赤い、青い、などの色を我々は感じることができます。では、その赤とか青とかはいったい何の違いでしょうか。人間が「物を見る」というのは、「物体から出た光が目に入り、目がそれを感じる」ということです。ですから色は光というものの属性の一つです。
色の感じ方は個人差もありますが、民族によっても違いがあるようです。「太陽が黄色かったから」というのはカミュの「異邦人」の主人公の台詞です。つまり欧米では太陽の色は黄色と認識されているわけです。一方日本では太陽は赤く描かれることが多いようです。昼間に見上げてみるとわかるように、太陽の光は実際には「白」と言っていいでしょう。夕日は赤いと思うかもしれませんが、実際に見ていると真っ赤ということは少なく、せいぜい橙色ぐらいです。日本人が「太陽は赤い」と表現する理由は、元々日本語にあった色を表す言葉が「赤い」「青い」「黒い」「白い」だけだったからだと言われています。その証拠に、「黄色」や「緑色」は「黄い」や「緑い」のような形容詞になりません。「青信号」が実際には緑色に見えたり、「みどりの黒髪」という一見矛盾しているような言葉があるのも、「みどり」というのが元々は色を意味する言葉ではなく、「若々しい」という意味の言葉だったからだと言われています。
光の正体が何なのかについては長い間議論がされましたが、特に17世紀頃、光は粒子であるという説と波であるという説があり、物理学者たちが議論を続けていました。結局、17世紀の段階では「光は波である」ということで決着がつきました。ただし、波と言っても何が振動しているのかについては、19世紀終わり頃にマックスウェルが「光は電場と磁場の振動である電磁波の一種である」ということを発見するまで決着がつきませんでした。
波である、ということになると、「色」は波のどのような性質なのか、ということが問題となります。実は「色」は光の振動数(1秒に何回振動するか)あるいは波長(波の山から次の山までの距離)の違いであるということがわかっています。波長(ナノメートル=10億分の1メートルを単位として測ったもの)と色との対応が、左の縦に長いグラフです。赤外線とか紫外線と呼ばれるものは、実は赤よりも波長の長い光(赤外線)や紫よりも波長の短い光(紫外線)です。
テレビやラジオなどに使われる電波は、赤外線よりもさらに波長が長い電磁波です。波には「自分の波長より小さい障害物にはほとんど邪魔されることなく通り抜ける」という性質があります。そのため、テレビやラジオの電波は光に比べて、物体に遮られることが少ないのです(実はラジオの電波の方が波長が長いので、テレビよりもよく届きます)。
光の波長の違いが色の違いであることがよくわかる例が、CDによる反射光の色です。
CDを斜めに見ると色がついて見えますが、これはCDの一つの溝で反射した光が、となりの溝で反射した光と重なって目に入るために、特定の波長の光以外が消されてしまうからです(光に限らず、波は山と谷がぶつかると消えるという性質がある)。だから、見る角度を変えるとCDの色は変化します。
いろんな物質には特有の色があります。これはそれぞれの物質に光を当てた時、特定の波長の光だけを吸収したり反射したりするからです。それはそれぞれの物体の原子や分子の並び方、集まり方などが特定の波長の光を吸収しやすくなっていたり、反射しやすくなっていたりすることから起きます。
もう一つ、物に色がつく理由として、光の屈折(違う物質に光が入射する時に曲がること)の仕方が波長によって違うということがあります。虹の七色などがよい例です。空中に浮かんだ水滴のなかで光が反射する時、「空気→水」「水→
空気」のところで曲がる(屈折する)のですが、その時、紫の光の方がより大きく曲がります。そのため、遠くから見るとある場所の水滴は赤く、ある場所の水滴は紫に見えることになり、虹が見えるわけです。
同様に屈折によって色がつく例として、プリズムやダイヤモンドがあります。ダイヤモンドはきらきらといろんな色で輝くように見えますが、それはダイヤモンドの屈折率が大きく、入ってきた光をいろんな波長の光に分解するからです。
面白いことは、波長が長い光ほど、実はエネルギーが小さいことです。普通、赤は暖色、青は寒色と呼ばれ、赤の方が温度の高い色と感じられやすいのですが、現実は違います。実は青い光の方がエネルギーは大きいのです。それが証拠に、紫外線を浴びると日焼けしますが、赤外線を浴びても日焼けすることはありません。
ここまでの話でわざと抜かしていたことがあります。「エネルギーが高い」とか「エネルギーが低い」とかいう言葉を、非常に曖昧なまま使っていました。たとえばついさっき「紫外線の方が赤外線よりエネルギーが高い」ということを述べましたが、これはいったい、どういう比較をしているのでしょう。たとえば100 ワットの赤外線ランプと20ワットの紫外線ランプを比べたら、いったいどっちがエネルギーが高いのか、と言われたら、普通「100ワットの赤外線ランプ」と答えるでしょう(実際、電気代はこっちの方がかかります)。しかし、いくら赤外線ランプをあびても、熱いとは感じても日焼けはしません。
この理由は、20世紀初頭までは物理における謎の一つでしたが、そのことをつきつめて研究した結果、実は光が波であると同時に粒子でもあるということがわかりました。そして、その粒子(光子と呼びます)の持つエネルギーが(プランク定数)×(光の振動数)で表せることがわかりました。つまり、100ワットの赤外線ランプの方が全体でのエネルギーは大きいけど、20ワットの紫外線ランプの方が光の一粒の持つエネルギーが大きいのです。そして、例えば日焼けするということは、人間の肌になんらかの化学反応を起こさせるということです。これは光の粒(光子と呼ぶ)が人間の体を作っている物質の分子にあたり、その分子の結合を外すことが原因です。赤外線の光子はエネルギーが弱いので、分子結合を外すことができません。