もしもタイムマシンがあったらいったいどんなことが起こるんだろうか、という ことをまじめに考えた物理学者がいます。ソーンらのタイムマシンに対し、ポル チンスキーという物理学者は以下のような問題を考えました。
上の図の穴二つはタイムマシンになっていて、右の穴に入った物体が、5秒前に 戻り、左の穴から出てくるとします。今、ビリヤードのボールを図のように右の 穴に投げ入れるとします。5秒前にもどって帰ってきたボールが、なんとさっき の自分自身に衝突した、としましょう。
衝突したおかげで、ボールは穴(タイムマシン)には入りませんでした。という ことは、左の穴から出てくるわけがありません。
では、ボールは無事穴に入りますから、左の穴から出てきて--と考えると、こ れが「親殺しのパラドックス」を単純化したものだということがわかると思いま す。
これに対し、ソーンなどはこのような解決策を出しています。
どちらの図でも、ボールはかするような、弱い衝突をします。弱い衝突なので、 ボールの進路は大きく変らず、ほんの少しだけ方向や速度が変ります。そのため、 5秒前に戻ってきたボールの速度や方向もほんの少しだけ変り、結果として強い 衝突をしなくなる、というわけです。SF小説などのパターンでいえば、「歴史が 変ったと思っていると、その変った歴史の方が本当だった」があてはまるでしょ うか。
しかしもし、このボールがボールでなく自動車だったとして、人間が乗っていた としたら、いったいこの人の自由意思というものはどうなってしまうんだろう?-- という疑問はわきます。タイムトラベルでパラドックスを起こさないためには、 人間の自由意思を制限する必要があるように思えてなりません。