
リングができるまでオーダーの一点モノてはなく、一般に売られている量産のジュエリーの場合も機械化されているのはほんの一部で、全工程にわたって職人の熟練技術を必要とします。 ここでは量産の基本となる鋳造(キャスティング)の工程を大まかに順を追ってご紹介します。 お忙しい中、お仕事の手を止めて協力してくださった皆さん、ありがとうございました。 |
主にシルバー素材から職人の手作業で元型となる原型が作られます。後にK18やPTに鋳造するので、SVと対象素材の収縮率を考慮し、製品上がりの時にピッタリサイズ(留める石のサイズやリングそのもののサイズ)になるよう計算しながら作られます。
他に金属からでは表現しきれない細かなデザインや模様などがある場合は、先にワックスで原型をつくりSVに鋳造し、それを磨き、さらに加工して原型とする場合もあります。
ワックス原型2種
上のリングの枠には唐草調の模様が浮き彫りになっています。中央にポッカリ穴が空いているところに石を留めます。
デザイナーの意向をデザイン画という二次元の世界から読みとり、三次元の世界で表現していく原型制作の作業には、熟練技術が必要なのは言うまでもなく、職人さんの感性がモノを言います。私も沢山の原型を多くの原型職人さん達に依頼し、仕上がりを観てきましたが、デザイン画には描かれていない微妙なニュアンスをくみ取ったパーフェクトな仕上がりに「そうそう、そうなのよぉー!」と感動させて頂いたこと多々あります。反対に言葉を沢山ならべ、数字を並べても「なんか違う・・・」ということも無かった訳じゃないので、私の伝達能力不足だけでなく相性ってーのもあるみたい。
仕上がったSV原型を雄型として、シリコンゴムで雌型を作ります。まず、分厚いアルミ製のたばこの箱よりもうちょっと厚みのある枠のなかに粘土のような柔らかさのシルコンゴムを敷きます。SV原型をのせ、またシリコンゴムで覆います。型抜きおむすびと同じ作業ですね。その後加熱&加圧でシリコンゴムが硬くなり、弾性が出れば第一段階終了です。
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四角いゴムの固まりとなったところで、メスを水平方向にギザギザに入れ、中の原型(おむすびの具だね)がパックリと抜き取れるように切り開いていきます。真っ二つになったゴム型から原型を取り出せば中央に原型の形に空間が残ります。このメスを入れる作業も原型の形状(デザイン)から慎重に方向などを判断して、後に続く工程も考慮しながら進めなくてはなりません。
次はゴム型から製品の形のワックスを複製する作業です。ワックスポットと呼ばれる機械にゴム型をあてて熔けたワックスを注入します。ワックスが十分冷え固まったらゴム型を開いて取り出します。これを繰り返せば同じ製品のワックスがいくつでも作れるというわけ。一見簡単そうな作業で、事実観ていてもそう思えてしまうのですが、問題はワックスを取り出す瞬間にあります。たとえば、メレダイヤが沢山爪留めされているようなリングをがあったとします。当然爪はハリネズミの背の状態でツンツンになっています。勢いでワックスを取り出し爪の一部が折れたのに気づかなかったらどうなるでしょう。仕上げの段階で、さあ、これからダイヤを留めようとふと見たら・・・爪がない!なんてことになり、それまでの苦労が水の泡となってしまうのです。
私の経験したことをちょっと書き加えますと・・・
製品があがって検品していると、なんだか妙だ、ありゃ?ちと歪んでないかぁ???眼の錯覚かなぁ???うむ、きっとこれはワックス取り出すときに力入りすぎちゃったんだろうなぁ・・・・あちゃー、おしいなぁー、気のせい程度だけと、駄目よね、直せるかなぁ?・・・・。とまあ胸が痛む思いで返品したこともありました。
「ワックスのツリー」という言葉からイメージできる人は少ないと思います。いづれ鋳造の工場も訪問して写真追加できたらと考えておりますので、それまでは私のつたない説明文でご勘弁を。えと、要するに、ゴム型から取り出したワックスを枝に見立てて幹となる支柱に接着していきます。最後には一本のもみの木みたいで、まさにツリーとなります。同じデザインのリングを30本とか作るときなどは同じデザインのワックスが鈴なり状態で付くことになります。
出来上がったワックスツリーを円筒形のステンレスリングに入れて固定し、そこに石膏を流し込みます。そして1日おいて自然乾燥させた後この石膏の固まりを電気炉に入れ、焼成します。すると中のワックスが熔けて流れ出し、焼成し終えるとそこにはツリーの形に空間が残されています。
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いよいよ金やプラチナの登場です。ツリー型の空洞に高温で溶解した貴金属を注ぎ込み鋳造します。鋳造には吸引鋳造、遠心鋳造、加圧鋳造などの方法がありますが、すべて機械制御とはいえ、これすらも技術者の細心の注意や経験による微調整が必要です。鋳造のあがり具合によってはワックスどりからやり直しが必要となったり、仕上げの段階になってスが出て必要以上に手が掛かってしまう結果にも成りうるのです。「季節の変わり目はスが出やすくて・・・。」とは鋳造に携わる職人さんがよく言う台詞ですし、実際歩留まりも低くくなります。
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鋳造が終わりましたらしばらく型を冷まし、水中で焼けた石膏を崩します。するとそこには貴金属のツリーが姿が・・・・しかし、その表面は鋳肌。まるでテラコッタのよーなザラザラした地肌なのです。
鋳造上がりのリング達
左にジャラジャラあるのがPTリング
中央の2本がK18リング
右の5本が仕上げ後のものです。
ここまで読み進んでくださった皆さん、ありがとうございます。つたない解説では想像力の限りを尽くしても???な部分もあったのではないでしょうか。この先は過日仕上げの工場を訪ねていくつかのシーンを撮影させていただいたものを添えますので、後半も引き続きお読みください。
小さくて見えづらいけど、フックのような金具に鋳造あがりのリングが下がっています。これから電解液に浸けるところです。
電解って何?
