その業績としては、天動説から地動説への転換がよく言われますが、実はより重 要なのは、前節で述べた「ものは外から力を加えなければ動かない」という `常識'を再検討し、本当の法則を導き出した、という業績です。それが後にニュー トンが運動の法則という形で取り入れる、慣性の法則、すなわち、「ものは外か ら力を加えなければ動かないか、同じ速さで一定方向に運動を続ける」という法 則です。「同じ速さで一定方向に運動を続ける」という可能性を含むところが、 もっとも大きな違いです。
ガリレオが慣性の法則を説明するために行った実験は以下の図のようなものです。
ガリレオは実際に斜面の上で物体を転がす実験を何度も行い、つるつるした(摩 擦の少ない)面では、斜面の形に限らず、元とほぼ同じ高さまで物体が登ってく ることを確かめました。では、図の右側にあるのが斜面ではなく、平面だったら 物体はどこまで行くでしょう?
実際にやってみたとしたらもちろん、ある程度進めば物体は止まるでしょう。で も、床がつるつるしていればつるつるしているほど、物体は遠くまで進みます。 もし、摩擦の影響を完全に排除できるのであれば、物体は無限の彼方まで進んで いくことになるだろう、というのがガリレオの考え方です。
以上のように実験をしながら一つずつ確かめていくと、アリストテレス的な「物 体は力を受けなければ止まっている」という考え方は実は間違っているのではな いか、という考えに至ります。実際には「力を受けなければ止まっているか、まっ すぐに進み続ける」というのが本当なのです。ただ、我々は摩擦という力が常に 働く世界に住んでいるので、そのことが`常識'とならないのです。
ガリレオは摩擦なども含めていっさいの外因を取り去らない限り「力を受けなけ れば」という条件が達成できないので、運動の法則を考える時には外因を取り去っ た理想的な世界(実際には実現できない)を考える必要がある、と述べています。
`常識'を`法則'にすることの難しさを、この歴史が証明しています。