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投げられたボールに働く力

プロ野球のピッチャーは、だいたい時速100キロから150キロぐらいまでの速度でボールを投げます。

空中にあるボールに働く力はどんなものがあるでしょうか。

  1. 重力下向きに働きます。大きさは常にボールの質量×9.8ニュート ンです。
  2. 空気の抵抗主に、ボールの進む向きと反対に働きます。大きさは ボールの速度の自乗に比例すると言われますが、ボールの回りにできる 空気の動きによっても大きく変わります。
  3. マグナス力ボールが回転しながら空気中を飛ぶことによって起る 力で、回転の軸と垂直な方向に働きます。カーブが曲がる原因となる力 です。

マグナス力については後に回して、まず抵抗力について考えてみましょう。抵抗力は

(抵抗係数)×(速度)${}^2$

のような式で表せます。この抵抗係数が大きいほど、ボールは飛びにくいことになります。

ボールが飛んでいく時の回りの空気の状態は、乱流の場合と滑流の場合があります。滑流の場合、ボールの後ろに渦が発生してたなびいていますが、ボールそのものの回りの空気はボールと一緒に運動します(ボールの上に虫がいたとすると、虫は振り落とされることはない)。乱流の場合、ボールの後ろに名前の通り、乱れた波が発生します。この場合はボールの回りの空気はボールと一緒に運動しません(ボールの上の虫は振り落とされる)。もしボールの速さが80キロ以下なら滑流のみが存在し、320キロ以上なら乱流だけが存在します。その中間の時はボールの表面の状態や回転の仕方によって変わります。実際に野球をする時のボールの速さはこの「ボールの表面の状態や回転の仕方によって変わる」範囲に入っているため、投球という動作にはいろいろ面白いことが起るわけです。

ここで面白い事実は「同じ速さなら、乱流が起きている場合の方が抵抗は小さい。」ということです。

¥begin{wrapfigure}{l}{8cm}
¥epsfxsize =8cm¥epsffile{ballgraph.eps}¥end{wrapfigure}

実際に測定されたボールの抵抗係数のグラフは左の図のようになります。だいたい、時速150キロぐらいで飛ぶボールにかかる抵抗力が、重力と同じ大きさになります(下から時速150キロの風が吹いていると、ちょうどボールは静止する)。グラフの点線は、ちょうどボールに働く抵抗力が重力と等しくなる時の抵抗係数を表しています。

グラフを一見して、つるつるしたボールが抵抗係数が大きい(飛びにくい)ことがわかります。また、野球のボールよりでこぼこしたボールだと時速100キロ程度では野球のボールより抵抗が非常に少ないが、逆に速度が増すと抵抗が大きくなっていることがわかると思います。

つるつるしたボールが飛びにくい理由は、先に述べた「滑流」の方が生じるからです。ゴルフのボールは表面全体につぶつぶがついていますが、これはボールを遠くまで飛ぶようにするための工夫です。野球のボールの場合、ゴルフボールほどにはでこぼこしていませんが、ボールについている縫い目がゴルフボールのでこぼこ同様の面白い役割を果たします。

¥begin{wrapfigure}{l}{5cm}
¥epsfxsize =5cm¥epsffile{nuime.eps}¥end{wrapfigure}

投球されたボールの最初の速度を初速、ホームに達した時の速度を終速と言います。この初速と終速に差がないほど打ちにくいと思われますが、そのためには(空気抵抗はでこぼこしたボールの方が小さいので)、ボールをでこぼこにすればよいということが言えます。しかし、ボールの形は規則で決まっています。そこで速球投手は同じ形のボールでも少しでもでこぼこに近づけるために、図の右のような回転を起こすように投げるとよいと言われています。縫い目が一回転で4回横切ることになるので、図の左のように一回転で2回横切った場合よりでこぼこ度が増す、というわけです。

このような握りの違いで、終速を3キロぐらい変えられるのではないかと思われます。140キロの中の3キロというと大したことがないように思うかもしれませんが、これを同じ時刻での到達距離になおすと、15センチぐらい違ってきます。当然、15センチ分打者のもくろみと違う球がきたら、バットは空振りとなるわけです。

野球のボールをピッチャーが投げた時のことを考えてみます。時速145キロで飛ぶボールは、ピッチャーからキャッチャーに到着するまでの間に、91センチぐらい落ちます。

 ¥epsffile{rakka.eps}

91センチも落ちるというと、ちょっとびっくりしますが、実際にピッチャーが投げる時は、もし落下しなければキャッチャーの構えたミットより91センチ上に行くようなボールを投げることになります。これはずいぶん上に投げるように思うかもしれませんが、実際のボールの軌道は、まっすぐの直線に比べて20センチしか上に行きません。

 ¥epsffile{rakka2.eps}

実際にボールがこれぐらい落ちていることは、テレビの野球放送で横から撮ったビデオを流してくれると確認することができます。ただし、この落下は、後で述べるマグナス力によって少し小さくなります。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日