はじめに
 普通の夫婦生活を営んでいるのにもかかわらず(妊娠しやすいのはいつ?⇔CLICK)、2年間妊娠しない状態を不妊と定義し、医学的介入を求めた場合を不妊症と言います。  現在、不妊のご夫婦は6〜7組中1組だと言われています。
では『
なぜ2年間?』なんでしょうか   - -排卵を月に1回と仮定すれば、精子の寿命を考慮し約3日間、2年で72日間の妊娠のタイミングがあることになります。 なお、欧米では(アメリカ生殖医学会:ASRM)1年間とし、国際産科婦人科連合(FIGO)では2年間と定義しています。
 では『
何時受診したら?』---現在、晩婚化(どのくらい晩婚?⇔CLICK)はすすんでいます。 『妊娠のしやすさ』は年齢と共に低下(年齢と妊娠?⇔CLICK)します。 不妊症と言われる2年間を待つ必要はなく、月経不順や痛み、基礎体温でおかしいな?と感じた時に受診して下さい。 『赤ちゃんが欲しいな』『妊娠しないな?』っと思ったときがこの先一番妊娠しやすい年齢であることをお忘れなく。
子宮・卵巣の構造
子宮とは?
 
受精した卵を赤ちゃんにまで育ててくれる場所であり、性周期によるホルモンの作用で受精卵の受入れ環境づくりを繰返しています。

卵巣とは?
 図では子宮にぶらさがるように隣接している卵をつくる臓器です。 卵胞という袋状となった中で様々なホルモンの作用を受けて卵は成熟します。卵の成熟に伴い卵胞自体も大きくなるため、卵胞の大きさを指標に卵の成熟を予測します。『もうすぐ排卵ですね』なんて、超音波検査の画面でお見せする丸いものを覚えていませんか? あれが卵胞なのです。
卵管とは?
 子宮両側についている管状のもので、膣より遡上してきた精子は子宮腔側より卵管内に入り、卵は反対側の卵管采によって取込まれ卵管内に入ります。 卵と精子の出会いは、卵管がやや太くなった卵管膨大部であり、受精した卵は卵管内をゆっくりと分割しながら移動し子宮腔内に到達し着床します。
精子卵子の構造

卵子
 卵子は、その卵細胞を透明帯という弾力性のある層に包まれています。また、ゼリー状の様な卵丘細胞が卵子を保護するように取り囲んでいます。卵子まで到達した精子はこの卵丘細胞の層を通過することからはじまります。 

精子
 精子は、頭部にある遺伝子を運ぶためだけに体部にあるエネルギー源だけで尾部を使って泳ぎます。
精子と卵子の出会い
排卵と卵管采の捕捉
 卵子は卵巣内で作り出されるものてせはなく、数百万個の未成熟卵子が成熟を停止した状態で存在しています。思春期に分泌される各種ホルモンの刺激作用により、数百個単位で成熟発育を開始し排卵をむかえます。 未熟な卵子は卵巣内で袋状となった卵胞とよばれる単位で成熟し、卵胞自体の発育と同期しています。 最も小さい卵胞直径は0.1〜0.2mm(原始卵胞)で、ある種のホルモン作用を受け大きくなり、ある一定の大きさになると別のホルモンの作用で風船がはじけるように卵胞が破裂し卵が放出されます。卵胞内部は卵胞液で満たされており、直径が2cm程度になると卵胞自体がはじけ、卵胞液と共に卵胞の外に卵が放出されます。これを排卵と言います。
 排卵された卵子は、卵管先端のグローブ状になった卵管采に捕捉され卵管内に取り込まれる。 捕捉は、排卵される卵巣表面に卵管采が移動し、排卵とともに卵管内に吸い込む。あるいはお腹の中にはじき出された卵子を卵管采が移動して拾い上げる。 などの考えがあります。  卵管内に取り込まれた卵子は、卵管内腔に存在する繊毛の運動により子宮腔内に受精分割が進行しながらゆっくりと移送されていきます。
卵にたどり着くまでの精子

