、ミノタウロス相手では本当にそうかは分からない。
午後になると風が出てきたが、Vidats(訳注:以降ヴィダッツ)が叫んだ時も、そよ風以上のものではなかった。「右舷、船尾に向かって四分の三!」シッセイは彼の指差す方に、微妙な影を見つけた。まるで、そこの空気だけ、他よりも汚くなってるかのようだ。見張りは目印をつけ、そして船は進路を変えた。ひっくり返ったような大地にある、大口をあけたいくつもの穴に到着した時には、夕暮れとなっていた。
「これだわ」シッセイは安心していった。「彼の言ってた通り。海岸線からほんの一時間ほどのところよ。取りあえず、ここを離れて今夜は水辺で休みましょう。始めるのは明日からよ」
夜明けとともに、船を地下の村へと進めていった。
「着陸できますかね」メイダは砕けた巨礫が表面となっている下を見下ろしていった。彼女は疑わしげだった。
「メイダ、私たちは何の上にでも着陸するわ」シッセイが命令を下すと、湾曲した着陸用のスパイクが船体から出てくる。ウェザーライトは一瞬、ホバーしていたかと思うと、岩にスパイクが突き刺さるのに十分な力で着陸した。なめらかな岩と金属が擦れ合って悲鳴を上げ、角度が固定するまで傾き、気分が悪くなる。
「さあて」メイダは言った。「今のはすごかったわ。で、ここから出られるの?」
「浮上する時は気をつけましょう。それだけよ」シッセイは言った。「みんな、いいわね?」
メイダはうなずいた。「二人ずつのグループに分かれましょう。乗組員の半分は船に残って。我々はBubbleを探しにきただけよ。だから、必要の無い物はみんな置いていって。新米の二人は私たち二人で分けましょう。だから、ターンガースはあなた、Csaba(訳注:以降ツァバ)は私の方ね」
「いいわ」シッセイはためらって言った。「ターンガースが未熟なようには見えないけど。じゃあ、行きましょう」
シッセイは昇降口から、なめらかな子馬ほどの大きさの岩に向かって慎重に足を踏み出した。しっかりしているように見えたが次の岩は足元ですべり、シッセイはとっさに後方に飛びすさった。あやうく二つの岩の間の、腰ほどの深さのある隙間に落ち込むところだった。ターンガースは幾つか先の平らな石に向かって跳んだ。「簡単ですよ、艦長。」彼は言った。「バランスにだけ注意してください」
「あなたには簡単でしょうけどね」シッセイは辛辣に言った。「岩を登るために生まれてきたんだから」ぼんやりと上の方に見えるウェザーライトを見上げた。「船にあなたほどのバランスがあればいいんだけど」自分の方にまた意識を戻し、周囲の風景に変化を加えている穴を指差していった。「さあて、あそこにあるやつを試しましょう」
乗組員は注意深く近くの穴を選んでいるようだった。ウェザーライトが大地を離れてよりずいぶん経つが、探索は静かで、静寂に包まれており、着陸の時に普段見られるようなお祭り騒ぎではなかった。みな神経質で、滑ったりずり落ちたりすると、がっちりと相棒を掴み上げた。メイダは、農場で生まれ育ち、今までこの様な所一度も来たことがない、ツァバを励ましていた。シッセイが穴の内側にある、荒く切り出された階段を下ってゆくと、副長の声が聞こえた。
シッセイが地面より下に下ると、音は突然聞こえなくなった。階段は下の低い位置にある扉へと下っている。シッセイはかがみ込み、らくらく通り抜けた。体を真っ直ぐに伸ばし、向こう側を見てみる。ターンガースは艦長について入り口を抜ける時、ううっと唸った。
部屋は入り口から予想されたより遥かに大きかった。下半分はまるで一つのおおきな灰色の曇りガラスから切り出したようであった。壁の上半分と天井は暗い石英の石版から作られ、漆喰など使わずに嵌められ、積み上げられたようだ。部屋にある全てのもの――ベンチ、ベッド、箱、テーブル、料理用ストーブ――は全て同じ材質で作られていた。壁を掘って作られた食器棚はごちゃごちゃとケースやジャーが入っており、なんとなく汚れた氷みたいだ。部屋の天井を通ってくる光は、豊かなおぼろげな灰色だ。「ここで暮らすのって、宝石の中で暮らしてるような感じなんでしょうね」シッセイはささやいた。「一体ここに誰が済んでいたの? 一体何が起きたというの?」
