空中にあるボールに働く力はどんなものがあるでしょうか。
マグナス力については後に回して、まず抵抗力について考えてみましょう。抵抗力は
(抵抗係数)×(速度)
のような式で表せます。この抵抗係数が大きいほど、ボールは飛びにくいことになります。
ボールが飛んでいく時の回りの空気の状態は、乱流の場合と滑流の場合があります。滑流の場合、ボールの後ろに渦が発生してたなびいていますが、ボールそのものの回りの空気はボールと一緒に運動します(ボールの上に虫がいたとすると、虫は振り落とされることはない)。乱流の場合、ボールの後ろに名前の通り、乱れた波が発生します。この場合はボールの回りの空気はボールと一緒に運動しません(ボールの上の虫は振り落とされる)。もしボールの速さが80キロ以下なら滑流のみが存在し、320キロ以上なら乱流だけが存在します。その中間の時はボールの表面の状態や回転の仕方によって変わります。実際に野球をする時のボールの速さはこの「ボールの表面の状態や回転の仕方によって変わる」範囲に入っているため、投球という動作にはいろいろ面白いことが起るわけです。
ここで面白い事実は「同じ速さなら、乱流が起きている場合の方が抵抗は小さい。」ということです。
グラフを一見して、つるつるしたボールが抵抗係数が大きい(飛びにくい)ことがわかります。また、野球のボールよりでこぼこしたボールだと時速100キロ程度では野球のボールより抵抗が非常に少ないが、逆に速度が増すと抵抗が大きくなっていることがわかると思います。
つるつるしたボールが飛びにくい理由は、先に述べた「滑流」の方が生じるからです。ゴルフのボールは表面全体につぶつぶがついていますが、これはボールを遠くまで飛ぶようにするための工夫です。野球のボールの場合、ゴルフボールほどにはでこぼこしていませんが、ボールについている縫い目がゴルフボールのでこぼこ同様の面白い役割を果たします。
このような握りの違いで、終速を3キロぐらい変えられるのではないかと思われます。140キロの中の3キロというと大したことがないように思うかもしれませんが、これを同じ時刻での到達距離になおすと、15センチぐらい違ってきます。当然、15センチ分打者のもくろみと違う球がきたら、バットは空振りとなるわけです。
野球のボールをピッチャーが投げた時のことを考えてみます。時速145キロで飛ぶボールは、ピッチャーからキャッチャーに到着するまでの間に、91センチぐらい落ちます。
91センチも落ちるというと、ちょっとびっくりしますが、実際にピッチャーが投げる時は、もし落下しなければキャッチャーの構えたミットより91センチ上に行くようなボールを投げることになります。これはずいぶん上に投げるように思うかもしれませんが、実際のボールの軌道は、まっすぐの直線に比べて20センチしか上に行きません。
実際にボールがこれぐらい落ちていることは、テレビの野球放送で横から撮ったビデオを流してくれると確認することができます。ただし、この落下は、後で述べるマグナス力によって少し小さくなります。