 膣の内部は雑菌混入防止のため、非常強い酸性を示しています。 膣内に射精された精子は、いち早く子宮頚管部と呼ばれる膣と子宮をつなぐ細い隙間に潜り込まなければ、死滅してしまいます。 子宮頚管部(膣側の入口-外子宮口 子宮を内子宮口)は、排卵日頃に頚管粘液という水様透明な液体で満たされます。この時、膣内に射精された精子は外子宮口より侵入し頚管粘液中を泳ぎながら、頚管粘液の作用を受けて運動がさらに活発化し、子宮腔内に入っていきます。(膣内で忙殺される精子達⇔CLICK) 
 子宮頚管を通過して子宮に入った精子は、卵管への入口である卵管口まで長い長い距離を一生懸命に泳いでいきます。 卵管内には卵管采側より子宮腔側に向かって卵を移動させる繊毛運動があり、精子はまさにこの繊毛運動に対して遡上し卵管膨大部で卵と出会うのです。 
受精
 精子と卵子が出会いどのくらいの時間で受精が完了するのかはっきりしませんが、体外受精の場合、元気のいい精子と卵子を一緒に培養(媒精)を開始してから約15〜17時間後に精子と卵子由来の核がそれぞれ顕微鏡下で観察されます(⇔CLICK)。やがて核は融合し1つとなります。受精完了です。体外受精や顕微授精の場合、2つの前核(雌雄前核)が観察されたものを受精と表現しています。 精子は卵子の透明帯に接着し、アクロシンと言う酵素をふきかけて透明帯を徐々に溶かしていきます。やがて1匹の精子が突入すると透明帯は他の精子を突入させないように変化します。 このように多くの精子の共同作業によってたった1匹の精子のみが受精できるのです。
受精卵の分割と移動
 受精卵は胚とも呼ばれ、分割を繰り返しながら、卵管内腔に存在する繊毛の運動により5〜6日かけて子宮腔内までゆっくりと移送されていきます。
着床
 子宮腔まで達した胚は子宮内膜に接着し潜り込んていきます。これを着床と言います。 この着床が成立しなかった場合、子宮内膜が剥がれてしまいます(月経です)。
精子の話

 何だ! 何だ! マトリックスて見たような感じ? これが精子君です。 
 詳しくは知らないけど、海外では(オーストリアのリンツで開催されている由緒あるデジタル芸術祭『アルス・エレクトロニカ・フェスティバル』)精子レースたるものがあってギャンブルとして成立しているらしい・・・。  自分の精子が見たい。彼女がどうしても見たい なんて要望があって、レンズを組み合わせた観察できるキットがHPで購入できる らしい・・・。
待ち合わせ 卵子編
 図を見ながらゆっくりと読んでください。 卵子は卵巣の卵胞内で育ちます。卵胞とは、卵胞液という液体で満たされた袋状になったものであり、その卵胞の内側でくもの巣に絡まるような状態で卵子が存在しています。 卵子の成熟と共に卵胞も大きくなり、約2センチになると風船が破れるようにお腹の中に卵子が放出されます(この風船が破れないと・・・・不妊原因のひとつとなっちゃいます)。 受診に行くと『ほら卵がこんな大きくなっていますよ』なんて、超音波画面で説明を受けると思いますが、画面上の丸いものが卵胞であり、その大きさより卵ちゃんの成熟の具合がわかるのです。
 お腹の中に放出された卵子は、グローブのような形をした卵管采と呼ばれるもので受取られます(ナイスキャッチ。 子宮内膜症などにみられるお腹の中の癒着がこの卵管采の動きをじゃましたら卵子を受取ることができません。 そしたら受精の場である卵管膨大部で精子と出会うこともできません。・・・これもまた不妊原因のひとつなのです)。 卵管采に受取られた卵は、卵管に入り卵管内腔の絨毛運動により卵管膨大部にまで運ばれます。
 卵管内腔の絨毛運動?(どうゆうこと?)??ですよね。 つまり、卵管内腔にはすごく小さな突起があって、その突起が卵管采から子宮腔側に向かって卵を動かしているのです。 まあ。川のような流のようなもの っと思って下さい(卵管が詰まっていれば、この川の流れも中断されますよね。・・・・ これも不妊の原因です)。
 ついに、ついに、精子との待ち合わせ場所に着きました。
 

