10. 絵本の読み聞かせ


 今している仕事の中で、一番楽しいのが「絵本の読み聞かせ」である。 2年前に新しい職場に変わった。 0からのスタートで、「人の前で、教育について何か有意義なことをしゃべる」ことが私の仕事になった。 はてさて何をやったらいいのか途方にくれる毎日だった。 その職場には30人ほど、以前からこの仕事をやっている人たちがいる。 先輩は何も教えてくれるわけではない。 プロの将棋の弟子入りと似ている。 自分で努力する以外にない。 シンガー・ソングライターの噺家版。 しゃべるネタを自分で考えて、自分が話す。 話し方もうまくなければいけない。 人気があれば、全国から声がかかる。 人気がなければ声もかからず、毎日を悶々として過ごさねばならない。 その人気度合いが、報酬に反映される。 定年を前にして、何とも厳しい職場に配属されたものだ。 やろうとすることがほとんどすでに誰かがやっている。 名人芸にまで達している人もいる。

 悩んでいる私に、私のことを何もわかっていない堺市の人から声がかかった。 話す時間は90分。 対象は幼児から小学校低学年の子どもたちとその保護者。 「困った困った、そんなものできないぞ」と思ったが、毎日仕事がなくて悶々としていても仕方がないので、とにかく引き受けることにした。 教科書から問題を作ってみて、その合い間に面白くもない「教育の話」をすることにした。 でもこれではとても90分はもたない。 そこで話の最初と最後に「絵本の読み聞かせ」を入れることにした。

 東京の職場には何百冊もの本の読み聞かせや、紙芝居をできる名人が2人もいる。 幸いなことに大阪にはいない。 まして大阪弁でとなると、東京の彼らには無理。 「よっしゃこれや」と思ってとりあえず2冊の絵本を選ぶ。 「かいけつウンコの助」と「じごくのそうべい」。 堺では、話の内容はそっちのけで、この「読み聞かせ」が受けた。 何とか仕事の実績ができた。

 でもこれから「読み聞かせ」を仕事にしていこうと思えば、2冊だけでは仕事にならない。 それからコツコツと始まった本選び。 選んだ後には、妻に客になってもらって練習。 妻からの遠慮会釈のない厳しい指摘。 何回も何回も読み込んでから、子どものたちの前で実践。 何回かやっているうちに「絵本の読み聞かせ」だけでも声がかかるようになった。 やっている時は何だか、落語家か漫才師あるいは紙芝居屋になった気分。 子どもたちだけでなく、大人も熱中してくれる。

 今では大阪市の淀川図書館で月1回、定期の「お話会」の仲間に加えてもらえるようになった。 住んでいる近くの小学校からも声がかかるようになった。 仲間にはプロの落語家の笑福亭OOもいる。 仕事でこんなに楽しいことができるなんて、社会人になってから初めての経験といってよい。 子どもたちに受ける本で、私も楽しめる本がようやく20冊くらいになった。

 とにかくやっている時は、聞いてくれている人たちよりも、やっている自分の方が楽しい。 「読み聞かせを聞いてくれた子どもが読書好きになってくれたら」と思えるようになった。

 この仕事は定年後もボランティアとしてすることができる。 自分のボケ防止にもなる。

 今はまだ将棋の世界で言えば、アマチュアの5級程度。 プロにはとてもなれないが、せめてアマチュアの有段者か、奨励会を受ける前の研修生程度までにはなりたいと思っている。

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01.スイスに日本は100年たっても追いつけない?

02.老後はどこで生活をすれば快適?
行政によってサービスが違うのはどうして?

03.56号を打て、タフィー・ローズ!

04.日本シリーズ近鉄はパソコンで徹底分析され、惨敗した

05.気になる電車・バスの中での“携帯電話ご遠慮ください”の放送

06.「愛子さま」「天皇みたい」

07.ある少年の悩み

08.早くなくなれ、女子高生のミニスカート

09.定年後の準備は何もできていない

10.絵本の読み聞かせ

11.東京ドーム(巨人戦)、福岡ドーム、甲子園は満員。
他球場はガラガラ、何とかしようよ。

12.訪問販売・電話セールス

13.私の車選び

14.将棋まつりに参加して

15.読書の秋

16.私が昔使っていて、今は使わなくなった言葉(パート1)

17.山登り

18.酒がおいしかった思い出

19.温泉でゆっくり

20.ある日曜日

21.ファミレスにて

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