食べ物・飲み物について考える
“Tennis”誌2003年10月号にプロストリンガーのジェイ・スクウェイド氏が「最近のプロテニスのパワー化はラケットのせいではない。テニスプレイヤーの体は年々パワフルになっているのだ」と書いておりました。「パワー化が問題ならばラケットでなくてプレイヤー本人やトレーナーを責めろ」ということだそうです。
私もこれには大筋で合意するわけなのですが、もちろん食事や栄養といったものが大きく影響していることも考えられます。というわけでプロテニスプレイヤーは食事というものにものすごく気を使っているということが想像できるわけです。
実際、プロテニスプレイヤーというのは一体どんなものを食べたり飲んだりしているのでしょうか。
飲み物
まずはアルコールの話から。
2001年全米オープンで優勝したレイトン・ヒューイット、ビールで祝杯を上げることができずに悔しがることしきり。オーストラリアの飲酒可能年齢は大体どの州でも18歳ですが、ニューヨークでは21歳なので、20歳の彼はジュースで我慢せざるを得なかったのです。しかしシャンペンでなくビールというのがいかにもオージー。
これからは大会主催者の方でノンアルコールビールを用意したらどうでしょう。
一方、2年後の2003年9月に全米オープンを制覇したアンディ・ロディックは8月30日に誕生日を迎えていましたから、親友のマーディ・フイッシュにシャンペンをぶっかけられても問題はなかったものと思われます。
そのロディック、2004年ウィンブルドンで、準優勝に終わって優勝パーティーの参加権を得られず、それに乱入すると言っていた時には“ I'll bring the beer man, let's go.”言っておりましたが、「ビール男を連れて行く」って一体誰なんでしょう。電車男や蜘蛛男の親戚ではなさそうです。手近なイギリス人やオーストラリア人に聞いたところ「よく分からないけど、ビールを注ぐ人じゃないの?」ということではっきりと分かる人はいませんでしたけど、米南部のスラングか?
ちなみにワイン好きも結構いまして、コンチータ・マルチネスはインターネットのチャットにワインの話で出没するらしいです。アメリ・モレスモも赤ワイン好きで家にワインセラーがあるそうですけど。アリシア・モリックも赤ワイン好きで出身地アデレードの近所のワイン産地、バロッサ・バレーに行くのが好きだとのこと。
しかし、シャラポワっ。WTA公式ページの「好きなドリンク」の欄に「オレンジーナ(フランスのソフトドリンク)&バージンストロベリーダイキリ」と書くなっ。いくらロシア人でも15や16では法律上アルコールは飲めんだろうが。と思ったら、バージンストロベリーダイキリはノンアルコールカクテルだそうな。
一方、マーク・フィリプーシスはその外見には似合わず、アルコールが嫌いなんだそうで、「外に出た時はお付き合いで少し飲むけど。ビールを飲んだことがないのはオーストラリア人らしくないと思う」と言ってました。
そのフィリプーシス、オーストラリアで今年からペプシのイメージキャラクターとして契約し一時は国中で6000枚の看板が出ました。それについて「永久にペプシが飲める」ということで非常に嬉しがっていたそうです。
これを受けたシドニーモーニングヘラルド紙が山のようにストックされている彼の写真を解析したところ、彼が飲み物を口にしているシーンではエビアンとパワーレードしか写っていなかったそうで、後者はコカコーラの製品です。
でも、大会スポンサーによって飲料は決まっていますから、仕方がないのではないでしょうか。個人用のスペシャルドリンクもありですけどね。ちなみにシドニーのアディダスインチーナショナルでは水はエビアンでスポーツドリンクはゲータレード、メルボルンのオーストラリアンオープンはコカコーラ系のマウントフランクリンズフレッシュとパワーレードです。
このように会場ではスポーツドリンクと水が供給されるのが普通ですが、シドニーではペプシコーラもコートサイドのアイスボックスに入っていて、杉山愛はじめ練習中は飲んでいる選手も結構いたな。
スポーツドリンクを飲む場合でも、やはり甘いとべたつくのか水で割っている選手が多いです。例えば、ホップマンカップに出ていたリンジー・ダベンポートはゲータレードの瓶を試合前に5分の1くらい一気飲みして、そこに水を足してました。
以前も書きましたが、杉山愛は練習の時のドリンクにヒッティングパートナーが何か粉末を入れていましたし、パラドーン・スリチャパンがヨナス・ビヨルクマン相手にピンチに陥った時には、スタンドの父親がポールボーイを通じてボトル入りのドリンクを渡してました。その後彼が劣勢から挽回したのがいかにも魔法の水というか、ドーピング然として面白かったのですが。
しかしながら果たしてパティ・シュニーダーの一日3リットルのオレンジジュースは細胞活性化にどのくらい効果があったのやら・・・。
ジャンクフード
ATPオフィシャルマガジン“Deuce”2003年版にアンディ・ロディックのお宅訪問のような記事が載っているのですが、「膝の破れたジーンズを履いて、ビデオを見ながら昨日宅配されたピザを今日食べていた」そうで、1万人の若いアメリカ人と同じことをしていたとのこと。
どうもこの人ことほど左様にピザが好きなようで、命が掛かった場面でピザを持ち出してます。
2004年ローマでのマスターズトーナメント直前のホテル火災の時に、上階からバルコニー伝いに逃げてきたシャン・シャルケンと彼の妻をはじめ二十数人を6階の自分の部屋のバルコニーに避難させ、アメリカの母親に電話で実況中継をしながら助けを待っていました。
彼は迫り来る炎のためパニックに陥りそうな人々なだめすかしていたのですが、(実際5階の人が一人シーツでロープを作って脱出しようとして転落死した)やがて消防車両が到着して、その時の彼の台詞を聞いた母親は大爆笑したそうです。
「おい、梯子を持っている奴ら、ここに来てくれたらピザを買ってやるぞ!」
英語が通じたかどうか分かりませんが、イタリア人消防士なら「チーズは本物のモッツァレラでアンチョビはカンパーニア州ソレルノ産のデルフィノ社製だろうな」とか御託を並べそうな気がしますけど。
2003年全仏オープン決勝でアナスタシア・ミスキナに敗れたエレナ・ディメンティエワも「私たちが9歳か10の時に、ピザを賭けて戦っていたけど、いつもアナスタシアが勝っていたわ。何かを賭けるといつも彼女が勝つのよ」と言っておりましたし、強い選手とピザに対する執着心って何か相関関係がありそうな気がしないでもない。ピザが好きな人はプロテニス選手になれる素質があるかもしれません。
一方キム・クライシュテルスに「ブロッコリーを食べることを訓練された」レイトン・ヒューイットはスポーツ(というかオーストラリアンルールズフットボール)を見に行く時にはジャンクフードを解禁して、チップス(日本で言うフライドポテト)やホットドッグを楽しんでいるとのこと。キムと別れた後はもしかして元のモクアミ?