 しかしね〜卵ちゃんは待ってくれないのですよね。精子君が来てても来てなくてもどんどん子宮腔へ行っちゃいます。   ほんま、わがままですよねぇ〜!!!! 
待ち合わせ 精子編
 
射精された膣内の数億匹の精子は、卵子をめがけて泳ぎだします(卵子が精子君を誘導する物質を分泌しているという説もありますお色気フェロモンか? 海に住むウニにおいて、卵子が分泌する精子を誘導する物質が発見されています)。
 精子君と卵ちゃんのご主人様が楽しくエ○チしてからようやく精子君は卵ちゃんと待合わせ場所に出かけるのです。ところが玄関に行ってびっくり、自分と想いを同じにする何億という恋敵が玄関先で待機してるではありませんか。

第一関門
 
射精された精子は膣内の強酸性環境に曝されます。精子は酸性に弱く、一刻も早く子宮腔内に入らなければ全滅してしまいます。 しかし、排卵日付近の数日だけが子宮頚管部を通過して子宮腔内に入ることができるのです。死を免れ卵子へと進んでいけるのです(精子数が少ないとか、運動が悪い場合、ごく少数の精子が子宮腔内に入れるだけで、そのほとんどが膣内で全滅しちゃいます。不妊の原因になりますよね)。
 出会える卵ちゃんを想いながらいきよいよく玄関を飛び出したものの、外は大雨.強酸性雨.雷ゴロゴロ。 さらには、子宮頚管部という狭いトンネルを通らなければ待ち合わせ場所には行けないのです。 また、そのトンネルには猛犬がいてね、ひと月に数日しか大人しい日がないのよね〜通してくれないのよね〜。 それに排卵日以外の日はトンネル自体が通行止めなので、家にも引き返せなくて あ〜悲しいかな全滅。
・第二関門
 そんなこんなでようやく子宮の中まで来ました(内子宮口)。
 う〜ん、恋敵はかなり減ったものの、前にも後ろにもまだたくさんの奴らが・・それも体力のありそうな奴ばかり。 ここからは目印も見えない広く荒れた海(サーフィンできる波はない 残念!)。 すごく遠い卵管の入口まであっちこっちに向かい、我よ先にとがむしゃらに泳ぎ出します。 あるものは溺れ、あるものは溺れた者に引っ張られ絶命していくのです。 また、お色気フェロモンを感じられない奴達はとんでもない方向に泳いで行き、帰らぬ精子君となります。・やっと着いたぜ卵管の入口に。 But.卵管の入口は2つあってね、これを知らない精子君は待つ卵ちゃんもいない卵管内に入り壮絶な競争を続けるのです。OH MY GOD!

 
顕微鏡下で観察すると精子は無秩序にあらゆる方向に向かい泳ぎだします。 卵子が精子を誘導する物質を分泌しているという説もありますが、おそらく卵子が待つ卵管だけに向かい一直線に泳いでいるのではないと思います(私:菊池が思っているだけで確証はありませんので・・)。
卵子の待つ卵管の入口にようやく到着

