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「××は間違っている」と主張する人たち

「相対論は間違っている」と主張する本が、近年何冊も出ています。実はこれは近年だけの現象ではなく、昔からずっとあったことなんですが、最近は大手出版社から堂々と出るようになったところが少々違うところでしょう。

相対性理論というのは、「走っていると時間が遅れる」(ウラシマ効果)とか「光速は走りながら測定しても、誰でも同じである」(光速不変の原理)とか、一般常識からは離れている(しかし、もちろん結果は正しい)内容を含んでいます。そのためか、「そんな常識ハズレな理論は間違いだろう」という批判を受けやすいようなのです。

一つ注意しておきますが、科学上の学説を疑うということ自体は、全く問題がありません。現在でも「相対論がほんとに正しいのか?」という研究をしている物理学者はいくらでもいます。相対論が発表された当時は、特に多くの批判がありました。そういう学者たちとこれらの本の著者たちとは、科学的態度の真摯さが全く違うのです。

相対論の証拠の一つとされている実験に、光速不変の原理を直接測定で示した、「マイケルソン・モーレーの実験」があります。これは19世紀末に行われた、かなり古い実験です。TVによく出てくるぴょんぴょんおじさんことドクター中松は自著の中で、マイケルソン・モーレーの実験をやり直し、「当時の実験の精度ではわからなかったらしいが、光速は変化する。よってアインシュタインの相対論はまちがいだ」と結論しています。どうも、マイケルソン・モーレーの実験以来、光速の変化の実験を誰もしてないと思っているようなのです。実際には、最近の学会誌でも光速不変の問題についての実験の報告はちょいちょい載っています。もちろん、マイケルソン・モーレーの時代より遥かに高い精度で実験が行なわれ、未だ相対論を否定する結果は出ていません。ドクター中松はそんなことは全く知らない(たぶん、調べてさえいない)のです。このように、自分が批判している対象について無知である、という点は他の批判者にも共通している特徴です。たとえば「アインシュタインの相対性理論は間違っていた」という(そのまんまの)タイトルの本の著者である窪田登司は、「光速不変の原理を検証するには、マイケルソン・モーレーの実験のように球面波を使ったのではだめで、レーザーのような直進するビームを使ってやらなくてはだめだ」ということを述べています。しかし、レーザーによる実験はとっくに(1964年に!)行われていて、もちろん結果は相対論を指示するものだったのです。窪田氏は、

 相対性理論を語る時にいつも出てくる有名な実験の一つに、マイケルソン・モーレーの実験というのがあります。もう100年以上も前の話ですが、今でも科学者は、あの実験は非常に重要で、相対性理論の裏付けになるものだと固く信じています。

「アインシュタインの相対性理論は間違っていた」 より
などとまるで「頭の固い学者たちは古い実験をやり直してみようとも思っていない」と言いたいようですが、その彼の思い込みの方がよっぽど頭が固いというべきです。

同様に多いのが「進化論は間違っている」と主張する人たちです。もちろん、 (相対論の場合も同様ですが)十分な根拠を持って主張するのなら何も問題はないのですが、やはり進化論を誤解して、「進化論」を批判しているのではなく「自分が誤解して作り上げた進化論もどき」を批判している場合が多いようです。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日