例えばギリシャ時代では、熱も基本的な物質の一つと考えられていました。アリストテレスの4元素説では、地上の世界は土、水、空気、火の4種類の元素で構成されていると考えられていました。
17世紀頃には、可燃物質には「フロギストン」と呼ばれる物質が含まれていて、そのフロギストンが逃げ去ることが「燃える」ということだと考えられていました。
人間の素朴な感情としては、熱というものも何らかの物質で、物体の中に含まれていると考えたくなるようです。そのように考えたくなる理由は、熱には保存則があるからです。例えば(以下の熱の単位などは現代使われているものを使います)、100度Cの水100グラムと0度Cの水100グラムを混ぜると、50度Cの水200グラムになります。ところが、100度Cの水100グラムと0度Cの水300グラムの場合は、 25度C400グラムになります。これを熱を粒子と考えて、その粒子の濃度で温度が決まるとするならば、図のように考えて説明することができます。
熱量の単位であるカロリーは、(比熱)×(質量)×(温度差)で定義されます。第1の実験の場合、1×100×50で、5000カロリーの熱が、右の水から左の水へ移動したことになります。第2の実験の場合では、右の水は75度温度が下がっているので、1×100×75で、7500カロリーの熱が右の水から出ていったことになります。左の水に入ってきた熱は1×300×25と計算してやはり7500カロリーです。つまり、右から出た熱が左に入った、という考え方をするとうまく計算があいます
。このように「熱量保存の法則」が成立するため、熱を物質と考えてその物質が移動するという考え方を取りたくなるわけです。
この実験で一方を鉄にして、100度Cの鉄100グラムと0度Cの水100グラムでやったとすると、温度は50度よりも低くなります。鉄はより少ない熱量で温度をあげることができるということになります。
18世紀の化学者ラボアジエは元素の一覧表の中に酸素や窒素などと同列に、「光」と「熱素(カロリック)」を書き込んでいます。
カロリックは
18世紀にファーレンハイトが水銀温度計を発明し、同時に華氏温度目盛りを考案した。セルシウスが摂氏目盛りを考案したのも同じ頃です。これによって温度の研究が進みました。その結果、先に述べたようなカロリックの性質がわかってきた、というわけです。