石川伸明の「衣服学の世界」



衣服の機能


衣服のもつさまざまの機能は、自然環境に対する機能である保健衛生上の機能と社会環境に対する機能である社会生活上の機能とに大別される。

  • 保健衛生上の機能

    • 体温の調節

      皮膚表面と衣服の間に快適な温度・湿度(衣服気候)を実現し、生理的な体温調節の限界を補う。快適な衣服気候は、温度32±1℃、湿度50±10%とされる。

      例:防寒着は、保温性の高い素材や開口部の少ないデザインで暖かさを実現する。冬の重ね着は、空気層を重ねることにより、暖かさを増している。夏に開襟シャツのような襟や袖口など開口部が大きいものを着るのは、通気性を確保するためであるが、まったくの裸のほうが涼しいというわけではない。

    • 危険からの保護

      紫外線など外部からの物理的・化学的な障害や昆虫などによる危険から、身体を保護する。

      例:炎天下で長袖のものを着たり帽子をかぶったりする。夏のキャンプで虫除けに長袖や長ズボンを用いる。防弾チョッキ。ヘルメット。安全靴。

    • 皮膚の清潔

      汗や垢を吸収し取り除くことによって、皮膚を清潔に保つ。

      例:肌着。

    • 活動への適応

      適度なゆるみや伸縮素材によって活動の動作を助ける。

      例:パジャマ。スポーツウェア。

  • 社会生活上の機能

    • 個性の表現

      着用者の美意識や自己主張を表現する。社会生活において人は他人を外見で判断することがあり、衣服は、髪型(ヘアスタイル)以上に面積を占めるため、他人に与える印象が強い。

      例:服装ににじみでる教養。意図的に着くずした着こなし。異装。パーティなどでの仮装は、変身願望をとおしての自己主張である。

    • 社会生活の統制

      所属している集団や地域で通用する習慣に応じた服装をすることによって、その集団や地域の構成員として行動が心理的に統制される。社会生活上の協調のために、TPO(Time(とき)、Place(ところ)、Occasion(場合))に応じた服装が求められるのは、この機能による。歴史上、服装が社会的な階級を現すための手段とされたこともあった。

      例:民族服(民族衣裳)。冠婚葬祭の儀礼服。ビジネススーツ。職場や学校による制服。警察官や自衛官など職業による制服。演劇などでの扮装。歴史上、聖徳太子が定めた「冠位十二階」は、衣服の色によって階級を区別したものであり、位の高いほうから紫青赤黄白黒の順で、それぞれに濃淡があった。


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講義ノート(目次)
  1. 衣服の本質
  2. 衣服の機能
  3. 衣服の材料
  4. 衣服の管理
  5. 衣服の整理
  6. 衣服の構成
  7. 衣服の製作
  8. 現代の衣生活
衣服学の世界(入口)

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最終更新日:2005/07/07
(C)石川伸明 ISHIKAWA Nobuaki 2005-