2003.12.11
「国立大学法人岩手大学職員就業規則(案)」等には、
大学の見識を問われる基本問題あり
岩手大学教職員組合
12月8日付けで人事制度関係小委員会より「国立大学法人岩手大学職員就業規則(案)」等が公表された。多忙の中で、数十回の会議を持って作成にあたられた小委員会委員に敬意を表したい。また、冒頭に基本的考え方が示されている点も、他の小委員会報告とは異なる点として高く評価する。ただし、今回の案には、私たちの提案がほとんど取り入れられていないばかりでなく、岩手大学の見識を問われるような問題も含まれていると思われるので、ここに私たちの考えを示し、小委員会に再考を求めたい。
1.職員の中に身分制が作られている
本体の就業規則に岩手大学で働く職員及び職種の全体が示されないままに、常勤職員と非常勤職員の就業規則が別々に作られることによって、両者の間に隔絶した線が引かれ、職員の間に身分制が作られている。
社会のどのサービス関連業種でも、パートタイムのような非常勤職員が増えており、その労働意欲をいかに引き出すかが競われ、その待遇の改善が取り組まれている。さらに、仕事の多様化が進む中で非常勤職員も一定の責任ある分野へ登用することによって、残業の削減やワークシェアリングを目指していくのが時代の趨勢でもある。
岩手大学においても、非常勤職員は現在も増えており、今後も増えていく可能性がある。常勤職員が特権的な意識を持つことなく、職員1人1人が対等平等に良い大学作りに取り組むためには、職員の中に非常勤職員を明確に位置づけることが不可欠である。労働基準法第2条が定めている労働契約における「労使対等」の原則は、常勤であっても、非常勤であっても、変わりはない。
すでに「組合からの提案」で述べたように、第2条は「本学の職員の区分及び職種は、次の各号に掲げるとおりである。」として、そこに非常勤職員も再任用職員などと共に、明確に規定し、大学が全体としてどのような職員及び職種の人たちによって成り立っているかを示すべきである。その上で、第3条を「適用範囲」として、そこに「非常勤職員の就業規則は別に定める」とすべきである。
図示すれば、「国立大学法人岩手大学職員就業規則」の下に「別に定める各種規則」がぶら下がり、それと別個に「非常勤職員就業規則」が付け足しのようにあるのが、現在の案である。しかし、正しくは、「国立大学法人岩手大学職員就業規則」の次に「非常勤職員就業規則」が続いて、その下に「別に定める各種規則」が吊り下がるべきである。
2.「評価」に対する岩手大学の見識が社会的に問われることは必至
現在、「評価」は社会のあらゆる分野で論じされているキーワードである。国立大学の法人化自体が、評価と一体のものである。教育現場でも評価が様々に問題とされ、民間企業の間では、すでにかなり以前から成果主義の導入と一体化した評価が取り組まれている。その波は国家公務員にも及んで、公務員制度改革大綱(平成13年12月25日閣議決定)となって、現在進行中である。
このことからも、法人化後の岩手大学が評価制度を積極的に導入し、その適正な運用を図ることは必要不可欠なことである。問題は、何を目的として「評価」を行うのかという点である。その点で、就業規則(案)に登場した「評価」は、社会から岩手大学の見識を問われかねないものである。
今日、社会で取り組まれている「評価」は、その実態はともかくとして、すべからく評価対象者の能力や意欲を引き出すことを目的にしている。大学評価・学位授与機構による大学評価も「大学等の教育研究水準の向上に資するため」と最初に述べ、公務員制度改革大綱も、「職員一人一人の主体的な能力開発や業務遂行を促し、人的資源の最大活用と組織のパフォーマンスの向上を図る」ためであると述べている。
それに対して、岩手大学の就業規則(案)は、退職勧奨のために評価を行うとしている。要するに、「肩たたき」のために評価するというのである。海妻学長の時代から岩手大学執行部は、それを民間の経営手法を取り入れる積極的な取り組みと考えている節がある。しかし、平成不況下で民間企業が中高年社員に対してなりふり構わず行ったリストラを、これから大学も金がないからと真似をして、果たして社会は評価してくれるだろうか。
公務員たたきを売り物にしている一部のマスコミは、注目してくれるかもしれないが、本当に大学に期待している一般の国民はどう見るのであろうか。「駄目な人間を見つけ出して懲罰を与える、これが評価である」という懲罰主義的な教育観に、むしろ幻滅を感じるのではないか。
さらに、実際の評価の準備はできているのであろうか。公務員制度改革大綱は「評価の公正性・納得性を確保するため、複数の評価者による評価、評価者訓練、評価のフィードバック、職員の苦情に適切に対応する仕組みの整備などを、各府省の実情を踏まえつつ行う」と述べると共に、「評価の試行を十分に行い、その試行結果を踏まえつつ具体的な制度設計を行う。」としている。
評価は、運用しだいで教職員の意欲を引き出すこともできれば、意欲を失わせることにもなる。日本の企業が安易に導入した成果主義・評価制度の多くが失敗し、混乱を招いたことは常識である(高橋俊介『成果主義』東洋経済新報社)。そこからどのような教訓を引き出して、どのような仕組みを考案していくか、この課題から逃げることはできないが、慎重に進めることは重要である。
3.変える勇気がほしい
岩手大学の執行部は、一旦決まってしまうと、誰も変えようと言い出さない体質が有りはしないか。事務機構の一元化も、他の大学が環境の変化に合わせて再検討や凍結を行っているにもかかわらず、唯ひたすら前へ進むだけである。私たちが主催した学術講演会で小林正彦先生は、よい大学を作るためには、試行錯誤することが大切であり、改めることをためらってはいけないと述べておられる。「次々に改めて良い方向へ良い方向へともっていけば、より進化した良い大学ができていくのです。」と。大学をよくするために、責任ある立場の人が変えることに臆病であってはならないはずである。
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