クリプト同定法<入門編>



 クリプトコリネはテープ系、細葉(狭葉)系、丸葉などさまざまな草姿を持っていながら、類似した種が非常に多く、育成環境で草姿が大幅に変わるため判定がもっとも難しい水草の一つです。その為、入荷時に付けられている名前は、一部の一般種やプロによる採集種を除きほとんどが間違っていると言っても過言では御座いません。そこで当ページではこれら難解なクリプトコリネの同定をするにあたって、何を基準とすれば良いかを説明したいと思います。最終的には同定のチャートを作れればなぁと思っています。

1.1 草姿での判断

 クリプトコリネがなぜこんなにも同定が難しいのかというと、草姿があまりにも似ているからということが上げられます。場合によっては花が違うだけで草姿は全く同じという事も十分にありえます。それ故、残念ながら草姿での判断はあまりというよりほとんどあてにはなりませんが、多少の絞り込みは可能なので草姿で判定するにあたって基準となるものについて説明していきます。

・三系列の判断
 クリプトコリネは大別して、バランサエ、アルビダ、アポノゲティフォリアを代表とするテープ系、ベケッティー、キリアータ、アフィニスを代表とする細葉(狭葉)系、スワイテシー、コルダータ、ロンギカウダを代表とする丸葉系の三系列に分かれます。が、その基準もあいまいで、例えばウステリアーナは丸葉系であったり、細葉系であったりします(地域変異かどうか不明)。これら三系列のだいたいの草姿は以下の通りです。

テープ系バランサエ、クリスパチュラ、トンキネンシス、アルビダ、コスタータ、スピラリス、レトロスピラリス、アポノゲティフォリア、コンソブリナ、クルダシアナ
細葉(狭葉)系ベケッティー、ペッチー、ウエンティー、ウンデュラータ、ウィリシー、ルーケンス、パルバ、ネビリー、キリアータ、アフィニス、ヌーリー、ブローサ、ヒュードロイ、キー、ウステリアーナ
丸葉系コルダータ、ブラッシー、シアメンシス、グラボウスキー、グリフィシー、ミニマ、ディデリキ、エリプチカ、ヤコブセニー、ロンギカウダ、ヨホレンシス、カウダータ、フェルギネア、フスカ、プルプレア、シュルジー、ズッカリー、アウリクラータ、パリジネルビア、ゾナータ、アミコルム、エディサエ、ストリオラータ、リングア、ベルステギー、デウィティー、ポンテデリフォリア、モエルマニー、スクリリス、ビローサ、ピグマエア、スワイテシー、ボグネリ、アルバ


・葉っぱの各部の名称と現れる特徴
 草姿で判断するとき重要なチェックポイント各所の名称を覚えておくといいでしょう。

・草丈
 
 草体の大きさで、あまり参考にはならない。ミニマにしては大きいとかその程度。
・葉長、葉柄、葉幅
 葉長、葉柄、葉幅の比はクリプト同定に大いに役立つ。
光量などの育成環境によって比は変わってしまうが、十分参考にはなるので調べておくと良い。例えば、ディデリキは葉柄が短く、コルダータは葉柄が長い。ヤコブセニーは葉幅が狭く、グラボウスキーは葉幅が広い。

 写真上はインド産クリプトコリネ.sp。典型的なテープ系クリプト。コンソブリナの名で入ってきたが、クリスパチュラ系の一種と思われる。
 写真下左はフィリピン産クリプトコリネ・ウステリアーナ。葉柄が短い。
 写真下右は出所不明のクリプトコリネ.sp。スワイテシーの名で入ってきた。葉柄は短く丸葉の中では葉幅もかなり狭い方。グリフィシーと思われる。
・葉縁
  
 細かい波打ちや緩やかな浪打ちなどの特徴が出る。光量や株の大きさで特徴が出たりでなかったりするので注意。スワイテシー、ボグネリ、ロンギカウダは細かく、コロナータは緩やかに波打つ。

 写真左はマレーシア産クリプトコリネ・ヨホレンシス。緩やかに波打っている。
 写真中はマレーシア産クリプトコリネ・ロンギカウダ。細かく波打っている。
 写真右はそのロンギカウダの葉縁を拡大したもの。
・葉脈
 
 スワイテシーやペッチーなど葉脈が浮き出る種の判定に役立つ。シアメンシス"ロザエネルビス"は葉脈が白くなる。

 写真左はスリランカ産クリプトコリネ・スワイテシー。不鮮明であるがわずかに葉脈が浮き出ている。また、葉縁が細かく波打っている。
 写真右はスリランカ産クリプトコリネ・ボグネリ。中央の葉脈のみ太く浮き出るのがボグネリの特徴である。これも葉縁が細かく波打っている。
・耳
 
 耳の大きさは有力な判定材料であるので注目したい。ロンギカウダやポンテデリフォリアには耳があり、カウダータは特に大きい。ブラッシーやコルダータは小さく、リングアにはない。

 写真左はマレーシア産クリプトコリネ.sp。ヨホレンシスの名で入ってきたもの。耳がある。
 写真右はマレーシア産クリプトコリネ・ヤコブセニー。耳が全くない。
・葉先
 葉先が尖るかどうかも重要な判定材料である。例えば、ブラッシーはあまり尖らず、コルダータは尖る。

 写真上はマレーシア産クリプトコリネ.sp。ワイルド便のヌーリーに一株だけ混じっていたもの。葉先が鋭く尖っている。
 写真下はマレーシア産クリプトコリネ・グラボウスキー。葉先が丸い。葉幅自体太く、非常に丸い葉をしている。


