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発見された惨劇の爪痕--チチュルブ・クレーター

\begin{wrapfigure}{r}{11cm}
\epsfxsize =11cm\epsffile{Yucatan_Map.eps}\end{wrapfigure}

直径10キロの物体の落下がほんとうにあったならば、直径180キロ、深さ20キロ 程度の穴が残っているはずです。実はアルヴァレズたちの研究とはほぼ同時進行 で、メキシコのユカタン半島に、直径数百キロのクレーターがあることがわかり ました。実際にはクレーターは地上にはなく、もう埋もれてしまっています。石 油を見つけようと付近の重力異常(重いものが地中に沈んでいるとその場所の重 力は強くなるし、逆に軽いものが沈んでいると重力が弱くなる。この重力異常を 使うと海底や地底にどんなものがあるのかを推定できる)を調べた結果、同心円 状のパターンが発見されたのが最初の兆候で、後に磁気異常(地中に磁気を帯び た金属が埋まっていると起る)が中心を同じくする円状に見つかりました。その 上にかぶさっている堆積物の量から、それが6500万年前に落下した隕石によるク レーターであると考えられました(実はこれには多少異論のある人もいるみたい です。ちょうど反対側にあたるインドにあるシヴァ・クレーターの方が衝突跡だ という話もあります。)。

\begin{wrapfigure}{l}{8cm}
\epsfxsize =8cm\epsffile{Chicx.eps}\end{wrapfigure}

面白いことはこれらの重力や磁気の異常が発見されたのはアルヴァレッズたちの イリジウムの発見よりも前、あるいはほとんど同時であるということです。そし てこの時点では誰もそれが恐竜絶滅の原因の跡だとは思いもせず、その重要性が わかりませんでした。何年か後になり、隕石落下による恐竜絶滅説がある程度広 まって後、このクレーターの重要性が認識され、詳しい調査のすえ、6500万年前 に何が起ったのか、はっきりとわかるようになったのです。もしアルヴァレッズ たちの学説がなかったら、チチュルブ・クレーターは単なる「地下にある変な地 形」と思われるだけで終わっていたかもしれません。

前に述べたように、科学が発展するためには思いつきだけではだめで、実験・観 測などのデータが必要です。一方で、実験・観測データだけが出ていても、それ を如何に解釈するかという部分が機能していないと、発展にはつながりません。

隕石衝突があったこと自体は間違いなさそうですが、恐竜絶滅の原因がこの隕石 によるという説にはまだまだ反論があります。化石の記録を見ても、恐竜が一挙 にいなくなったというわけでもないという意見や、ほんとにそんなに大災害だっ たのなら、他の動物も生き残れないのではないか、という意見などです。6500万 年も前のことなので、実際にどうだったか、確実なことはなかなかわからないの かもしれません。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日