怪我について考える (慢性編)


プロテニスというのは非常にオフシーズンの短いプロスポーツで、12月の一ヶ月しかありません。他の多くのスポーツでは数ヶ月のオフの間にリハビリで故障を治したり、キャンプで体力強化したりということができるのですが、そういった暇がないため、往々にして選手達は古傷を抱えたままのプレイを強いられます。
しかも年中全世界を又にかけるプロスポーツというのも他には自動車のF1やラリー、バイク選手権があるくらいであまり例がありません。男女とも長く活躍しても30歳前後で引退というのは体操や水泳と並んで引退の早いスポーツだと思いますし、引退の原因も気力や体力が追いつかなくなったというよりは怪我によって思うようにプレイできないというのが多いようです。
今回の慢性傷害編も前回同様体の下の方からチェックしていきます。オーストラリアンオープンの大会ドクターによると「故障持ちでない選手はいない」とのことで、これまた例には困りませんが、まずは足から。


足首を故障した人はグレッグ・ルゼドスキー、足そのものの傷害持ちとしてはセバスチャン・グロジャンやニコラス・キーファーなどがいます。
リンジー・ダベンポートは爪先の神経の炎症を起こしているそうで、これはハイヒールをよく履くファッションモデルにありがちな症状ということでテニス雑誌に「189センチあればハイヒールを履く機会も少ないだろう」とからかわれてました。
でも足といえばここはもう、マルチナ・ヒンギス。左右足首それぞれ手術し、担当の医者によると「問題ない」ようだったのですが、結局この故障を原因として引退しています。
原因としてプロ入り当時契約していたセルジオ・タッキーニ社のシューズに問題があったとして4000万米ドル(45億円)を求める訴訟を起こしています。金額的にはWTA年間一位の賞金獲得額6年分といったところです。
改良を要求しても満足な性能のものが供給されなかったと言ってますが、アドバイザリー契約なんて製品の出来が悪ければ解約できるようにしておかないとおかしいはずで、納得して使っていたのでは?選手生命削ってまでスポンサーに義理を通す必要性もないと思いますけど。同社と契約している他のプロが同様の故障を起こしたとは聞いてませんし、彼らの立場はどうなるんでしょう。「故障が決して起こらないシューズ」を開発した企業の話は今まで聞いたことがありません。
彼女に倣って我々も使った靴の種類・使用時間・コートサーフェス等記録をきちんと取っておいて、足腰に何ぞ故障が発生した場合にはメーカーに掛け合ってみると何かもらえるかもしれません。

かといって靴の踵に鉛を仕込んでわざと故障を起こすのは止めましょう。毎回テニスシューズを履く度に中に画鋲が入っていたならばそれはメーカーの責任ではなく、あなたもしくは周囲の人の性格に問題があります。
でも、同じスイスのダニエラ・カサノワも足の故障のため19歳にて引退。妹のミリアム・カサノワも15歳の時に足首を手術。スイスの娘なぜ足首を痛めるの。おしえてー。アルムのもみの木よ。もしかして用なしになったクララ・ゼーゼマンの車椅子の付喪神(つくもがみ)がスイスの女子テニスプレイヤーの足に悪さをしているのかも。ということは次はパティ・シュニーダーの足首があぶない!?


ここの故障持ちはアーノルド・クレメント、ゴラン・イワニセビッチ、アメリ・マレスモなど。手術で2003年全米オープン欠場のセリーナ・ウィリアムズは今後どうなるんでしょうか。
長期離脱は手術で2002年ほとんど丸々棒に振ったリンジー・ダベンポート。10キロ体重を削った後にこの故障を起こすなんて皮肉すぎます。
体重が重くて膝を痛めた人は数々あれど、体重を減らして膝を痛めた人物は彼女が唯一無二でしょう。体重減がまずかったのであれば妖怪子泣きじじいでも背負ってプレイすれば良かったのに。
26歳のマグナス・ノーマンもほぼ2年以上競技から遠ざかってます。2001年に左股関節の手術を受けて2002年2月に復帰したものの数ヶ月後に左膝の手術、2003年3月から再度復帰しましたが、「これ以上怪我をしたならもうテニスを続ける気力がない」と言ってます。
2003年ウィンブルドンで復活ぶりを印象づけたマーク・フィリプーシスは2001年を中心に2年間で3回膝の手術を受けています。医療費は公的保険でカバーしているのか私的保険を使っているのか分かりませんが、ここまでくると、テニスプレイヤーというのは好き好んで医療費をバカ使いする金食い虫のようにも思えます。