・葉っぱに現れる特徴
 葉っぱ表裏にはいくつかの特徴があります。どういう種には何が出るかを覚えておくと同定の基準になります。
・凹凸
 
 クリプトには葉表に凹凸を持つタイプが多数存在する。これも種特有のものなので、凹凸の入る種は覚えておくと良い。凹凸の形もさまざまで、例えばブラッシーなどは不規則な凹凸が入り、コロナータやウステリアーナは規則的で丸い凹凸を持つ。カウダータなどは葉脈が浮き出るようにへこむ。規則的に入った凹凸はたいへん美しい。

 写真左はフィリピン産クリプトコリネ・コロナータ。規則的で美しい凹凸を持つ。このような凹凸を見てクリプトにとりつかれた人も多いのではなかろうか。
 写真右はタクアパ産クリプトコリネ・ゾナータ。この種は不規則な凹凸を持つが、写真の葉にはまだ凹凸が現われていない。
・斑
 
 
 
 クリプトには凹凸と同様に綺麗な縞模様が現われる種が多数存在する。これもまた種特有のもので、このような模様を斑(フ)といい、このような模様が入ることを斑が入るという。ストリオラータやシュルジー、ヌーリーは特に美しい斑を持っており、この模様につられてクリプトを始めた人も少なくないだろう。ちなみに葉の縁の方へ色がグラデーションしているのは、成長過程で葉色が変わったものであり、斑ではない(右下図参照)。

 写真上左はマレーシア産クリプトコリネ・ヌーリー。深緑の葉色に黒い斑が入って美しい。地域変異で赤いスポットが入る種もある。
 写真上右はマレーシア産クリプトコリネ・プルプレア。緑の葉色に規則的にオレンジの斑が入っている。
 写真中二枚はマレーシア産クリプトコリネ・シュルジー。葉色はやや違うが、深緑の斑が入っている。注目すべきは中央の茶色い葉脈にも斑が入って点線になって見える点である。写真不鮮明ですみません。ちなみに同じ株。
・艶
 
 クリプト表面は大別して艶ありと艶なしがある。これは小さな株の状態でも特徴が出やすいが、環境によって左右される面もある。艶が出るものが大半だが、ロンギカウダ、ヨホレンシス、スワイテシー、ボグネリなどは艶がなく、ポンテデリフォリアはとても艶々している。

 写真左はマレーシア産クリプトコリネ.sp。とても綺麗な艶がある。
 写真右はマレーシア産クリプトコリネ・ヨホレンシス。艶がない。
・葉色
 クリプト草姿の特徴の中で最も信用がならないのがこの葉色。葉色は地域変異もさる事ながら、育成環境でも容易に変わるため、まったく判断がつかない。茶色のロンギカウダもあるぐらいなので、ほとんどあてにしない方がいいだろう。

 写真はスリランカ産クリプトコリネ.sp"レゴリ"。葉色では判断がつかない典型的な例。同じ株から茶色と緑色の葉が出ている。
・葉裏色
 葉裏の色も大別して赤紫と葉色そのままの2通りに分かれる。葉幅が細くなるほど葉裏が赤くなる種は少なくなり、太くなると多くなるようだ。葉裏色に関してはあまり情報もなく、赤か緑かの2通りしかないので、種判定の決め手にはならない。

 写真はタイ産クリプトコリネ・ブラッシー。葉裏が赤紫に色づいている。


1.2 花で判断
 
 クリプトコリネの同定において、もっともポピュラーに行なわれているのが花での判断です。クリプトコリネは草姿が似ていることはあっても、花で区別つかないことはあまりないので、一般的には花を咲かせてその花とおしべ、めしべの形状と数や弁の形状から同定する方法がとられています。しかしながら花の色は光量によって簡単に変わってしまうなどの理由からこれでも判断できない場合も多く、その為に何度も花を咲かせて統計をとるようなことまで行わなければならないときもあります。が、基本的にはだいたい信用できるので、もしこの方法で同定を行なうならば、花やその中身の写真かスケッチが多数掲載された図鑑を購入しましょう。ただしクリプトコリネのこういった部分まで掲載された文献は非常に少なく、もしショップで見かけたら、例え貴重なクリプトが売っていたとしても文献を選んだ方が良いです。ちなみに私は現在文献収集中であり、なにか有力な情報が御座いましたらぜひメール下さい。後は花を咲かせる技術ですが、これも結構難しくて時間もかかるしうまくいかない場合も多いです。

1.3 染色体数で判断

 けっしてこれだけで種は同定できませんが、こればかりは正確なので、ある程度の絞込みが出来ます。これを行なうには、染色体数が詳しく掲載された文献と顕微鏡等の機材が必須となります。染色体数の調べ方は知らないので、調べたら今度掲載しましょう。

1.4 DNAで判断

 ここまで来ると素人では出来ません。それに統計をとるために多数(50株とか)手に入れなければならないため、とても簡単には出来ません。出来たら楽なんですけどね。

1.5 情報から判断

 最後に草自体から判断するのではなく、それについていた情報から絞り込む方法です。これは直接特定の種に同定できるわけではありませんが、いくつかの候補を選ぶ程度はできますので、購入時に入荷ルートを確認しておくと良いでしょう。後はショップでの情報収集あるのみです。絞り込める内容は、ワイルドかファームか、ファームならどこのものか、ワイルドならプライベート便かシッパー便か、ファームがわかればそこがリリースしているものから判断できますし、ワイルドなら産地を判断できます。産地は以外と重要で、同じような花を咲かせながら産地が違うということも大いにあるので、購入時に最低限産地だけは絞っておきましょう。



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