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【エッセイ】  広瀬勇吉

 がんとたたかう森の妖精たち

 政人と蓼科山横岳を登山。途中、残雪の急な登り坂を終えて頂上は、2480m。緑葉で包まれた自然の森林を歩き、縞枯山を経て下り坂に入る。
 目的地麦草峠まで約5時間、バス停に着くもバスの待ち時間がかなりあった。
 ふと、蓼科連峰をながめながら想像した。

 森林の中に輝く樹齢何年のものか、この木に恐ろしい「ガン」という怪しげなものが住んでいることが目に入った。
 「このままだと、樹木全体が侵され枯れてしまうぞ」
 この木を何とかしないと、他にも影響が出ると。
 「早速、森に住む妖精どもを集めよう」
 「オーイ、妖精たち、力を貸してくれ」
 山びこのように響きわたり、たちまち妖精たちが集まった。
 「これには、大木の木を切り倒し、伐採するしかないぞ」
 妖精の力では、どうにもならなくなった。
 「そうだ、樵(木こり)たちを呼ぼう」、誰かが言った。
 樵と小人たちが大勢集まった。
 樵と小人たちが忙しく走り回った。ガンが密そむ大木は6時間かけて、ようやく切り倒すことができた。

 ところが、「森林を取り囲む竹林に、何か怪しいものがまだ密んでいるぞ」、誰かが言った。
 竹薮の中に、かすかに動く野ネズミか、いやカラスか、毒ヘビか、もっともっと小さなものらしい。真相はわからない。
 もう、妖精たちや樵の力では、どうにもならない。
 竹薮に住む得体の知れない小さな動物を一掃するのに、みんなが知恵を出し合った。
 「そうだ、蜘蛛さんを呼ぼう」
 「蜘蛛の生糸で覆って封じ込めたらどうか」
 「そうしよう」
 「そうしよう」
 「オーイ、蜘蛛さん出てきて来れ」
 妖精たちの叫び声で大きな蜘蛛が現われ、蜘蛛は竹薮の虫を生糸でしっかりと捕りおさえることができた。
 しかし、蜘蛛の生糸は他の虫や小鳥たちの命も危険にさらすことになり、一挙両得にはいかないことにもなった。
 何日も何日もかかり、蜘蛛が張った糸を取り除く作業にも、小人や妖精たちのカを借りなくてはならなかった。

 一旦、弱り切った森林や竹林は、今は元の元気さに戻り、横岳連峰一帯はどんな風雪にも耐えしのぎ、四季彩々の自然の豊かさを萌っていてくれている。

     2003年1月      広瀬勇吉(闘病生活日誌から)


  年老いた
   野馬が働く
    支えもらう


    
 2003年1月       広瀬勇吉(闘病生活日誌から)