第6回経済学ポイント講義    


 第5回までをまとめて

IS曲線は利子率によって決定される投資水準より、財市場における均衡国民所得水準の決定過程を分析するものであり、LM曲線は、国民所得水準と取引需要の関係と、それによって変化する貨幣需要量と中央銀行の政策的決定による貨幣供給量の均衡水準を、利子率と所得水準の相互関係としてとらえて、貨幣市場における均衡水準を導出する分析手法です。

  このISLMの二つの曲線が、利子率と国民所得という共通座標に描かれたとき、需給曲線と同じようにその交点は財市場と貨幣市場を同時に均衡させる水準の均衡国民所得の量を示しているわけですが、経済政策担当者は、いわばこの2つの曲線を移動させるために(曲線上の移動ではなく曲線そのもののシフトである点に注意)さまざまな手法の政策を立案します。
 
  結局、同時均衡分析をすることに何の意味があるのか。実はここにこそ経済政策の実質的理論が詰まっているのです。ケインズが有効需要の原理といい、総需要管理政策というときには理論的支柱はこの同時均衡分析にあります。ですから、各市場を個別に分析するのは、実は準備に過ぎないといってもいいのです。

 経済政策といっても、財政政策と金融政策によるわけであり(これがポリシーミックス!)その有効性を理論的に証明するためにこうした同時均衡分析手法が作られているわけです。政策論議の基礎的な理論がこのIS-LM曲線による同時均衡分析であるという点は十分認識していく必要があります。


その8:IS−LM 同時均衡分析(グラフで考える超過需要と超過供給)

今回はかなり複雑ですので、覚悟を決めて読んでくださいね・・・(^^)/ 

 始めに下図を見てもらいましょう。単純な財市場と貨幣市場との同時均衡をあらわしています。
 交点は財市場と貨幣市場の同時均衡点であり、それぞれのrとYの値を読取ることができます。


         
 さて、ここで問題です。点αの位置は市場の状況はどのようになっているのでしょうか。
 これは超過供給と超過需要という基礎的概念を使って考えることができます。では具体的に見ていきましょう。

  これはISLM曲線をそれぞれ別途考えるべきですから、まずIS曲線からみていきます。

                         
   まず点Aは投資水準がI0です。Bでは、投資水準はI1に膨れています。この時の利子率は限界投資曲線からそれぞれr0とr1の水準になっています。(利子率がr0→r1のとき、投資量はI0I1へ移動)
 この投資水準は、下図のとおり、45度線によっても確認できます。
この二つの図より、IS曲線の座標はA(Y0r0)、B(Y1r1)ということに決定されました。
ここまでは通常の
IS曲線の導出プロセスです。
                                     
 では45度線分析の点αと点βについて考えてみてください。
まず点βです。この点は所得水準がY0ですから、先のIS曲線上にある点Aから考えると、均衡水準である投資量の水準はI0のはずです。ということは利子率はr0となっていなければなりません。ところが、実際の需要水準が点βではYd1なわけですから、点βの座標は(Y0、r1)となります。そして、45度線は総供給の水準を表しているのは基本事項でしたね。したがって、点Aは所得Y0のときの需要と供給の均衡点です。ここから考えると、点βでは明らかにA-βだけ需要が超過しています。
             
 逆に点αは 所得はY1ですから投資はI1であるはずで、点Bではそうなっています。ところが点αでは、投資水準はI0であり利子率はr0となっていますから座標は(Y1、r0)となります。これは明らかに投資が不足している状況であり、本来の需要水準である点Bからみればα‐Bだけ超過供給となっています。

 これらの関係をIS曲線上で確認しましょう。
 元来、
IS曲線上の点は財市場の均衡点の集合のはずですから、その線上にない点は超過需要か、または超過供給のどちらかになっているはずです。もう一度上のIS曲線の図を見てください。45度線分析での点αと点βが、IS曲線とどういう位置関係を考えます。点αは(Y1r0)であり、これを財市場の分析に戻り考えると均衡水準からα‐Bだけ超過供給が発生していることがわかります。逆に点βは(Y0r1)であり、同様に財市場の均衡を考えるとβ‐Aだけ超過需要が発生していることが確認できます。つまり、IS曲線の右上側では超過供給が、左下側では超過需要が発生している点であるということになります。結論として最初の問題について考えると、図にある点αはIS曲線の左下方にありますから、財市場では超過需要が発生しているということになります。

次に貨幣市場を考えましょう。始めに貨幣の取引需要ですが、図のようになっています。
                                 
  そしてこれを資産需要とあわせて貨幣需要全体で考えると下左図になります。このとき貨幣市場の均衡水準は、L1aの時、点Aであったのが、国民所得水準が拡大するとL1bに対応して点Bへと移動します。これにつれて貨幣市場の均衡利子率も
raからrbへと上昇しているのがわかりますね。これらの座標をLM曲線上で表すと、同じく下段右図のようになっています。これが通常のLM曲線上の均衡点の意味でした。
 
 また、この
LM曲線上以外の貨幣市場の点は、IS曲線のときと同様に定義から均衡していない点α・βは、超過供給または超過需要の点であるということになります。

 

ではここからは貨幣市場の点αと点βについてみていきます。
 まず、点αについてです。利子率水準
raの時の貨幣需給均衡点は点Aですが、点αでは同じ利子率raであるのに貨幣需要は貨幣供給量M/Pに対して大きく上回っている状態がおわかりいただけますね。つまり、A-αだけ超過需要の状態です。そして、点αはL1bL2の水準の貨幣需要曲線上にあるのですから、対応する国民所得はY1のはずであり、点αの座標は(Y1ra)となります。これをLM曲線の座標上にプロットすると図のように均衡点の集合であるLM曲線の右下方に表せます。

 

 また点βについては、利子率がrbの時の貨幣需給の均衡水準は点Bであるのに貨幣需要量が貨幣供給水準M/Pに比較してかなりの不足があります。すなわち、β-Bだけ超過供給の状態です。そして同様にLM曲線上にプロットすると同線上の左上方部分にくるのです。点βの正確な座標は、(Y0rb)となります。
 つまり、貨幣市場においてはLM曲線の左上方に位置する点は超過供給を、右下方に位置する点は超過需要をあらわしているということになります。
ここで最初の問題に戻って考えると、設問の点αはLM曲線の左上方部分にプロットされており、結論としては貨幣市場においては超過供給をあらわすということになります。先にみたように財市場では同じ点αは超過需要を表します。

 以上、今回の問題は、貨幣市場と財市場の各需給均衡の過程を確実に理解し、その上で均衡点以外の点がどういう状況なのかをしっかりと理解しなければ結論は出てこない大変高度な設問です。過去の公務員試験などでは頻出分野であり、今後の診断士試験においても最重要分野であることはまったく同じです。ただし、試験対策的には各曲線上の上側は超過供給、下側は超過需要と単純に記憶するだけで対応可能なケースも多いので安心してください。
 

 まとめますと下図のようになります。結論はとても簡単ですが、そのプロセスはなかなか難しいものです。試験対策としては結論を覚えればいいわけですが、できればしっかりとプロセスを理解してもらいたいと思います。