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終わりに--時間の逆流は可能か

時間の方向とは何なのかということについてこの講では考えてきましたが、波動 の時間にしろ、熱力学的時間にしろ、分子1個1個の運動まで考えて時間反転す れば、ちゃんと逆向きの現象が起こります。もし、今宇宙を作っている原子など の動きをいっせいに「回れ右」することができたなら、時間の逆流ができること になります(もちろんそんなことは誰にもできませんが)。

時間が逆流しているような現象が我々に見えるところで起こらないのは、どちら の時間の矢も「そんな現象が起こるような初期状態を作ることは難しい」という ことからきているようです。

なぜ我々は時間が「過去から未来へ進む」と感じるのでしょうか。一つの考え方 として、我々の記憶が過去の方向だけを向いているから、という考え方ができそ うです。つまり「何が起こったかを脳に蓄える」という現象が、エントロピー増 大現象だからというのが正解なのかもしれません。もしそうだとしたら、時間が 逆流したとしても、我々はそのことに気がつかないかもしれません。反転した時 間のなかの「過去」(逆流前の「未来」)しか我々には記憶できないからです。

ホーキングは、一時「今膨張している宇宙が収縮しはじめたら、エントロピーは 増大ではなく減少するはずだ。つまりその時、時間は逆に流れる」と言っていま した。後に「あれは間違いでした」と撤回していますが、宇宙全体の時間が逆流 しはじめるというイメージ自体はたいへんおもしろいものです(この場合も、我々 は逆流に気がつかないと思われますが)。



Masahiro Maeno 平成14年3月15日