 見渡せば、う〜んかなり恋敵もへったなぁ〜。
・第三関門
 さ〜て、ここから卵管に入り突き進むだけ。 今度の関門は川。 激流を遡らなくては愛する卵ちゃんとの待ち合わせ場所に行けないのです。  泳ぐ力も尽き流し戻されてくる共にがんばってきた精子君よ『彼女は俺が幸せにするからな!』っと声をかけていた精子君が、流し戻された精子君と衝突して一緒に流されていく。 う〜ん!なんと過酷なのだ!男は強くなかったらあかんわ!・・・ どれだけ泳いできただろう。やっと見えてきたぜ 卵ちゃん。 
『がんばってきた自分を褒めてやりたい』っと酔いしれる精子君の目に映ったのが、もうすでにプロポーズしている奴ら・・・・・慌てて卵ちゃんに駆け寄り、最大の褒め言葉とすきすき光線を出しながらプロポーズ。 周りを見渡せば数えられるくらいに減ってしまった恋敵達。卵ちゃんの意味ありげな微笑みを受止め『こりゃ。いけるぜ!』っと思った瞬間、一番最後に到着した奴が卵ちゃんに飛びつき抱きしめやがった。
 な・ん・と・彼女も抱きしめ返しちゃって・・チュ! 合体! 
細胞学的には融合といいます。。

負けてもたぁ〜。

 
待ち合わせ卵編でお話したとおり、卵管内腔にはたくさんの繊毛があって、その繊毛運動は精子が向かう方向とは逆方向なのです。これらの難関で精子は厳しく選別され、数十匹程度しか卵子の周りに到着できません。一番最初に到達した者が受入れられるのではなく、運もあるでしょうが、卵ちゃんが選ぶのでしょうね。 辛いねぇ〜精子君

どうですか?
 命を懸けた過酷な旅をしてきた精子君に興味がわきましたか よろしい! ではもう少し詳しく精子君のこと説明します。
 ここからちょっと専門的になるのでコーヒーブレイクしながら

・何をしたいの精子君
 人は細胞の集まり(組織)により成立っています。個々細胞の特徴は違いますが、心臓や肝臓や皮膚も細胞の塊です。  染色体・・言葉は聞いたことありますよね。人の細胞には、同じものが各2本の23種類、計46本の常染色体と2本の性染色体、合計48本の染色体を持っています。性染色体にはXとY染色体があって、女性は2本ともX染色体、男性はXとY染色体を持っています。 もちろん精子君も細胞である以上染色体を持っていますが、23種類の常染色体が各1本とXあるいはYどちらかの性染色体1本合計24本の染色体、つまり半分の染色体しか持っていません。 卵ちゃんの場合は?・・わかりますよね。半分の染色体しか持っていないのです。ただ精子と違うのは、性染色体は全てXであるってこと。精子と卵子が受精しお互いの染色体を受継ぎ、23対46常染色体と2性染色体を有する一人前の細胞となります。そして赤ちゃんとなります。
この生まれてくる赤ちゃんが男の子なのか女の子なのかは受精する精子君次第なのです。

 過酷な旅をしてきたご褒美? そして、愛し合いひとつになることで染色体的に一人前の細胞になれるのです(お父さんとお母さんの半分半分の染色体を受け継ぐのです---私はお母さん似だからお母さんの染色体が多かった なんてことは絶対ありません----お父さんよりお母さんのほうが強いから----う〜ん あるのかもしれませんね? 笑)。
 染色体?簡単に言えば『遺伝情報の伝達』? もっと解りにくいですねぇ。『なになにをしなさい。こうしなさい』っと細胞レベルで命令すものであり、自分が死んでも同じ命令を出せるように全く同じ自分を造るのです。

・精子君の運動性について
 ひとの精子は上記のように頭部・頸部・体部・尾部からなる1つの細胞です。精子は卵子にたどり着くま尾部を動かせて泳ぎます。しかし、まっすぐ進む精子もあれば周囲をくるくると回っていたり、泳ぎの早い精子や遅い精子もあります。 卵子との受精ということを考えれば、真っ直ぐ泳がない精子やスピードの遅い精子では、たとえ体外受精を行って(経験上)も受精率は低いことが多いようです。 当クリニツクでは、精子の運動特性をFPスコアという基準で精子の運動特性を客観的に判定しております。 たとえ運動率が正常であってもFPスコアの低い症例に対しては顕微授精や臨床上安全性が確認されている薬剤で運動能を一時的に活発にさせる精液処理法(菊池宏:精子無力症における精子調整法の工夫.AIJINKAI Medical Journal 26:83-86,1994)を用いた体外受精を行います。

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