ターンガースは角をゆすった。「メイダは何と言っていましたか? いにしえの戦い。我われが剣のために、クリスタルを切り出す鉱山を見てきたが、あっちの方があきらかにすごかった」
シッセイは微笑んだ。「だとすると、その鉱山はほんとにすばらしいのね。さて。見てみましょうか」二人は部屋やその他の物も調べてみたが、何も見つからなかった。外へ出ると、明るい黄色の布で作られた旗を立てた。『ここにはなにもない』。
二番目の穴も似たようなものだった。そして、3番目、4番目も。シッセイとターンガースは、他の幾つかのグループとともに昼食のために休憩を取った。「もう二度と灰色のガラスなんて見たくないわ」シッセイは痛む目をこすった。「ガラスの牢獄に閉じ込められる悪夢を今夜は見そうだわ」
「私は――」メイダが言いかけると。
「金属だ!」ツェルソが穴から這い出てきた。彼の声は、この静寂の世界へ着陸してから、最も大きな音だった。「なんか金属製の壁みたいなのはあるんだけど、触れるとガラガラいうんです」
「ここには金属製の物はないわ」シッセイは眉をひそめた。「メイダ、調べてもらえる?」
「ええ、艦長。ツァバ?」メイダと新しい仲間は立ち上がると、パン屑を払いながらツェルソの方へ向かった。
二人がツェルソの方へ半分も行ったあたりで、ツェルソの背後のガラスの岩がカタカタと音を立てはじめた。ツェルソとパートナーのDjella(訳注:以降ジェラ)は岩が上へと持ち上がり小山を築くと、反対側へよろめいた。シッセイと他のものたちも慌てて跳び上がった。
その丘は更に高くなってゆき、石が横へと転がり落ちてゆく。埃が舞い上がり、何かよく分からない物が丘の中心にあるようだった。肩越しに、シッセイは船の乗員がクロスボウを求める声を聞いた。
ツェルソとジェラは盛り上がってゆく岩から急いで後ろに避難しようとしていた。ツェルソは足を痛めているようで、ジェラは助けようと頑張っているが、上手く行かない。残りの探索していた者たちも立ち上がり、剣を抜いた。ツァバはひび割れてゆく大地からほんの数歩のところで転倒したので、メイダは剣を手に彼女の様子を伺った。
丘が動き、岩の下から巨大な機械が起き上がるのが見えた。奇怪なぜんまい仕掛けのクリーチャーで、真っ黒な金属で出来ている。最後の石が傾斜した肩から落ち、足元で砕けたが、大地の中に埋もれたまま動かない。この金属の野獣はウェザーライトのデッキほどの丈を誇っていた。長い首の上で左右に揺れているモノはどうやら頭らしかった。目もなければ鼻もなく、ただ口だけが金属にはありえない動きをしていた。
シッセイは呼び声をあげた。「みんな、船に戻って。ゆっくり、慎重にね。コイツを起こさないよう。ツァバとツェルソを連れ出してちょうだい」
金属の野獣の頭部がシッセイの声に反応して回転した。
「こいつは一体何のために作られたんだ?」ターンガースが耳元で唸った。
「いにしえの戦いのためよ」シッセイは息をついた。「でもコイツは攻撃を仕掛けてくることはないみたいね。たぶん、このまま撤退できるわ」
ジェラとツェルソは手探りするような足取りで注意深く後退した。野獣の注意はシッセイに向いている間に、メイダがツァバを上に助け起こし、ツェルソのバランスを保つのに苦労していたジェラの方には、二人の女性乗組員が近づいた。足元の岩が揺れ動き、石が落ちていった。野獣が彼らの方に頭を向ける。シッセイはささやいた。「気をつけて…」
頭部が前方に激しく動くと、シューという音がした。薄い緑色のガスが口から吹き出たのだ。ジェラとツェルソは叫び声をあげると顔を掻き毟って倒れた。距離があるのにもかかわらず、ツァバが揺れ動く岩に足を挟まれて倒れ、メイダが呪いの声を上げたのシッセイは聞いた。
「ガスだ!」ターンガースが稲妻のように前へ駆け出した。
「いけない!」シッセイはターンガースを捕まえようとしたが、既に手の届かない所にまで行ってしまっていた。戦獣はメイダとあとの三人向けて粗石を踏み渡ってゆく。シッセイはターンガースを追おうとしてつまずき転び、残りの乗組員に向けて叫んだ。「船へ戻りなさい! 空中へ待避させて!」
