やる気を考える 労務管理講座 Vol.3

モチベーションが下がってるぞ〜!

さて第3回目の「やる気を考える」シリーズですが、今回はモチベーションについて考えます。
 英語では
motivationですが、日本語では「動機付け」と訳されることが多いようです。この原語はmovereというラテン語ですが、意味は「何かを求めて動かすこと」なんだそうです。モチベーションを考えるうえで、この原語の意味はなにやら象徴的です。
 日本語で「やる気」とは、何かを達成しようとする気持ちです。そして、やる気を上司が部下に対して出させるために、意図的に指導・激励・叱咤などの方法をとるわけですが、このときによく言われる動機付けとは何でしょう。ついでにこれも見ておきますと、「動機motive」とはよくテレビの犯罪モノなどに出てくる言葉ですが、何かをするための必然性とでも考えておきましょうか。簡単に言えば行動に移す直接のきっかけとなったことですね。この動機を、他人に対して「付ける」こと。これが動機付けです。つまりは、部下である他人を、業務上のある目的に向かって、結果を求めて動かすことです。こうした人事上の技術を、モチベーション・マネジメントなどといったりもします。motiveの名詞形はmoterですが、これは日本語になってますね。モーター、つまり何かを動かすために必要な駆動力を生み出すための装置です。

 さてモチベーションの意味をもう少し突っ込んで考えましょう。
行動に動機を与えること、行動を起こさせること、行動に刺激を与えること、特に学習意欲を起こさせるような動機付け。こうした意味があるのが「動機付け」という言葉ですが、共通するのは「誰かが、第三者に対して、何かをさせようとして、行うなにかであること」です。要は自分がするのではなく他人をして、何らかの具体的なアクションにまで動かしめること。これがモチベーションの本質的な意味であると思います。
 これに対して、やる気については、「やる気を出す」とか「やる気を出させる」という言い方をすることから推測すると、どこまでも自発的なものであることが前提になっているようです。したがってやる気とは自分で出すものであり、他人が誰かのやる気を引き出すというようなものではないのです。このやる気を一定の方向へ向けて動かすことが動機付けであり、モチベーションであるということになるでしょうか。

  

動機と誘因

 それでは次の疑問ですが、私たちはどうして動機付けられるのでしょうか。なぜ動機を与えられて行動に移すことになるのか。これが重要なポイントですね。なぜなら、人が他人から動かされるということは受動的なことであり、本来喜ばしいはずのものではないからです。でもそうなるには、ちゃんとそれなりの理由があるはずです。そしてその理由がきちっと理解できれば、もうモチベーション管理の半ばは理解したことになると思います。
 実はこれは大変簡単なことなんですね。人は功利的存在であると言ったのはベンサムでしたっけ。常に利を感じ、利によって動く。これは人のもつ基本的な生物学的特性です。何を利と感じるのか。これはまた難しい問題ですが、行動科学では大きく二つに分けて考えます。それが動機(動因)と誘因です。先に述べた動機(動因)と、この誘因を組み合わせて考えると、動因・動機(motive)とは、「行動への原動力となるもの」であり、誘因とは、「行動を引き起こす刺激となるもの」なのです。

             

こうした心の動きが複雑に絡み合って、やる気というものは形成されるということになるのです。

 結論的に言うと、誘因に誘われた動因があり、その誘因へ向かう心の動きがやる気ということになります。そしてそのやる気を意図的に感じさせることを目的とした行動をモチベーションと呼ぶのです。ですから、やる気を考えるのはあくまで自発性を前面に出すことですが、モチベーションというときは第三者に対し、具体的に行動を起こさせるための一種の技術であるということになります。
 ところが、ここでもう一つ重要なことですが、ある人にとっては欲しいと思うこと(強く誘因となるようなこと)が、誰に対しても当てはまるのかというと、決してそう単純なものでもないということです。ここにやる気を考えるうえでの難しいポイントが隠されているように思います。本来、やる気を考えるということは個別的な管理手法が前提となっていることが必要不可欠であるということです。ただこの点は経営組織の質的・量的変化と個の位置づけの変化を双方向で考えていくことが大切ですからまた別の機会に考えます。

 さて今回、やる気と動機付けの違いについて、なぜくどくどと書いているのかわかっていただけますか。
 「やる気」とは、自分が元々持っている自分の中のエネルギーを何らかの目的に対して焦点を絞り込んで行動へ移すことなのです。ここでは他人は刺激であるにすぎません。こうした自発性を前提にしたモノがやる気であるということを、話しの出発点として、きちんと認識することは極めて重要なことなのです。
 そして、人事上で話題になるモチベーション管理とは、こうした優れて心理学的な見識が背後になければ成果など出せようはずがないということを知っていただきたいのです。
 やる気は管理できるものはありません。やる気を管理できると考えるのは、人間存在に対する不遜でしょう。しかし、個別にやる気を引き出させる重要な動因と誘因とを考えることはできます。そしてその上で、ある一定の誘導を図るということは管理技術として可能であると考えます。これがモチベーション管理ということになるのですが、その辺のお話しはまた次回にでも・・・

                                          2002/4/17