40歳を過ぎて現役のマルチナ・ナブラチロワによりますと、「15歳で両膝の手術をしたという選手の話を聞いたことがあるわ。ハードコートは体全体に負担がかかるし、ボールが高く弾むので上半身も大変。特に脚に傷害がよく発生するのよ」ということです。ハードコートを避けるのも長くテニスを続ける秘訣かもしれません。だったらこう、もっと足に優しい柔らかいテニスコートというものを誰か開発してくれないんでしょうか。











芋虫を敷き詰めるとか。テニスはミミズ養殖槽のみでプレイできるとか。
オーストラリアのシリアル食品のコマーシャルで、半分プールで半分普通のテニスコートでプール側にいるスイマーのイアン・ソープとジアン・ルーニーが水着を着てラケットを持ったまま泳ぎながら地上にいる普通のテニスプレイヤー(サマンサ・ストサー&トッド・リード)と混合ダブルスを戦うというのがあるんですが、水中でテニスをするのなら、下半身を傷める可能性は少ないと思われますのでこのトレーニング方法はお勧めかも?ラケットを持ったままどう泳ぐかが問題ですけど。
(追記:アメリカで2003年に放映されたパシフィックライフオープンテニスのテレビコマーシャルではトミー・ハースとマーク・フィリプーシスが水中でテニスをしていたそうです。故障持ちの二人が戦うにはこの方法しかなかったのか?)


ステファン・エドバーグは「届かないくらい高く跳ね上がる」スピンサーブの打ち過ぎで腰を痛めたとか。ジェニファー・カプリアティも腰痛持ちですね。
アンナ・クルニコワは時々「背中を痛めて」トーナメントを欠場しますが、これは"lower back"を「背中」と訳してしまっているのではないかと思います。だって"Australian Tennis Magazine" 2003年2月号、オーストラリアンオープンでへそ出しのテニスウェアを着た彼女の後ろ姿の写真では明らかに腰に肌色の四角い物体が貼ってあるんですもの。
どう考えたってメルボルンにいるアンナのおしりに妖怪一反もめんが張りついているなんて思えないわ。刺青を隠しているのかという質問に対して本人は「温湿布よ」と答えてるけど、パップ剤というのは欧米諸国では一般的でなくてクリームを塗るのが普通なんですけど、どうやって手に入れたのかしら。日本の殿方もアンナへのプレゼントはこれで決まりよ。これからは私も堂々とサロンパスを腰に貼って試合に出られるわ。
メントールのにおいをさせながら「これがアンナ流ファッションなのよ。知らないの?」と言えば流行の最先端、私もコート上の妖精よ。そのうちエレキバンも使ってくれないかしら。
欠場した2003年全米オープン直前にルイ・ヴィトンのバッグと新品ラケットを二つ持ってイベント入りする写真をサンデーテレグラフ紙に載せられて「ハイヒールが背骨に悪いのを知らないのか」とか書かれてたけど、アンナにとっては10センチヒールは体の一部だから何でもないのよ。

肋骨・腹筋
アメリ・マレスモが時々肋骨を傷めて欠場しますが、テニスでは珍しくないですか?
筋力バランスが崩れて肋骨に負担がかかり過ぎるスポーツ選手というのがたまにいますので、そういうことなんでしょうけど。「毎日骨太」や「鉄骨飲料」飲んでいたって肋骨だけの強化なんてしようがないしねえ。中世の貴婦人のごとくコルセットで締め上げて外骨格をつくるしかないんでしょうか。
ビーナス・ウィリアムズは腹筋を傷めていてアイシングしながらプレイしているそうですが、下痢症の私としては腸まで冷やしてしまわないか気が気でありません。力を入れた瞬間に「mi」まで出てしまいそうな気がして。


ビッグサーバーの宿命か?引退の契機となったのはパトリック・ラフター。現役ではゴラン・イワニセビッチ、トミー・ハース、ティム・ヘンマンなど。マリー・ピエルスもここの故障持ちですが、女子に少ないのも何か意味ありげです。

イワニセビッチは「車椅子を押してもらってでも(2003年の)ウィンブルドンに出る」と言ってましたが、肩肘を痛めているのなら最早自分で車椅子を操作することも難しいのではと思うのは私だけだろうか。結局本当に膝の具合が思わしくなく、出場できませんでしたが。
しかし車椅子に乗るのだったら出場するカテゴリーが違いますし、残念ながらウィンブルドンでは同時開催してません。ボールはツーバウンドまでならヒットして構いませんけど。パラリンピックやオーストラリアンオープンで見ましたけど車椅子テニスの強豪って我々でも勝てないと思うくらい俊敏ですから、あのビッグサーブを座ったまま繰り出すことができなければイワニセビッチといえども多分予選で敗退すると思います。四肢に麻痺がある人のためのクァドクラスには該当しないでしょうし。


