第1回経済学ポイント講義    


その1:グラフで理解する「弾力的」ということ。

 数学的な感性が要求されるのが経済学であることは間違いありませんが、果たしてどのぐらいの方が微分までわかっているのでしょうか。単純化・抽象化された理論モデルの構築にとっては、数学を使うことでエレガントな解決が可能であるということはまちがいないことです。が、それではそうした単純化された理論モデルを理解するために、いちいち数学にまで戻らないといけないのでしょうか。
できれば、そうありたいものですが、なにしろ科目はいっぱいありますし、仕事は忙しいし・・・要するに不可能ですよね!
 だからこそ、直感的に理解することが大切なのです。
そのためには、中学程度の基本的な数学がわかっていればあとはグラフで理解することが何より近道です。
一つの例としてマクロ経済学の流動性選好表を考えてみましょう。図を見てください。
              

この図では縦が利子率で横は貨幣需給量です。そして中央にある垂直の線は実質貨幣供給量(M/P)を表しています。
 このグラフで縦軸に対して垂直に書かれていることの意味を考えてみましょう。これは、M/Pの値は、いつも一定であること、すなわち、縦軸の利子率がどのような値をとったとしても、実質貨幣供給量は一定値であることを表します。一つのマクロ経済の貨幣市場の中ではある金融政策が決定すると、政策意図に基づき考えられる限りの手法を使って貨幣供給量がコントロールされます。そしてその供給量はできるだけ一定値を取る努力が金融当局によって行われます。この影響力は日本経済全体へ波及しますから、早々簡単に貨幣供給量を変化させるというわけには行かないのです。つまり、貨幣市場分析では短期的に貨幣需要量は一定であると仮定しているのです。これが垂直に書かれていることの意味です。少し角度を変えてみましょう。利子の変化に対して供給量の値が変わらないということは、利子の変化にまったく反応していないということです。これを「利子非弾力的である」と表現します。

 これに対し、貨幣需要曲線についてはどうでしょうか。グラフでは利子率の減少に伴って貨幣需要は増大していますね。利子率が減少すれば投資は相対的に有利になりますから、投資総量は増大します。すると投機的動機に基づく貨幣需要が増大するために、全体としての貨幣需要は増大します。つまりグラフ的に言うと、利子率が減少するとは利子率(縦軸)が原点に向かって移動するとき、横軸方向でも右へ向かって移動しているということになります。これが同時に表現すると右下がりの線となりますね。これは利子に対してある一定の弾力性でもって需要量が反応しているということです。これを「利子弾力的」と表現することがあります。

 そしてもうひとつ、貨幣需要曲線がある利子率より低くなっている時、急に水平に描かれていますね。これを流動性トラップという呼ぶことはご承知のとおりです。この横軸に水平ということについて考えます。これは今まで述べた点とはまったく異なることです。つまり、利子率がほんのわずかでも変化するだけで市場の貨幣需要がものすご〜く増大するということを表していますね。これを、まったく難しい表現ですが、「利子弾力性が無限大である」というのです。
 こうした言葉使いというのは残念ながら慣れるしかありませんね。
 このことはミクロ経済学においても頻繁にできますのでしっかりと理解することが必要です。


その2:グラフで理解する「シフトする」ということ。

 もう一度上の図を良く見てください。貨幣需要曲線はこの図では2本描かれていますね。左の方が最初ですが、こうした貨幣需要の特徴を持ったある貨幣市場において、全部の所得水準が上昇した場合をイメージしてください。このとき、個人の所得が上昇するのと同じで、財布が膨らんでいますから予備的貨幣需要(L1)も当然大きくなります。これが予備的動機は国民所得の増加関数であるということの意味です。
 そして貨幣需要はL1+L2で成り立っていますから全体の貨幣需要Lが大きく膨れます。注意していただきたいのは、この貨幣需要が増大するということは、どんな利子率のときでも同様に起こっているということです。
 これをグラフ的に理解すると、全ての利子率の点で、それぞれの貨幣需要量がL1の増大分だけ右方向へ移動してきます。そして、その新たに描かれた点を集合すると、始めの線の右方向に別の新たな貨幣需要曲線を描くことができます。つまり、右方向へ貨幣需要曲線がシフトしたのです。そしてその結果として、貨幣需給均衡点は A点からB点へ移動し、同時に均衡利子率も変わりました。ここまで解れば貨幣市場は合格です。

 同一の線上での利子率の変化により同じ市場で同じ条件であれば利子率が変化することにより貨幣需要が変化するのは貨幣需要曲線上での点の移動だけでとららえることができます。しかし、そもそもの条件が変動した時には線上の移動では表現できませんから、新たな線へのシフトということが出てくるわけです。この違いは、特にIS-LM分析では必須ですからきちんと理解していく必要がありますね。

 どうですか、簡単でしょう。(^^)/

 それと得点アップのコツを一つだけ・・・。これからの時期は、テキストは捨てることです。替わりに何をするのか。これはもう問題に決まっています。分厚いマクロとミクロのテキスト類はどれだけオーソライズされた著名な学者の本であってももうあまり皆さんの味方にはなってくれません。逆説的ですが問題をとかないと、テキストが理解できていないことすら気がつかないのです。ひたすら問題の海に漕ぎ出すこと。これがこれからの時期の勉強方法の王道です。

 グッド・ラック!