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脱出速度とブラックホール

ブラックホールの概念が最初に登場したのは、1799年のラプラスによる論文です。 つまり今から200年も前のことです。ラプラスは次のようなことを考えました。

\begin{wrapfigure}{l}{5cm}
\epsfxsize =5cm\epsffile{dasshutu.eps}\end{wrapfigure}

地球から物体を放り投げることを考えます。通常、放り投げてもやがては地球に 返ってきますが、これは地球の重力によって引っ張られるからです。しかし、地 球の重力は遠くへ行くほど弱くなりますから、もしその速度が十分速く、重力が 十分弱いところまで行くことができれば、もう地球には返ってこないでしょう。 このように地球の外へ行くことができる最小の速度を「脱出速度」と呼びます。 ラプラスはこの脱出速度が光の速さに一致するとどういうことが起るか、を考え ました。

もしこんなことがあれば、光すらもその星の表面からは脱出できないことになり ます。

ラプラスは光の速さで物体が進んでも脱出できないような天体がありえる、と言 い、そのような天体からは光がやってこないので、真っ黒に見えるだろう、と予 言しています。つまり、ラプラスのブラックホールは、光は表面から出発するけ ど、また元に戻ってしまうという意味で「黒い」ということになります。

ラプラスはニュートン力学にしたがって計算を行ったのですが、実際にはこのよ うな現象はアインシュタインの相対性理論を使って計算しなくてはいけません。

\begin{wrapfigure}{r}{4cm}
\epsfxsize =4cm\epsffile{bh.eps}\end{wrapfigure}

相対性理論を使った計算[*]では、光 は「出発しても戻る」どころか、ある半径より外には全く出ることができないこ とがわかりました。この境界面を「シュワルツシュルトの障壁」または「事象の 地平線」と呼びます。事象の地平線を越えていったん内側に入ってしまった物体 (光も含む)は二度と外に出ることができません。

シュワルツシュルト半径は非常に小さいものです。太陽の場合で約3キロです。 実際には太陽は3キロよりずっと大きいので、シュワルツシュルト半径はありま せん(シュワルツシュルトは真ん中に物体が集中している場合の計算をしている ので、物体がシュワルツシュルト半径以上に広がっている場合には内側はまた別 の計算が必要になる)。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日