テニス肘になるような選手であればプロにはなれないのではないかと思ったら、またイワニセビッチがここの故障持ち。リチャード・クライチェクもここの故障を原因として引退しています。クライチェクは手術をしたとのことですが、今や3歳と5歳の子供を右腕で抱き上げることもできないそうです。フランク・ジョーブ博士はテニス選手を助けないんでしょうか。

手首
結構多い。2002年オーストラリアンオープンを欠場したアンドレ・アガシ、2003年シーズンしばらく棒に振ったアンディ・ロディック。マラト・サフィンの2003年シーズンは8月を待たずして終わってしまったとのことで、来期の復活に照準を合わせているものの、現役続行が危ぶまれているとのこと。
最近の女子の長期離脱例ではビーナス・ウィリアムズやダヤ・ベダノワなど。アマチュアではあまり聞かない故障ですが、やはりプロの強烈な球を受けていると傷めてしまうのでしょうか。
グリップの太いラケットを使うと受ける面積が大きくなる分特にオフセンターショット時に手首にかかる負担は小さくなりますが、反面ラケットを素早く返しにくくなります。サフィンのグリップは指が回るくらいに細いですけど。
ちなみに、手首の故障で2003年前半実戦から遠ざかっていることに業を煮やしたアーノルド・クレメント、南フランスのアマチュアトーナメントに非利き腕の左手にラケットを握って出場、アマチュアの強豪を二人ストレートセットで血祭りに上げました。(追記:2004年ホップマンカッブで合同練習をしていたキム・クライシュテルスとレイトン・ヒューイット、左手にラケットを握って二人でダブルスを組んで友人や家族相手に圧勝しています)

結局肩や腕の故障からの復帰方法はこれが一番お勧めなのでは?非利き腕でテニスをするというのはそう不可能な話でも突拍子ない話でも漫画の中だけの話でもないのです。両側でフォアハンド・バックハンド・ボレー・サーブ等全てのプレイができる男子選手は90年代にはルーク・ジェンセンがいましたし。
女子ではエフゲニア・クリコフスカヤが左手サーブで両側フォアハンドのバックハンドなしで戦います。ウィンブルドンには2003年までに通算5人の両手使いの女子選手が出場しているそうです。
その美貌でブレイク中のロシアのライジングスター、マリア・シャラポワも現在は右手使いですが、11歳で現在のコーチに入門した時には「左右両手で素晴らしいサーブを打つし、右手でも左手でも強力フォアハンドを使える」ということで印象づけたといいます。(インドネシアの選手が両手使いという情報もありましたが、男女通じて唯一のトップ100選手、アンジェリク・ウィジャヤは右手でプレイしているので確認できませんでした)
逆手使いという点では伊達公子だってラケットは右手ですがペンは左です。(追記:カルロス・モヤもそうであるという事実を発見) 同様に左利きなのに右でプレイしているニコラス・エスクデの例もありますし、決断さえできればクライチェクやラフターも選手寿命が延びたかもしれません。(追記:ちなみにジェームズ・ブレークはピンチの時には左手でロブを放ち、これは度々彼を救っています)
快傑サフィン、今だ、今こそ変身だ。右手で苦戦している時に「ふっふっふっ、坊や、遊びはもう終わりだぜ」とか言って左手に持ち替えたラケットで完膚なまでに叩きのめすと格好いいぞう。(追記:右利きのサフィンの故障は左手首だったそうです。失礼しました)
ただし、これを試してみたい方は非利き腕に傷害と障害がないことを確認してからにしましょう。もし非利き腕の手首に切り傷の跡がたくさんあって慢性化しているようであればテニスライフの心配をする前に人生そのものの心配をした方がよろしいかと。

結局ツアーのオフシーズンを長く取るということで、慢性傷害を回避しようという考えもあるようですが、その場合オーストラリアンオープンを1月から3月に移すという案が有力です。
ただし2006年3月にメルボルンで四年に一度のコモンウェルスゲームズ(英連邦総合競技大会)が開催されるということで、それ以降の課題ということになりそうですが。
しかし3月にはメルボルンで自動車F1オーストラリアングランプリがあったり、オーストラリアンルールズフットボールのシーズンが始まったりでビクトリア州政府も難色を示しているらしい。オージーフットボールの大ファンのレイトン・ヒューイットはシーズンに入ると「自分の試合どころではない」らしいですし。

そんなこんなでプロにとっては怪我に負けないだけの体を作るのも大変そうです。我々もテニスに打ちこむのもいいですが、ほどほどにしましょうね。球を打ちまくるのも結構ですけど、走り込みや筋トレ・ストレッチングもしっかりしましょう。

参考:"Ouch! Playing Up to 11 months of the Year... That Hurts"
Australian Tennis Magazine Vol. 28 No.3, March 2003

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