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量子コンピュータ--重ね合わせを積極的に利用する

量子力学における不思議な「重ね合わせ」をむしろ積極的に利用するものに、量 子コンピュータというものがあります。たとえば「ある数を因数分解せよ」とい う問題をコンピュータで計算させる場合を考えましょう。通常のコンピューター ならば、まず2で割ってみる。それでだめなら3で割ってみる、というふうに順 番に試していきます。しかし、量子コンピューターでは、割る数に相当する部 分に「2と3の重ね合わせ」を代入してから計算を始めれば、量子コンピュータ は「2で割る計算をしているコンピュータ」と「3で割る計算をしているコン ピュータ」の重ね合わせになって、別々の計算を同時にやってくれます。

今9を因数分解するという計算をしていたとすると、計算の結果は、2で割った 結果である「計算失敗」と、3で割った結果である「9=3×3」の重ね合わせ になっています。次に問題になるのは、このようにして並列計算をした結果をど うまとめあげるかです。ここで性急に計算結果を得ようとして観測を行うと波動 関数の収縮が起こってしまって、二つの答えのうちどちらか一つしか見ることが できません。正しい答えが出る確率は2分の1です。これでは意味がありません から、複スリットの話で出てきた干渉を使います。つまり、正しい答を出してい ない状態が互いに干渉効果によって消されていくように、演算回路を組み立て、 「計算失敗」という答えが互いに消しあうようにします。これがうまくいって、 計算に失敗した状態が全部消えてしまってから観測をすれば、正しい結果にたど りつけます。なんかまわりくどいことをやっているように思われるかもしれませ ん。しかし、普通のコンピューターで計算する場合に比べ、量子コンピュータに は大きな利点があります。例えば普通のコンピュータでは、インプットが変れば そのたびに再計算が必要になります。ですから「いろんな可能性について計算せ よ」と命令されると、その可能性の数だけ計算が必要になります。ところが量子 コンピュータでは、インプットとして「あらゆる場合の重ね合わせ」を用意して おけば、一回プログラムを走らせるだけで、すべての場合の計算が終わってしま うわけです。後でその中から正解を探す手間が増えますが、その部分を含めても、 計算が普通のコンピュータより速く終わることができます。ただし、量子コン ピュータがうまく動くためには、計算の終了前に波動関数が収縮してしまわない ように、細心の注意が必要です。この点が克服できれば、いつのことになるか、 どの程度普及するかはまったく予想できませんが、我々が量子コンピュータを使っ て計算ができるようになるのは間違いないでしょう。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日