第8回経済学ポイント講義


その10:IS曲線と限界消費性向のグラフ的理解

 少し前に質問を受けましたので、この項を追加することにします。(質問内容は以下のとおり)

 設問の選択肢の中で 「IS曲線の傾きは限界消費性向に影響される。それに対して投資の限界効率曲線は投資の利子弾力性によって変わるので、両者が一致するとは限らない。」の部分ですがグラフ化してどのように考えるのか教えていただきたいのです。

【解答】
 投資の利子弾力性が大きい時には、図でわかるように同じ利子率の変化に対して投資量はより大きく変化します。その結果として、投資曲線は水平に近づきます。これが極端になると、つまり投資の利子弾力性が無限大になると投資曲線は水平になり、同じく弾力性がゼロの時には垂直の形状となります。厳密には限界効率曲線と投資曲線は別のものですが、投資量と限界効率、投資と市場利子率は同じく利子率の減少関数ですからグラフ化したときの形状は同様の変化をしますので図でご理解ください。
                  

 またIS曲線については、利子率と国民所得との相関をグラフ化したものでした。まず投資量についてはたしかに限界効率曲線とまったく同じく利子率との関係で決まります。しかも利子弾力性が同じ場合は先の図とまったく同じ形状を取ることになります。しかし、それから先の消費関数による総需要曲線の形状は利子率には無関係であり、この傾きは限界消費性向で決まります。したがってこの場合に、投資が同じであったとしても結果として得られる均衡国民所得の値まで同じになると言えませんし、その結果としてのIS曲線の傾きが同じになるとは決していえないのはお分かりいただけると思います。

 下図はまったく同じ投資でありながら限界消費性向の値が大きくなると均衡国民所得の値も大きくなることを表しています。同じ傾きの総需要曲線同士が(利子率の同じ割合の変化による同じ投資への影響によって)受ける需要量への影響を表しており、その関係は限界消費性向の値が大きいほど利子率による投資の変化が大きく総需要に影響を与えているということが読み取れると思います。この理由は簡単です。なぜなら限界消費性向が大きいのですから傾きが大きくなり、均衡点はより大きい点に変化するからです。
                

これを具体的な数値に置き換えて考えてみましょう。
消費関数を
@
y=1000.5y+100
Ay=1000.8y+100         とします。
この時それぞれの均衡国民所得は、@ y400 A y1000  であり、投資乗数は前者が2、後者は5です。そして、投資が利子率変化により仮に2倍の200になった場合どう変化するのか。
@y=1000.5y+200
Ay=1000.8y+200    

この結果、
@y600、Ay1500  となります。つまり、限界消費性向が0.5の時には、yの値は 400600へ+200、同じく0.8の時には 10001500へ+500変化しました。これをグラフで確認してください。そしてこの結果は直ちにIS曲線の形状に影響を与えます。IS曲線の形状については以下の図のとおりです。

           
 この場合注意していただきたいのは、二つのIS曲線は同じ利子率の変化に基づいて描かれている点です。つまり限界投資効率曲線の傾きの変化の形状と相関関係のある部分を意識していただきたいと言うことです。明らかにこの傾きの差が発生している要因は総需要曲線の傾きであり、つまりは限界消費性向の違いによっているということです。もちろんまれに両者が一致することもあるかと思いますが、これはむしろ例外であって、通常は「IS曲線と投資の限界効率曲線の傾きは同じになる」とはいえないのです。

 質問にありました「IS曲線の傾きは限界消費性向に影響される。それに対して投資の限界効率曲線は投資の利子弾力性によって変わるので、両者が一致するとは限らない。」というのは以上のようなことを意味しているのです。