第3回経済学ポイント講義


その4:LM曲線のグラフ的理解

 ようやく3回目を迎えましたこのポイント講義ですが、マクロ経済学のうち前半の山場といわれる貨幣市場分析の結論、LM曲線について考えましょう。
 その確認のための質問を最初にしておきましょう。「LM曲線はなぜ右上りに描かれるのでしょうか。」

 これを覚えるには貨幣需要曲線(右下がり)と反対とすればいい!しかし、これでは理解しているとはいえませんし、ちょっとさみしい・・・(^^;;
 では、考えましょう。まず下図を見てください。このグラフは貨幣市場の需要と供給について書かれたものです。縦軸は利子率、そして横軸は貨幣需給量。貨幣供給ラインがM/P@の時の均衡利子率はr1です。ということはその利子率より低い利子率r2では貨幣市場の需給関係はどうなっていますか。これはかんたんですね。貨幣需要曲線の値が貨幣供給量の値を超えていますから超過需要(⇔B)の状態です。したがって市場では利子率に関して言えば上昇圧力が働いていることになります。
 逆はどうでしょうか。ここではまったく逆のことが発生しますから超過供給(⇔A)が発生しています。つまり市場では利子率に下げ圧力が働いていることになります。
                        
 ではLM曲線を考えるために、つなぎとして均衡利子率の状態を考えます。r1の時には貨幣需要と供給量の水準が一致しています。このとき貨幣需要の内訳を考えてください。貨幣需要量は二つに分解できましたね。予備的動機と取引動機による貨幣需要(L1)と、投機的動機による貨幣需要(L2)の二つです。これを数式で書けば、 貨幣需要量(L)=L1+L2 となりました。この二つの需要は別の特性をもっていました。つまり、L1は全体の所得水準が拡大すれば、L1も拡大するという特性があります。これを、国民所得に対する増加関数とよぶんでしたね。もう一つのL2は利子率の減少関数という特性でした。
 
 L2はわかりにくいと思いますが、前提としているのは貨幣市場の分析ですから、単純化のため貨幣と債券の二市場しか考慮していません。そして、貨幣市場では、利子率と債券価格は、反対方向に動きますから、利子率が上昇すると債券価格は下落する。すると、現金保有より、将来の有利な投資としての相場感が働きますから、現金保有から債券購入へと保有動機はシフトします。つまり、価値保蔵の保有形態が現金から債券へと動くわけです。よって、貨幣需要は利子率とは反対に減少します。ここは、あーだこーだと思い煩うと体に良くありませんから、すっきりと今述べた関係だけを整理しておけば十分でしょう。
 ちなみに、利子率と債券価格の関係は次の式で理解するのが一番早い。利子率=利息÷債券価格 債券価格は分母ですから、分母が大きくなると、結果として利子率は小さくなります。逆に、分母の価格が小さくなると、結果の数字である利子率は大きくなります。つまり、利子率と債券価格は反対方向に動く関係にあるのです。これをしっかり叩き込んでおきましょう。理屈をいうよりずっと簡単でしょ?

 さて、ここからはLM曲線についてです。
 LM曲線とは、貨幣市場において貨幣需給が均衡する市場の利子率とその時の市場規模(均衡国民所得Y)との相関をプロットしたものです。

 LM曲線の成立要因について考えてみます。
グラフとしてはIS曲線と同じく、縦軸が利子率で横軸が均衡国民所得Yの2点の相関を描いたものですね。ここでピンときて欲しいのは、Yが出てきたから、これはL1が出てくるんだな、ということです。L1は国民所得の増加関数でした。ということは利子率rとYの相関で考えれば右上りの線になります。下図で見てみましょう。

                  
 3つの図のうち始めは左下図から考えます。Yが増大した市場を考えると、L1はL1aからL1bへ増大します。縦軸L、横軸Yで描けば、増加関数ですから、当然、右上りとなります。そしてそれぞれのポイントはA点とB点です。
 次にYの増加からL1の増加は、貨幣需要全体にも影響を与えます。これが右下図で、同じ貨幣供給量のとき、貨幣需要量は予備的動機L1による需要増大分だけ全体の貨幣需要量Lは増大します。図では点線へ右シフトしてますね。すると、以前にはA点で貨幣需給は均衡していたのがどうなりますか。ここが大事!です。A点というのは利子率がraの水準であるということですが、同じ利子率水準の時、両矢印の部分だけ超過需要が発生していますね。この超過需要というのは、言い換えれば実際の貨幣市場では債券を手放したいという需要があるということです。みんなが手放したい=売りたいというとき将来的には債券価格は低下することは誰でもわかります。つまり持っていてもうまくないという状況です。これは利子率にはどういう影響がありましたっけ? そうですね、債券価格と利子率は反対方向へ でした。つまり利子率は上昇する方向へ動き始めるのです。ではどこまで利子率は上昇するでしょうか。図ではB点まで、均衡するところまでです。そしてその利子率はrbです。

 こうした貨幣需要と国民所得水準の変化を同時にプロットしたものが左上図ですね。これがLM曲線です。LM曲線だけで見るときには、いつもYaの水準にはL1aという予備的動機の貨幣需要があることを忘れないで下さい。
 それにしても、IS曲線とLM曲線の二つを勉強してみると、ケインズという学者の天才が良くわかります。なんともこれを理論構築したのもやはり人なんですよ。もっとも、こうした洗練された形で図式化してまとめたのはケインズ本人ではなかったのですが・・・