ホイルらは、1年の間に1立方センチの空間に1個、水素原子が生まれれば宇宙 の膨張によって密度が薄まる分とちょうど相殺するとし、宇宙にはこのように物 質を創成するメカニズムがあるに違いない、と考えました。
宇宙に始まりや終わりがあるという考えを気にいらない天文学者は多かったので、 この定常宇宙論も人気のある理論でした。
1948年、フリードマンの弟子であるガモフはアルファーとベーテと一緒にビッ
グバンの時に宇宙にどのような元素が生まれたかを研究しました
。その結果、ビッグバンがあるとすると宇宙にある元素の比率を
説明できることがわかりました。そして同時に、ビッグバンがあったとしたら、
その時の光は宇宙の膨張とともに薄まって、今も宇宙に「背景輻射」として存在
しているはずだ、と述べ、それは絶対温度7度の輻射になると予想しました。
時は流れて1964年、ベル電話会社のペンジャースとウィルソンは、人工衛星 から来る電波の中の雑音を減らす研究をしていました。彼らは原因のわかる雑音 を見つけるとその雑音を消すような方法を考えていたのですが、一つだけ、どう しても原因のわからない雑音がありました。アンテナを磨いたり、鳥のフンの掃 除をしたりして、それでも消えない雑音に悩まされて、これを宇宙論学者のディッ ケに相談します。ディッケはこれこそが「背景輻射」であることに気付きます。 その温度は絶対温度が3度とガモフたちの予言とはずれてはいましたが、まぎれ もなくビッグバンの名残りだったのです。
この発見により、定常宇宙論はとどめをさされた形になり、宇宙論の表舞台から 去っていきます。
現在は、また観測の精度が上がったことから宇宙の年齢などをもっと精密に知る ことができるようになると期待されています。
宇宙の始まりがわかるようになると、逆に宇宙の終わりについても知りたくなり ます。アインシュタインの方程式で計算すると、宇宙の未来は、永遠に膨張を続 けるか、途中で収縮に転じ、また1点に縮まるまで収縮しつづけるか、どちらか になります。どちらになるかは、宇宙に存在する物質の質量の大小で決まります。 現在の観測では、このどちらになるか、ちょうどぎりぎりくらいのところである ことしかわかっていません。