第5回経済学ポイント講義その6:LM曲線の傾きをグラフで理解する
| 前回に続いて、もう少しLM曲線とクラウディングアウトについて考えます。 まだLM曲線の傾きの違いについて考慮していませんでしたので、そこから見ていきましょう。下図で考えますが、最初に上左図は予備的貨幣需要についてです。L1aの方はL1bと比較すると傾きが緩やかです。これは同じYoからY2への所得変化に対して、貨幣需要の変化がL1bの方が多いことを表しています。ということは、上右図の貨幣需要曲線では貨幣供給量は同じでも貨幣需要は相対的に多くなりますから、右シフト幅は大きくなり、結果として均衡利子率はL1aではraなのに対し、L1bではrbとかなり高くなることを意味します。ここまではいいですね。 ![]() そして、このことは直ちにLM曲線に影響を与えます。それがすぐ上の図です。つまり同じ所得の変化に対して縦軸に利子率をとった場合、こうした傾きの差となって表すことができるのです。LM曲線の傾きはどれだけ貨幣需要量が大きく変化するのかという割合によって変わります。貨幣需要の変化割合が大きいほど均衡利子率の変化が大きくなり、その結果、LM曲線も傾きが大きくなってくるという連鎖になります。ちがう言い方をすると、貨幣市場における需要の所得弾力性が大きいほどLM曲線の傾きは急になっているのです。このロジックをグラフでしっかりと理解してください。こうした弾力性の観念についてはもうすっかりおなじみになっていると思いますが、やはりグラフで理解することが近道です。必ず自分でグラフ化する癖をつけてくださいね。 |
| さてそれではここまでのややこしい話しを一度整理します。それにはIS-LM同時均衡を政策の有効性を判断するという視点で考えることが一番早く理解することになると思いますので、以下ではそうした政策の有効性を考えていきましょう。 通常の同時均衡分析 下図で考えましょう。左図はIS曲線が財政政策により右シフトしたものです。右図はLM曲線が金融緩和政策によって右シフトしたところです。この結果、両方の市場において均衡国民所得Yは大きくなりました。こうした結果が得られることをその政策が有効であったと表現しています。 ![]() 特殊な状況でのケース@ 《IS曲線の垂直な場合》 《IS曲線が水平の場合》 《IS曲線が垂直の場合》 この場合はすぐわかりますね。始めにIS曲線が垂直な場合ですが、この垂直の意味はもう繰り返しません。で、垂直な場合でLM曲線は普通の市場ですが、この時、拡張的財政政策はIS曲線を右シフトさせます。すると、もとのLM曲線との交点は右に移動するため、新たな均衡国民所得は増大しています。つまり、こうした政策実施の結果として市場規模が膨らむ事をさしてその政策が有効であったと言います。つまりこの場合は財政政策は有効なのです。逆に、財市場はそのままにして、貨幣市場における金融緩和策を実施した時にはIS曲線はそのままでLM曲線だけが右シフトします。すると新たな均衡点は縦軸の利子率は変化させますが均衡国民所得Yには変化はありませんね。これをしっかりグラフで確認してくださいね。つまり、IS曲線が垂直に場合は金融政策を実施してもまったく経済規模には変化がありません。この事をさして政策は無効であるというふうに言います。 《IS曲線が水平の場合》 こちらはもっとわかりやすいです。グラフが水平なわけですから、財政政策を実施しても曲線の形状はまったく変化しませんね。つまり財政政策では市場に変化を与えることはできませんから無効ということですね。反対に、金融政策を実施するとLM曲線の右シフトをもたらしますのでYは大きく変化します。 特殊な状況でのケースA では続けて貨幣市場を中心に見ていきます。LM曲線の特殊ケースです。 《LM曲線が垂直な場合》 《LM曲線が水平の場合》 ![]() 《LM曲線が垂直な場合》 この場合にはどのように考えるのでしょうか。LM曲線が垂直な時とは、言い換えると貨幣需要の利子弾力性がゼロの市場です。このとき、利子率が変化しても、投機的動機の貨幣需要は変化しません。もちろん予備的動機の貨幣需要も所得水準が一定なら変化しませんから、全体としての貨幣需要量総量は変化なしの状態です。こうした特性を持つ市場において財政政策を実施した時ですが、この場合は太実線のLM曲線についてみると、IS曲線が右シフトしてもYには変化がありません。逆に金融緩和政策を実施すると、太点線のLM曲線の位置にして右シフトしますからIS曲線と比較すると、Yは増大していますね。つまり金融緩和策は有効だが財政拡張政策は無効であるということです。 《LM曲線が水平の場合》 この場合は図でみていただけるとおり、いわゆる流動性トラップの状況ですね。これは貨幣需要の利子弾力性が無限大であることを表しています。この時にはLM曲線の右シフトは効果を持ちませんがIS曲線の右シフトは有効です。つまり、流動性トラップに入っている時には金融政策では市場に変化をもたらすことはできませんので、財政政策のみが有効ということです。 ここまで理解すれば、あとは超過供給と超過需要のグラフによる理解ができればケインズ型の均衡分析については万全です。もう少しでマクロ経済学の基本は完璧ですから頑張っていきましょう。 |