例として垂直跳びを考えます。スケール変換を単純に適用すると、身長が高くな るとジャンプできる高さも高くなりそうです。しかし、出せる力、体重などのこ ともちゃんと考える必要があります。
極端な場合として、身長が2倍の人間がどれだけ垂直跳びできるか、と考えてみ ます。まず、身長が2倍の人は体重が8倍になります。すると、同じ高さまでジャ ンプする時に必要はエネルギーは8倍必要になります。いっぽう、力は筋肉に比 例するので4倍にしかならないはずです。すると、この人は普通の人の半分の高 さしか飛べない、という結論が出そうです。でもこれって、直観には反しますね。 実は上の考察では一つ、見逃していることがあるのです。そこで次の図を見てく ださい。人が垂直跳びをするために、まず腰をかがめて、次に足を伸ばし、足が 地面から離れるところまでを書いています。この後二人はジャンプするわけです が、さて、二人のジャンプする高さはどうなるでしょうか。ただし、ジャンプす る高さというのは、足が地面に離れた状態から一番高いところまで行った時、足 がどの高さまで来ているか、で決めます(空中で足をすぼめたりはしない)。
左の普通の人(Aさん)と、右の身長2倍の人(Bさん)のジャンプの様子を比べて見 てください。右の人は4倍の力を出してジャンプしています。では、他にこの二 人の違いはないでしょうか。
あります。足の長さの違いから、「力を出す距離」が変ってくるのです。実は、
力を出した時、物体に伝えられるエネルギーの大きさは(力)×(力を出して動
かした距離)で計算される(仕事)という量に比例します
。そのため、ジャンプした時の「仕事」
を考えると、Bさんの仕事はAさんの仕事の8倍となります。ところがBさんの重
さもAさんの8倍です。物体を持ちあげる時のエネルギーは(重さ)×(高さ)
で決まります。エネルギーも8倍、重さも8倍だから、高さは変化なし、という
のが正解になります。
意外に思われるかもしれませんが、実は垂直跳びでは身長の高低の有利不利はあ りません。このことは、象のジャンプ力と蚤のジャンプ力を比較してみると、な んとなく納得できるんではないかと思います(象と蚤はだいぶ形が違いますが)。