パラドーン・スリチャパンは日本のコンビニ弁当が大好きで、2004年のAIGオーブンに参戦した時には有明コロシアム前のコンビニによく通っていたと言いますが・・・。
エスニックフード
もちろん、各国出身の選手は自国の食物が好きなわけで、最近ではツアー先でも各国料理が楽しめるので選手にとっては大きな支えになるようです。
伊達公子が超和食党で、醤油と米と炊飯器を持ってツアーを回っていたのは有名な話ですが、変圧器はどうしたの?「パンも日本とは味が違う」と言ってましたが。
2004年オーストラリアンオープン期間中のキム・クライシュテルスに対するユーロスポーツのオンライン配信インタビューのタイトルは「キムは日本人になる?」というもので、何のことかと思ったら寿司や豆腐などの日本食を好んで食べているとの話でした。
マリア・シャラポワが寿司やしゃぶしゃぶを好むのは有名ですし、マルチナ・ヒンギスも「低脂肪でヘルシー」とのことで、寿司などの日本食が大好きだそうです。
ちなみにWTAの公式ページには「好きな食べ物」が載っている選手がいるので、12月時点で30位までの選手をチェックしてみたら以下のような結果になっています。
アナスタシア・ミスキナ(ロシア):寿司・ホワイトソーセージ・ニョッキ(パスタの一種)
マリア・シャラポワ(ロシア):ロシア料理・タイ料理・ヌテラ(ピーナツバターのヘーゼルナッツ版)付きのクレープ
アリシア・モリック(オーストラリア):タイ料理・日本料理
エレナ・ボビーナ(ロシア):寿司・アイスクリーム
カロリーナ・スプレム(クロアチア):パスタ
シルビア・ファリナエリア(イタリア):ちゃんと調理されたパスタ
タチアナ・ゴロビン(フランス):メキシコ料理・フランス料理・日本料理
マリー・ピエルス(フランス):寿司、緑茶と大量の生姜つき
リサ・レイモンド(アメリカ):母親の家庭料理
意外にも自国の料理にこだわっているのはファリナエリアとレイモンドくらい、それ以外にも自国のものを挙げているのはシャラポワとゴロビンだけです。寿司を含んだ日本料理を好きな選手が9人中5人。ついてはプロテニス選手をナンパするには寿司屋に誘うのがよいでしょう。ヒンギスも出会った男性が皆「うわっ、マルチナ・ヒンギスだ」と引いてしまうので食事に誘ってくれると嬉しいと言ってましたぞ。
しかしアナ、ロシア人のくせして日本にドイツにイタリアに・・・。お前の腹の中は枢軸国の三国同盟か?あの強さはファシズムに裏付けされたものだったのか・・・。
男子の方では、パラドーン・スリチャパンは行く先々でタイ料理店を探しているそうですし、アンディ・ロディックもメルボルンでいいテックスメックス(テキサス・メキシコ)料理店を発見したと言っておりました。本場オースチンの店ほどでもないそうですが。
李亨沢はツアー先で韓国料理店に行けない時は中国料理で我慢しているそうですが、やはりキムチがあった方が良いという話です。トーナメントで彼との対戦が決まった選手は町中のキムチを買い占めると勝つ確率が高くなるのは間違いありません。
ちなみに彼、引退したら焼肉屋を経営したいと思っているそうです。何か(日本人が想像する)韓国人らしすぎて笑ってしまいますが。
ここまで見てまいりましたが、沢松奈生子のインタビューを読んでみたりしますと、「基本的に現役の時は気を遣ってなかったんですが…」ということで、「あんたそれは逆やろ」と突っ込みを入れたくなるくらい適当なモノを食べているような印象もあります。いい加減なモノを食べて強くなれるのなら、私だってプロになれていると思うんですが。

