1961年にアメリカのカリフォルニア大学の惑星物理学者カール・セー ガンが金星の環境改造に関する論文を発表したのが発端とされてい ます。これを境に、世界中の研究者たちが惑星の環境改造という巨大なテーマに真剣に取り組むようになりました。
火星をテラフォーミングする方法としては、具体的に2つの案が検討されていま す。1つは、火星の地表に吸収される太陽の光量を増やし、火星の 気温を上昇させる方法です。これには、アルミホイルよりも薄い巨 大な鏡を火星近くの宇宙空間に設置することが必要です。それで太 陽の光を集めて火星の極冠(右の写真)に照射し、氷を解かします。 極冠の氷が溶けると、大気中に水蒸気と二酸化炭素が増えて温室効 果が働き、気温が暖かく保たれるようになります。そしてもう1つ は、火星の表面を覆っている、太陽光を吸収しやすい暗黒色の炭素 質物質を利用します。この炭素質物質を破砕して火星表面にまき散 らし、太陽光の吸収効果を上げるわけです。
また、火星環境を変えるために、藻類を利用する方法を考える研究者もいます。 藻類は、これまで地球に酸素をもたらし、環境を変え、維持してき ました。火星の大気が温暖化し、液体状態の水も維持できるように なったときに、こうした藻類を持ち込めば、火星の大気にも酸素を もたらすことができるかもしれないというわけです。そのためには、 藻類を火星で育てられるよう品質改良を加えるなど、遺伝子工学的 研究も重要となってきます。
火星以外にテラフォーミングが考えられているのは、地球に近い金星です。しか し、金星の地表は摂氏400度に達する高温の世界であるなど、その環 境があまりにも過酷であり、火星に比べて注目度は低くなっていま す。金星を地球化するための手順としては、太陽の入射エネルギー の低減、大量の二酸化炭素の除去、自転の加速、水の確保などが挙 げられます。いずれも火星のテラフォーミングをはるかにしのぐ大 事業となることはまちがいありません。これらの課題は技術的に達 成できる可能性がないわけではありませんが、人類が宇宙に進出す る最初の惑星としては、金星よりも火星のほうが有望視されていま す。
ここまで紹介した人類の生活圏の拡大は、地球の環境を宇宙に作るというものでした。しかし「人類の生活圏を拡大する」という目的であるならば、逆に人間の方を環境に適応させるという解もあり得ます。人工臓器の進歩や遺伝子改良の発展などにより、未来の人間が全く今とは違う形態で存在している可能性も、(今ではSFの世界のように聞こえても)あり得ないことではないかもしれません。