========================================食品工場長の仕事とは===

   第十回 調理、加熱、冷却工程の管理について


美味しさと安全性のバランスがとれていることが大切です

 調理(配合)、加熱、冷却工程は各工程を分けて考えることはできません。調

理して直ぐに加熱し、そして冷却するこの一連の流れが大切なのです。ソーセ

ージ、かまぼこなどは、調理しケーシング等に直ぐに充填して、停滞時間なしに

加熱工程へ進んだ場合と、一晩保管後に加熱した場合では最終商品の食感は

異なってきます。最終商品の保存性も各工程一連の流れの中の温度管理、二

次汚染などで大きく変化してきます。すなわち、この調理、加熱、冷却の工程は

分けては考えられないのです。図1のように美味しさと安全性は両天秤の様に

考えられます。例えば、玉子焼きを考えた場合、美味しさを主体に考えて加熱温

度時間を少なくし、玉子焼きの断面から卵がとろりと流れるような状態にすれば

素晴らしく美味しい卵焼きを焼くことができます。しかし保存性、安全性を考えると

かなり危険な状態になってしまいます。現状では保存性を高めることを主体に考

えて殺菌剤を多く配合したり、phを下げたりすると殺菌剤の味がしたり蛋白が凝

固して美味しさを失うことになります。このことから賞味期間まで十分に安全性が

保つことが出来て、美味しい物を作り上げる各工程のバランスが大切になります。

図2の中の調理、加熱、冷却工程のハードルを上げてみました。各工程のハード

ルを設定し、間違っても加熱工程で全ての菌を殺すからあとの管理は行わないで

いいなどとは考えないことです。各工程のハードルが設定通りであるか毎日の帳

票で監視し、中間品の検査を繰り返すことが大切なのです。

 

 

 

調理(配合)では、原料、設備全て適正に準備します。

 配合表の通りに調理するのがこの工程です。例えば、ポテトサラダであれば、ゆ

でたジャガイモ80%にマヨネーズ18%、添加物2%と配合表通りに調理する工程

です。このように書くと簡単に思われますが、調理のちょっとしたことで製品は変わっ

てきます。畜肉ソーセージ、かまぼこなどタンパク質の変化を配合工程で引き出して

商品の特徴にしている製品の場合は、図3のように、物理的に原料を撹拌しますの

で、温度が上がってしまいます。この原料の温度の上昇を低く抑えてなおかつ充分

に撹拌することが出来れば、本来目指すべき商品の触感のいい商品を造ることが

出来ます。具体的には、原料肉、添加物等を充分に冷やし込んで置く、カッター等

の撹拌設備を充分に冷やしておく、通常は氷をカッターに入れて冷やしておきます。

カッターの刃を研いで置き、刃とボールの隙間を整備しておく事など、配合表には

現れてこない、固有技術が最終商品に生きてきます。単純に混ぜるだけでは無い

のです。他社の工場と差別化するためには、設備にこだわることも必要です。よく

切れる刃を使用して製造した商品と、切れ味の悪い刃を使用した商品は別物にな

ってしまいます。ソーセージの配合後の原料肉をケーシングに、充填するために充

填機まで肉を送る必要があります。機械化する前は、充填機まで手で原料肉を運び、

充填していました。そうすることで歯ごたえの有るソーセージができあがっていました。

現代では作業性を上げるために機械化し手で充填していた肉をポンプで送るようにな

りました。図4のようにギアポンプ、ロータリーポンプ、スネークポンプ、ピストンポンプ

とこの順番で、出来上がる最終商品の品質は良くなります。配合工程から充填工程

に送るポンプだけでこれだけこだわれます。特に食品工場の調理設備については、

価格だけでなく、どうすれば最終商品の付加価値が高くなるかを常に考えて工夫する

必要があります。

 調理工程の原料の準備について考えてみます。ソーセージ調理の場合は原料およ

び設備の温度をいかに冷やしておくかが大切な点でした。玉子焼きの調理を考えて

みます。図5の様に事前に出汁をつくりミキシングタンクで卵と混合しますが、ミキシ

ングタンクで調理する前の原料の菌数を下げておくことが大切です。出汁を調理する

場合は、醤油、水、砂糖等を80℃×15分程度加熱調理を実施します。この事前に

加熱することで菌数を下げることが出来るので、その後の玉子焼きの加熱温度時間

を少なくすることができ、美味しさを保つことが可能になります。同じように玉子焼きに

使用する卵についても、菌数の少ない物を使用することが大切になります。

 

