特別記事 「横浜の男」


トラッキーだよ

投稿者 中津川 大韓(36歳 団体職員)

プロ野球が楽しい。こんなに楽しいのはいつ以来だろう。
自他ともに認める虎キチの私。毎年Bクラスだったので
皆には内緒にしていたが、今年は違う。
あんまり嬉しいので朝の挨拶で「私は生粋の虎党です」と告白したら
「嘘つけ、にわか」と罵声を浴びた。
こうなったら甲子園で応援してる写真を連中に見せつけてやる。

という訳で甲子園である。
1人じゃ心細いので野球に興味のない男(仮名:犬山)も
連れてきた。
しかし阪神は本当に強い。今日も巨人に圧勝だ。
写真も撮ったし、満足満足。

その後ホテルのある梅田へ戻り、祝杯を挙げた。
「今年こそ阪神優勝やデー」「そうやそうや」
店を出ると11時、そろそろ帰るか。
そこへ客引きの若い男が現れた。
『どうですか、この後』
「いや、もう帰るよ」
『安くしますから』
「今幾ら?」
『60分6千円のところを3千5百円にしますよ』
「そんなの安くないよ、うちらの地元じゃ当たり前だよ」
『分かりました、3千4百円にしましょう』
「それじゃあんまり変わらないよ、大体胡散臭いんだよ。
 犬ちゃん帰ろう」
『今日はナースデーですよ』
「・・・君、年はいくつだ」
『えっ、18です。いろいろ苦労してるんですよ』
「そうか、その年で頑張ってるんだな。
 分かった、君を信用して1時間だけ行こう」

失敗だった。
確かに基本料金は3千4百円だったが、ナースの飲み代は別だった。
おまけに私の横のナースは大阪弁がきつすぎて、
何を言ってるかわからない。
なのに延長、しかも指名で。
・・・結局1人1万円かかってしまった。
なんだか騙された気分だ。

このまま帰れないのは2人とも同じだった。
と言っても1時前、もう大概の店は閉まってる。
しかたなくプラプラしてたらおっさんに声をかけられた。
『お兄さん、遊んでいかない』
「もう帰るから、今ひどい目にあったばかりなんだよ」
『安くしちゃうよ』
「幾らなの?」
『60分1万円のところを8千円にするよ』
「でもババアなんでしょ、大体胡散臭いんだよ。
 犬ちゃん帰ろう」
『若い娘いますよ、22,3のが。たっぷりとご奉仕するよ』
[嘘だよ中やん、別の所行こう]
「・・・おじさん、出身は何処?」
『俺、実は横浜なんだよ』
「なんだ、地元じゃない。おじさん誠実そうだし、何より同郷だからな。
 よし、おじさんを信用して行くか」

出てきたのはババアだった。
そのババアがなれなれしくひざの上に乗り
『リラックスしてね』
と抱きついてきた。
それにしても柔らかい。
熟女に硬い所無しというのは本当だったのか。
一瞬うっとりしたが、やっぱり駄目だ。とても楽しめない。
1人盛り上がるババアを置いて店を出ると、犬山が待っていた。

何か言いたそうだったが、軽くこちらを見ただけだった。
きっと楽しかったのだろう、ずるい奴だ。
『辛い思い出を共有できない奴は親友とは呼べない』
我ながら名言である。


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