主将麗子の紙芝居
(女物のテニスウエアに身を包んだ梅塚ふっくんが舞台に登場。歓声と拍手の中ラケットを振り回した後ポーズを決める)
「注目―っ!これから関東庭球主将連合 臨時総会を行うっ!」
「今日みんなを呼び出したのは他でもない。アガシの引退のことはよく知っているだろうね。この前、テニス部の後輩の庭子に『私、アガシ派だったのに残念だね』って言ったら、ああ、先輩もそうなんですか、私は羊羹が好きなんですとか言いやがった。がっかりだよっ!和菓子の話をしてるんじゃねえよ!三笠饅頭や最中がテニスをしたらアンパンマンの世界だろうが!」
「だから、今日はこれからアンドレ・アガシについてお前たちに紙芝居で説明をしてやろうと思う。ただ、あたいがぺらぺら喋ってもつまんないから、みんなにちょっとした役をやってもらおうと思う」
「おい、そこのあんた。白いシャツ着たシャラポワを煮崩したようなあんただよ。あたしがこの『アガシの建前』って札を出したら、それに合ったアガシの建前を喋るんだよ。いいね」
「ほら、そこのナブラチロワを女にしたみたいなあんた。あんたはあたしがこの『アガシの本音』って札を出したら、アガシの本音の台詞を言うんだよ。分かったね」
「さあ、『アンドレ・アガシ物語』はじまるよっ!拍手っ!」
「移民の子としてラスベガスに生まれたアガシは、とっても厳しい父親のもとで育ちました。アガシが歩けるようになると、父親のマイクは彼の手にラケットをテープでくくりつけ、ベビーベッドにテニスボールをぶら下げました」
(「建前」の札が出る)
「テニスって楽しいなあ」
「何言ってんだよ!よちよち歩きの子供がそんなこと考えるはずがないよ。そんなこと考えてたらアガシは3歳でプロになって、5歳でグレちまうじゃないかよ!」
「さて、16歳でプロデビューした彼は、髪の毛を伸ばし、デニムのショーツをはいて試合に出たりしました。プロ生活を満喫しながらアガシはこう思いました。」
(「本音」の札が出る)
「これで女の子にモテモテだ」
「それは本音でも何でもなくて実際に起こったことだよっ!倍ほど齢の違うバーバラ・ストライザンドをはじめ沢山の女性と浮き名を流したのは誰だって知ってるよっ!」
「ところで彼はグラスコートと白服のドレスコードが嫌いでウィンブルドンをはじめとするイギリスのトーナメントに出場していませんでした。ところが92年に突然気が変わってウィンブルドンにエントリーして優勝してしまいました」
(「本音」の札が出る)
「イワニセビッチに優勝させなくてよかった」
「自分の優勝より他人が優勝しないほうが嬉しいのかよー。そんなこと言うから怒ったイワニセビッチは9年後にラフターを食べちゃったじゃないかよ!」
「その後、アガシは女優のブルック・シールズと結婚したものの、2年後に離婚してしまいました」
(「建前」の札が出る)
「結婚生活を維持するには少し愛が足りませんでした」
「そう言いながら本当に思っていたのは」
(「本音」の札が出る)
「ハリウッド的生活は十分楽しんだからもういいや」
「よく知ってるじゃないかよ。さてはあんた女優でバツイチだなーっ」
「さて、アガシはテニスで儲けたお金で、恵まれない子供たちのためにラスベガスに学校をつくることにしました。この事業は社会的にとても評価されました」
(「本音」の札が出る)
「これで有名人としての社会的責任は果たした」
「何言ってんだよっ。アガシはこの子供たちに投票してもらってネバダ州上院議員になった後、2020年のアメリカ大統領選挙に出るんだよ。アガシが民主党に巨額の寄付をして回っているのを知らないのかい。ひっかかってんじゃねえよーっ!」
「またなーっ!」

