光は電磁波という電場と磁場の波であることがわかっています。もしその波が止っ ていたとすると、波の形をした電場や磁場がじっとそこに存在していることにな ります。しかし、電磁場の方程式をいくら解いてみてもそんな``止った波''は存 在できないことがわかります。そこでアインシュタインは、光速度が誰から見て も一定である、という奇妙な事実を事実として認め、逆にそのようになるために は宇宙がどのようになっていなくてはいけないかを考察しました。その結果がい わゆる相対性理論で、この講の話はそのとっかかりの部分です。ここではアイン シュタインの考察を式を使わずに図とグラフだけで説明してみたいと思います。
まず、速さ
で走る電車を考えます。この電車の中にはAさんが、電車の外には
Bさんがいます。AさんとBさんは立場が違いますが、実験の主張するところによ
れば、Aさんが測ってもBさんが測っても光速度は同じ値が出ます。たとえばこれ
がボールであれば、Aさんが電車の向きに速さ
で投げたボールは、Bさんが見
ると速さ
に見えるはずです。ところが、光に関しては例外で、そうなりま
せん。
Aさんは電車のちょうど真ん中に立っているとしましょう。そして、電車の先頭 と後尾に、デジタル時計があるとします。Aさんは電車の中央で、この二つのデ ジタル時計を見て、「お、時間がちゃんとあっている」と感じているとします。 ここでこの電車が長さ60万キロというすごく長い電車だったとします。すると 電車の先頭および後尾からAさんのいるところまで光が伝わるのに1秒かかりま す。
では、同じ現象を電車の外にいるBさんが見たらどう見えるでしょうか。
Bさんから見ると、電車は移動しています。Aさんに光が到達する時刻から、光線 の来た経路を逆にたどってみます。すると(図を見るとわかるように)、後尾の 方が先に光を出していないと、同時にAさんに光が到達しません。Aさんに到達し た光はデジタル時計が「0:0:0」を指しているよ、という情報を運んできます。 つまり、図に書き込んだ光が発射された時刻は「0:0:0」という``同時刻''だっ たはずです。しかし、Aさんから見たら確かに同時刻な2つの時計が、Bさんから 見るとそうなっていません。
不思議なことに、Bさんから見ると時計が合っていないように見えることになり ます。この話を聞いた時のごく普通の感想は、「こんな変なことは起こるはずは ない。同時刻は同時刻なんだから、光は図の1点鎖線のように進むんじゃないの か?」というものだと思います。ところが、1点鎖線のように進む光は、速度が 変ってしまっています。実験では「光速は不変である」ということが確かめられ ているのです!!
電車の図をグラフで書き直すと図のようになります。
左のグラフはAさんから見た図、右のグラフはBさんから見た図です。Bさんから 見ると、Aさんにとっての「同時刻面」(図では2点鎖線で表した)が傾いた面 になることがわかります。
このように、同時刻という線がAさんが見た場合とBさんが見た場合で傾いてしま うというのがアインシュタインの出した結論です。このような座標軸の傾きを 「ローレンツ変換」と呼びます。
アインシュタイン以前は、時間と空間というのは全く別ものであり、見る立場を 変えたからと言って混ざり合うようなものではありませんでした。ところが、ロー レンツ変換では空間軸が時間の方に傾いたり、時間軸が空間の方に傾いたりしま す。これは空間軸の二つ(xとy)を回転させることができるように、時間軸と空 間軸を回転させることができるということを表します。