第4回経済学ポイント講義


その5:クラウディングアウトのグラフ的理解

春なのに風邪を引いてしまいました。
で、高熱にうなされ、その影響で仕事をこなすのがやっとの状態がしばらく続いておりました。
ふ〜む!やっぱ体力が大事ですね。皆さんも勉強しすぎで無理をしないで下さい。
では遅くなりましたが、第4回経済学ポイント講義をいたします。

 財市場と貨幣市場の各市場を同時に分析するツールがIS−LM分析です。この分析手法により、具体策としての金融政策と財政政策の有効性を判断することができます。こうした市場の見方は、経済市場の中期的な動向を見極めるための理論的根拠を与えてくれます。
 この大切な分析手法をしっかりと理解するためにも、どうしても今回のクラウディングアウトについては正確に理解しておく必要があります。

 簡潔に結論からいえば、財市場において財政政策を実施すると、結果的に貨幣市場の利子率が変化し、その影響によって元来の財政政策の効果が減殺されてしまうことを言います。つまり、財政政策の45度線分析による理論値と実際の結果の誤差をどう理解するのかということですね。
 では始めに下図を見てください。これはIS曲線が拡張的財政政策の発動によって右シフトし(ISからIS’へ)LM曲線との新たな均衡点が求められたところを表しています。
                   
 財市場の分析手法である45度線分析では、市場利子率は一定であると仮定されていましたね。これはあくまで理論を簡略化するための仮定だったのですが、IS-LMの同時均衡を考える際には、拡張的財政政策の発動による新たな財市場の均衡点はE'です。このとき利子率はr2からr1へ上昇していますね。もし均衡レベルが政策発動前の状態と利子率が一定であるとすると、すなわち財市場のみを考慮するなら、均衡国民所得の水準はY2であったはずなのです。これは単純に財市場の均衡だけを考えた45度線分析の結論です。

 しかし、経済は財市場だけで構成されているわけではなく、IS-LMによる同時均衡を考える時には貨幣市場からの影響も考慮しなければなりません。それは具体的には利子率の変化を考慮することです。そして利子率の変化は、民間投資の総量変化となって表われます。言い換えると、この投資の変化とは、利子率の上昇による投資の減少となって、またその結果として国民所得水準を押し下げる形であらわれることになります。

 上図で右向きの→は45度線分析による均衡国民所得水準の増大を表しています。そして、それが貨幣市場の影響を考慮することによって、つまり利子率が上昇することによって、いったんY2のレベルまで上昇したYの水準が、Y1の水準にまで押し下げられることになります。その結果として均衡点はY1の水準E'に収束するのです。この投資の減少による影響は、上図では←となって表われされています。こうした財政政策発動が民間投資の減少を引き起こす現象のことを、クラウディングアウトと呼んでいます。

 したがって、財市場のみを考慮した場合の均衡水準を確保するためには拡張的財政政策の発動と同時に、利子率を減少させるための金融政策を考慮しなくてはなりません。これは貨幣市場においては実質貨幣供給量の増大によって導くことができます。そのための金融政策については、これも拡張的な政策として考えるのでLM曲線を同様に右シフトするということになります。

さて、では同じ財市場においてクラウディングアウト発生の割合が大きいかどうかを考えてみます。これは前にやった投資の利子弾力性の問題と考えるといいですね。
 上図との違いはわかりますね。LM曲線と均衡利子率は同じですが、IS曲線の傾きがちがいます。右の方は上図よりかなり急になっており、逆に左図は緩やかになっています。これはそれぞれ同じ利子率の変化でも投資の変化量が左図に比べて右図の方は小さいこと、つまり投資の利子弾力性が小さいということですね。言い換えると、投資の利子弾力性が大きくなるほどクラウディングアウトの影響が大きくなるということを意味しています。
 ですから、クラウディングアウトの影響をまったく受けない貨幣市場というと、投資の利子弾力性がゼロの時ということになります。もう少し言い換えると、投資の利子弾力性が小さい市場ほど財政政策は有効に働くことになります。
        
 こうした関係は、言葉だけで考えてもだめです。特に試験のような特殊な?精神状態の時にはもっとも危険です。必ず、上の図を簡単にさっと書くことが大切です。混乱することによる判断ミスが出やすいのが試験ですから、いつも設問文をグラフ化して考えることを習慣にしていきましょう。