ウェザーライトにパワーが入ると、ブーンと音を立てる。戦獣はまるで音が聞こえるかのように頭部を傾けた。視界の隅にシッセイは、二人ほど昇降口へ飛び込むのが見えた。よし、ほとんどの乗員が乗り込めたようね。船が着陸用スパイクを引き抜くと、下にあった岩は砕けてしまった。戦獣は船めがけて突撃を開始した。そして、ツェルソ、メイダ、ツァバ、ジェラはそのちょうどルート上に…。
「だめよ!」シッセイは悲鳴を上げた。「船を上へ! メイダ!」
火事場の馬鹿力で、ジェラはツェルソを抱えたまま、横へ跳びすさった。メイダはツァバを体ごと引き上げると、迫り来る敵に一瞥をくれ、ツァバを何ヤードも遠くへ投げやった。頭部をまるでモールのように、メイダのいる礫めがけて振り下ろす。岩が砕け、ガラスの破片が飛び散り、メイダは礎石へ落ちていった。戦獣はさらに前へと進んでゆく。
ターンガースはツェルソとジェラの二人を遠くへ引っ張っていった。ジェラは動揺していたが、注意は船へと向けられていた。船が上がろうとした所を、戦獣は頭部を着陸用の鉤爪に向けて振るい、今度は完全に破壊する。船は傾いたが、持ちこたえると、戦獣の届かない所にまでに浮上した。
シッセイは戦獣の足の隙間に踊り込むと、メイダの消えた動くガラスのあたりへと体をねじ込む。突然、隙間から、平らな床に転落した。ガラスの部屋の一つにいるらしく、戦獣の突進によりほとんど破壊されている。メイダは体をねじらせ、箱の側の球の中に横たわっている。まるで、シェルターを探していたかのようだ。血溜まりがメイダの下に出来ていた。シッセイはそびえたつ機械の足を無視してかけよる。「メイダ、大丈夫?」
メイダは何も答えない。シッセイが顔に顔に触れると既に冷たくなっていた。剣ほどの長さのある破片が、喉を貫いていた。少なくとも、苦しみはしなかったわね、シッセイはそう思った。
戦獣が動くと、ガラスが滝となってシッセイとメイダに降り注いだ。箱は足が踏み潰していったようだ。その残骸から、中心部に日没の光を湛えた球体が、繊細で小さな細枝、より糸、縫糸に巻かれている。Juju Bubbleだ。
切れた手のひらにBubbleを抱くと、シッセイは戦獣の足から遠ざかるよう、横にカニ歩きした。割れ目から太陽が見える。既にいないのに気付かないのか、クリーチャーは、ウェザーライトのいたあたりに頭部で突撃していた。
ツェルソを引っ張り上げようとしているジェラを手伝っていたターンガースの上にウェザーライトが来ると、縄梯子がおろされた。ジェラは仲間を梯子にぴったり寄せて抱えると、上へ引っ張り上げるよう合図した。
シッセイはふらつきながらターンガースへ歩み寄った。「メイダは?」
「死んだわ」シッセイは言った。
「ならばヤツを殺すまでだ」ターンガースは言うと、テキール製の剣をすらりと抜いた。
「それは出来ないわ」シッセイは言った。「殺すようなものなど何もない」
「だが――」
「あれは単なるモノよ。はるか昔に絶えた戦争の遺物。見てごらんなさい。なんにもないわ」獣はハンマーのようにガラスに何度も何度も頭を打ち付けていた。梯子がまた降りてきた。「ときには、戦う代わりに調べてみることも出来るわ。ときには、戦う代わりに騙すことも出来る。ときには、戦う価値など全くないこともあるのよ。ただ立ち去るだけ。これを持っていくのを手伝って、ターンガース」手の中で微光を放つJuju Bubbleを見せた。「メイダの命が代価となったわ」
ターンガースは長いことシッセイを見つめ、そして彼女を腕に抱えると梯子を昇っていった。死に絶えた村と金属の野獣を後に残して。
Juju Bubble探索のシッセイの旅はこれで終わりです。Vol.28から始まる次のシリーズをお楽しみに。
訳者のあとがき&ひとりごと パート3でした。どう見ても、シッセイ、あんまり良い奴には見えない気がするのは私だけでしょうか? なんか部下を食いつぶして旅してる気がしてしょうがないんですけど(^^;)。 ところで、Vol.28からのシリーズをどうするかは全く未定です。だって、まだ発売されてないんだもん(^^)。まあ、この手の翻訳は個人的な趣味なんで、やるかもしれません。翻訳が趣味というと変に思うかもしれませんが、結構面白いものですよ。ではでは。 |
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