※雑誌“Deutschland”No.4/99(日本版)より転載。
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国籍取得条件を大幅に緩和
――外国人のドイツ社会への融合を目指して


ドイツでは、毎年約10万人の外国籍の子供たちが生まれる。だが2000年1月1日に新国籍法が発効すると、事情は変わる。親が外国人でも、ドイツ生まれの子供たちには、ドイツ国籍が認められるようになるからだ。従来のドイツ国籍規定の血統主義に、出生地原則が加味されるのである。

 シリー内相(SPD)が連邦議会に提出した法案は、今年5月初め、社会民主党(SPD)と同盟90/緑の党からなる連立与党、自由民主党(F.D.P)、そして民主社会党(PDS)の一部の支持を得て可決された。その数日後、同法案は州代表からなる連邦参議院でも可決承認された。1913年に施行された国籍法の改正をめぐる長年の議論に、これでようやく終止符が打たれたことになる。

 改正法の骨子は次のとおりである。ドイツに8年以上合法的に滞在する外国人を父または母としてドイツで生まれた子供は、自動的にドイツ国籍を得る。ただし、この父親または母親は、滞在権または少なくとも3年前から無期限の滞在許可を所持していなければならない。子供が誕生と同時にもうひとつの国籍を得る場含は、18歳で成人に達した時点から5年以内に、ドイツ国籍と第2の国籍のいずれかを選択しなければならない。23歳になった後もドイツ国籍を保持しようとする者は、23歳になるまでに外国籍の放棄または喪失の証明を提出しなければならない(オプション・モデル)。これが行われない場含、ドイツ国籍は消滅する。

 新法の発効以前に生まれた10歳未満の子供には経過規定が適用され、法施行から1年以内であれば、ドイツ国籍を取得することができる。この子供たちの場合も、成人に達した時点でドイツ国籍と外国籍のいずれかを選択しなければならない。成人の帰化については、必要な滞在年数を短縮することで容易化が図られる。これまでの15年に代わって8年の滞在、および一定の条件が満たされていれば、ドイツ国籍を申請することができる。一定の条件とは、滞在許可か滞在権の所持、基本法への忠誠、生活保護や失業手当ての給付によらず自らと家族を扶養できる経済力、無犯罪証明、ドイツ語能力などである。

 シリー内相は連邦参議院の最終審議の場で、改革はドイツの国籍法をヨーロッパ的水準に引き上げ、ドイッの社会的平和を強化する措置、と述べている。同内相によれば、これによってドイツでも国民の概念がより現実に近いものとなる。国民という観念は民族的均質性に依拠すると考えるのは幻想であり、社会的まとまりは共通の言語や地理的な境界、あるいは統一的な宗教だけではけっして達成できない。開かれた現代的な国民の概念は、平和的に共存しつつ共同で未来を建設していこうとする意志、さらに自由な社会の基本である諸価値への忠誠に立脚しなければならない。その意味で、新国籍法は「異なる文化の、豊かで平和的な共存の基礎」となる。シリー内相は、このように述べている。

 ドイツには現在、およそ730万人の外国人が暮らしている。これは総人口の約9パーセントにあたる。最大のグループは210万人強のトルコ人。さらに、旧ユーゴスラビア出身者が約120万人、イタリア人が約60万人、ギリシア人が約36万人となっている。旧西ドイツでは、外国人が人口に占める割合は、5.2から18パーセントまでと地域によってかなりの幅があるが、旧東ドイツ地域では1.2から1.9パーセントである。外国人の半数以上は、すでに10年以上ドイツに住んでいる。とくに、170万人いる18歳未満の外国人では、10年以上ドイツに暮らす人たちが3分の2以上を占める。シリー内相によれば、この年齢層の外国人は同年代のドイツ人と同じ権利を持つことに深い関心を寄せており、そのためドイツで生まれ育つ外国人子弟にドイツ国籍を認めることが非常に重要だった。

国籍別にみたドイツの外国人人口
 トルコ 2,107,000 *現在ドイツには約730万人の外国人が暮らす。
 最大のグループはトルコ人。
 今回の法改正によって、これまでより容易に
 ドイツ国籍を取得できるようになった。
 セルビア/モンテネグロ721,000
 イタリア607,000
 ギリシャ363,000
 ボスニア・ヘルツェゴビナ283,300
 ポーランド281,400
 クロアチア206,600
 オーストリア185,100
 アメリカ110,100
 マケドニア42,600
 スロベニア18,100

 ドイツ連邦政府は、国籍法改正を重要な外国人の社会編入策と位置づけている。これからは、ドイツで育ち、就学、就職する外国人子弟は、初めから完全にドイツ社会の一員となる。彼らはドイツ社会で、ドイツ人として育つことができるのである。それでもなお、新しい国籍法は政府にとってひとつの妥協策でしかなかった。当初予定されていた全面的な二重国籍導入は、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の猛烈な反対にあい、同党が始めた「ふたつのパスポート反対」の署名運動は全国的な広がりをみせた。さらに、キリスト教民主同盟がヘッセン州議会選挙で勝利したため、連立与党は連邦参議院での絶対過半数を失い、キリスト教民主・社会同盟と自由民主党の反対を押しきって、二重国籍法案を可決することは不可能となったのである。このため、50年代にドイツにやってきた外国人労働者の第1世代の場合、例外規定はあるものの、今後も二重国籍は認められない。

 こうした二重国籍に関する妥協にもかかわらず、今回の改革は「歴史的な近代化」を意味する。国民の「民主主義の理想にそった利害の調整」は、国家・法秩序への同等の参加が認められてこそ、初めて可能だからである。もちろんドイツ国籍の取得は、たとえば選挙権といった権利だけでなく、兵役などの義務も伴うものである。ドイツに8年以上暮らす410万人の外国人のうち、どれだけの数が実際に帰化を申請するかは、法が施行されてみないとわからない。なるべくたくさんの人たちがドイツ国籍を選んでくれることがドイツの利益につながる、と政府の外国人問題担当委員マリールイーゼ・ベックは語っている。