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エントロピーと宇宙の熱死

このように、熱がエネルギーの移動であることがわかると、次に考えられたのは、 「同じエネルギーでも、低温と高温が共存している時と、等温状態になってしまっ た時では状況が違う」ということです。前のページの図を見てください。0度と 100度が共存している時、もし間のしきりをピストンにすれば、(右の方が圧力 が大きいので)ピストンは左に移動します。つまり仕事をさせる(エネルギーを 取り出すことができる)と言えます。ところが、いったん等温状態になってしま うと、もうエネルギーは取り出せません。

このように、同じエネルギーの状態でありながら、仕事ができる場合とできない 場合があります。そこでこれを区別するような量として、エントロピーが考え出 されました。エネルギーは「仕事をすると減る。されるとその分だけ増える」と いう定義の仕方でしたが、エントロピーは「熱が入ってくると入ってきた熱を絶 対温度で割った分だけ増える。熱が出ていくと出ていった熱を絶対温度で割った 分だけ減る」という定義になっています。温度$T_1$の物体1と温度$T_2$の物体 2(ただし、$T_2 > T_1$)が接触し、熱が$Q$だけ流れたとすると、物体2のエン トロピーは${Q\over T_2}$だけ減り、物体1のエントロピーは${Q\over T_1}$だ け増えます。全体としてエントロピーは ${Q\over T_1} - {Q\over T_2}$だけ増 えることになります。$T_2 > T_1$なので、エントロピーは増大することになり ます。このように定義されたエントロピーという量は自然な現象では常に増大し ます(これは、熱が温度の高い方から低い方へ流れるということと同じ)。機械 (クーラーなど)を使ってエントロピーを減らすことはできます(クーラーは涼 しい部屋から暑い野外へ熱を運び出します)が、その時にその機械は必ず発熱し、 機械とその回りのエントロピーが減らしたエントロピー以上に上がってしまいま す。「エントロピーが常に増大する」という法則を熱力学第2法則と呼びますと ころで、第1法則はエネルギー保存則と同じものです。第1法則を破るものを永 久機関と呼びましたが、等温の物質からエネルギーを取り出すことができたとす ると、熱力学第1法則は破らない(つまりエネルギーは保存している)が、第2 法則を破ってしまいます。このようなものを第2種の永久機関と呼びます。

熱力学第2法則はほとんどの物理法則が「○○は保存する」とか「××と△△は 等しい」のような等式で書かれているなか、ほとんど唯一と言っていい、増大す るという法則です。宇宙のエントロピーは常に増大するので、いつかは全ての物 質が同じ温度、同じ状態になってしまい、宇宙には生物も星々もなくなってしま うと考えられます。もちろん、そうなるには何兆年もかかるので、まだまだ心配 する必要はありません。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日