上の図は非常に速い速度で飛んでいるロケットを示しています。左の図はロケット内部の人が見たもので、ロケット内のA地点から光を発射し、ロケットの反対側にあるB地点の鏡に反射させ、またA地点に戻ってくるまでの時間を測定しています。
同じ現象をロケットの外から見たとします。すると右の図のように、光は斜めに走って戻ってくることになります。ロケットの外の人とロケットの中の人では、光の進む距離が違います。
日常的な、非相対論的考え方に立てば、「進んでいるロケットの中を光が進んでいるんでいるんだから、この光の速さは普通の光より速い。だからより長い距離を進むんだな」と思いたいところですが、どっこい、光の速さはどんなふうに観測しても同じなのでした。ではいったいどういうことでしょう?
であり、距離が長くなるのに速さが不変、ということは、時間の方が変化するしかありえません。つまり、ロケットの外で静止している人が測った「Aから出た光がAに戻ってくるまでの時間」の方が、ロケット内の人が測った同じ時間より、長い、ということです。逆に言うと、ロケットの中の方が時間の進み方は遅いことになります。これは見掛けのものではなく、実際にロケットの中の人の方が時間が遅く進みます。
このことも実験で確かめられています。人工衛星に精密な原子時計を積んで打ち上げ、その時間を地上の時間と比べたところ、ちゃんと人工衛星(地上から見るとすごい速度で動いている)の時計の進みの方が遅くなっていたのです。これを竜宮城で3日遊んでいるうちに村では100年経っていたという浦島太郎の話にちなんで「ウラシマ効果」と呼びます(海外では同じような童話であるリップ・ヴァン・ウィンクルの名前で呼ばれるそうです)。実際に浦島太郎は亜光速で飛ぶ宇宙船に乗ったんじゃないか、ということを言う人もいます(もちろん根拠はありませんが)。
世の中には「相対性理論は間違っている」という本
を出している人がいます。その著者たちが相対論に関して文句をつけている部分の一つがこの光の往復についてです。彼らは「光がAからBに向けて発射されたのなら、左の図の場合には命中するが、右の図の場合にはロケットが進んでいけば命中せず、B'の方へ進むはずだ。それを命中すると考えるのは間違っている」というように、この話に反論します。
もちろん、間違っているのは彼らの方です。左の図の場合、光を発射するライトなりなんなりは止っていますが、右の図の場合ではライトはロケットといっしょに走っています。ライトがまっすぐ上を向いていたとしても、走りながら光を発射すれば光が斜めに飛ぶのは当たり前です。それは、走っているライトの中をどのように光が通り抜けていくかを考えてみればわかります。
さて、ではどのくらい時間の進み方が違ってくるのか、ちょっと計算してみます。一般的な計算式は後で結果だけを出すことにして、まずはロケットが光の速度
の60%で進んでいる場合を考えます。右の図を見てみます。この時、もし光 が5秒かかってAからBまで斜めに進んだとします。AからBまでの距離は5光秒
(光が1秒で進む距離を光秒と名付ける)となります。この間にロケットは5×
60%で、3光秒進みます。右の図を見るとABB'は直角三角形になっていますから、AB'の距離は4光秒であることがわかります。
ロケットはずっと止っている場合、BもB'もありません(Bは動いていない)。だから、光がAからBまで進むのには4秒あればよいことになります。結局、ロケット内で4秒経つ間にロケット外では5秒経っていることになります。つまり、ロケット内の時間の進みはロケット外の80%に遅れるということです。
一般的には、ロケットの速度が
の時、光の速度を
とすると、時間の遅れは
で表せることが計算できます。この式に
を入れると答は0になります。つまりもし光速で進むロケットがあったら、その中では時間が進まないことになります。ロケットの速度と、その時の時間の遅れとの対応を表にしたものが右の表です。
SF映画「猿の惑星」の中で、光速に近いスピードで飛ぶロケットの中では時間が遅れるので宇宙船の中では数年しか経っていないが、地球ではその間に1000年以上が経過している--という話が出てきます。この宇宙船は光速の99.99%以上の速度を出していたに違いありません。
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なお、人工衛星の場合、その速度
はせいぜい秒速10キロ程度です。この場合の時間の遅れは1億分の1以下の差しかなく、測定することは非常にたいへんです。