 

 

 

保存性を上げて、美味しくする大切な工程です。

 加熱する目的は、大きく二つあります。ひとつは細菌を殺して保存性を上げる事、二

つめはタンパク質を熱変成させて食品を食べられるようにする事です。保存性を上げる

ための加熱は、加熱温度と加熱時間のかけ算になります。蒸す、焼く等の加熱の手段

とは関係が無く、単純に加熱温度と加熱時間で決まります。タンパク質を変性させるた

めの加熱は、加熱しすぎると堅くしまった感じになり、食べたときに美味しくなくなってし

まいます。図6の斜線の部分をいかに設計通りの加熱温度×時間で加熱できるかが重

要な点になります。殺菌のための加熱したあとに、細菌が増殖する温度帯「10℃〜60℃」

の温度帯をいかに早く通り過ぎるかが、次に大切な点になります。例えば家庭でお弁当を

作って、炊きたてのご飯をお弁当箱に詰めます。夏の暑い日に、そのまま出かけてしまう

と、お弁当は、細菌の繁殖で弁当が腐ってしまい酸っぱくなってしまいます。ご飯をお弁当

箱に詰めて、扇風機で直ぐに熱を取って、蓄冷材を入れて10℃以下にして出かければ、

添加物を使わなくてもお昼ご飯には充分食べることが出来ます。この危険な温度帯を素早

く通り過ぎるように製品を冷やす必要があります。冷たい水のシャワーをかける、冷たいお

風呂に製品をつける、真空冷却装置で冷やす等の方法があります。一度殺菌した製品を

冷却中に細菌で汚染させない事が重要になります。殺菌不足が出たと言って熱量を増や

すのでは無く、図7の様に加熱・冷却工程の流量を増やすなどの工夫で加熱温度冷却温

度のバラツキを小さくすることで殺菌温度を低く抑えることができます。単に水に付けるの

では無く、潜熱のある氷水につければより早く製品を冷やすことが出来るのです。殺菌温

度、加熱温度を低く抑えることが出来れば、美味しい商品が作れることになります。

 

 

 

 

校正、検査が重要になります。

 加熱温度が1℃高ければ製品が堅く仕上がってしまいます。そんな微妙な物では無いと

思っている方も多いと思いますが、蛋白凝固は非常に微妙で中心温度がたった1℃異なる

と最終商品の美味しさは違ってきます。同じように最終製品の保存性も中心温度が1℃違っ

てくると異なってきます。この微妙な温度を正しく測定するために温度計の校正が必要です。

現場で使用している中心温度計の校正を毎日行っている工場は少ないようです。校正は、

毎日作業開始前に標準温度計とその測定する温度付近で校正することが必要です。つまり

冷却温度を測定する温度計は10℃の水で校正し、加熱中心温度を測定する場合は、70℃

くらいのお湯で校正する必要があります。工場内で使用している温度計は、毎日使用する

前に校正を行うことが必要になります。市場から腐敗、異臭のクレームが出て加熱工程の

ハードルを高くして安全性を確保する場合がよく工場ではあります。製品の設計段階の殺

菌熱量より多く熱をかけてしまいますから、当然最終商品は設計時より蛋白凝固が進み、

堅くなってしまいます。安全性を追い求めるときに安易にハードルを上げるのでは無くハー

ドルの高さが適切にバラツキが無いか、各工程の停滞時間が無いかなど、工程管理を進

めるときに初心にもどり、各工程のハードルが設定通りであるか毎日の帳票で監視し、中

間品の検査を繰り返すことが大切なのです。

 

 

私のお話が皆さんの工場管理を、耕し続けるヒントになれば幸いです。

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