電気分解によってザラザラした表面を一皮むくことです。
磨きの工具が届かない狭いところや細かな部分は、電解や次に出てくるバレル研磨でしかつやを出せません。
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バレル研磨とは?
下磨きにはもう一つ、バレル研磨があります。
ドラムの中に研磨につかう球状の鋼材やチップと一緒に磨きたいジュエリーを入れます。ドラムの下に永久磁石の円盤があって、モーターで回転し、ドラム内はぐるぐるかき回されます。そう、まるでドラム式洗濯機ですな。ジュエリーはその中で研磨剤と衝突しあって磨かれていきます。
磨き
お風呂に浸かり、マッサージも受けたところで今度は人間の手で更に磨き上げられます。
素材によって、磨いてからパーツを組み立てるか、組み立ててから磨くか分かれますが、ここでは磨きから解説します。
磨きも素材によって手順が異なります。例えば、PTの場合は粘りのある金属なのでヤスリやヘラを当てて加工硬化を起こしますが、K18の場合はその必要がありません。
次の写真はハンドモーターを使ってリングを磨いているところです。ハンドモーターの先端部は数種類あって、磨く部分や磨き具合に応じて何度も付け替えます。歯科技工士さんの仕事に似てますね。
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ロウ付け
ほのかに青いバーナーの炎が見えますか?
ロウ付けとは、複数の金属パーツを組み立てるとき、バーナーの炎で熱し、゜ロウ゛をとかして金属同士を接合します。K18には金ロウ、PTにはPTロウを使い、それぞれ本体より低い融点で融け、接合剤の役目を果たします。
ガスバーナーや酸素バーナー使用の溶接で、ロウ付け後は表面に酸化膜ができますから、希硫酸洗いが必要です。サイズ直しやちょっとしたロウ付けでは酸化防止剤で保護することもあります。
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中心にモーターがあって、円盤状のフエルトや柔らかい布や紙を取り付け、高速回転させます。
この円盤に青粉、白粉と呼ばれる研磨剤をつけ、磨くジュエリーを押し当て磨きます。円盤と研磨剤は磨く部分や状態によって使い分けます。
一瞬のうちに貴金属の輝きが現れ、ちょっとした感動が味わえます。
ジュエリーの仕上げの仕事をされている職人さんはその指を見ればすぐわかります。 何故かというと・・・皆さん爪がピカピカに磨かれてしまっているからです。その上爪の間に青粉が残っていたら、もう間違いなし。
さて、いよいよ最終段階に近づいてきました。そう、宝石を留めるのです。
石の留め方には数種類ありますが、この写真はシンプルな立爪によるものです。彫金師による本格的な彫り留めは修行を積んだ職人の技がひかり、工場で見学させて頂くたびに感動したものです。次回は是非彫金工場を訪ねて皆さんにも感動を味わっていただける写真を撮らせていただけたらいいなぁ・・・と思ってます。
タンザナイトを乗せます
爪を押さえています
ダイヤを留めています
製品の内側には、K18とかPT900など地金の種類を示す刻印や、ブランドマークなどの刻印が打ち込まれています。原型にすでに打ち込んであることもありますが、写真は製品完成時に一点ずつ打刻していることろです。
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またまたバフ研磨です。何故かって? 写真で察しが付くかと思いますが、石を留めたり打刻したりで細かな傷がついたり、爪そのものの角が鋭くなっていたりするからです。
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写真は超音波洗浄機の洗浄液に、リングをつるしたフックごと浸けるところです。
眼鏡店や宝石店にある洗浄機の大型判機械です。
超音波洗浄機に洗浄するものを入れるときのヒントをちょっと
中央の最も波打っているあたりの水面近くが最も効くみたい。あと、決して底に沈めてはいけませんよ。硬い底と洗浄するものとが細かな振動でぶつかり合いますので、返って傷ついたり、石がついているジュエリーだったら石留めがゆるむ原因にもなることも。
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もうおわかりですね、右が鋳造あがりで左がタンザナイトの留められたK18リング完成品です。
これが作業台の光景です。
とても細かな作業であることは左手に見えるヤットコの種類の多さからも想像できます。ジュエリーはかくして一つ一つが手作りに近い工程を経て市場に出されていきます。職人さんたちは我が子をおくりだす気持ちで見送っているのかもしれません。
今回協力してくださった テラノくん(バンダナ姿)、ヒデキくん(ランニング姿)、そのほかの皆さんありがとうございました。